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いいと思うのには理由がある_vol.2:ドラゴンボールを読んだら小説が書けなくなった話

往年の人気漫画、ドラゴンボール。

僕はつい先日30歳になったんですが、あれを今更ながら読んだんですよね。

これまで、隣に座っている先輩が「界王拳10倍の勢いで仕事した」とか「セルゲームばりに詰んだ」とか言ってて、この人何言ってんだろとか思いながら「たしかに」と、わかった顔で相槌打っていました。

僕は、この『わかった顔で相槌を打つ』行為に関しては右に並ぶものがいないぐらいに本当に得意で、難しい話されたときにはだいたいこれでやり過ごしてきました。でも、その先輩にはすごくお世話になっているし、共通言語を持っておくのもいいかなと思って、このタイミングでドラゴンボールに手を出してみることにしたんですよ。

ドラゴンボールって、意外に短いんだなというのが最初の印象で、読み始めてみると「このシーン見たことあるな」というところが結構多いんですね。それから、ブルマって名前の割に結構中心人物なんだなとか、桃白白って名前の認知度の割には結構サブキャラやんけとか、自分のなかで抱いていたドラゴンボールの印象とは全く違っていて。未知のものに触れることってやっぱりおもしれーな、と考えながら全42巻を3日くらいで読み終わりました。

読後の感想としては、悟飯ってこんなに強かったんだというのが一番。あと、亀仙人みたいな大人になりたいなと思いました。ようやくドラゴンボールが人気な理由を知ることができて、読んでよかったなと素直に思ったんです。


が、それとは引き換えに、どうもドラゴンボールを読んでから小説が書けなくなってしまいました。ちょうど、ハヤカワのSF大賞に応募しようとずっとシコシコ書いていたものがあったんですが、アフタードラゴンボールからは一文字も書けない。

これ、もう理由は明白なんですが、ドラゴンボールのキャラ作りがすごいから。すごいというか、すごすぎる。

何人でてくんだよ、って思うくらいキャラが湧いて出てくるし、その一つ一つが個性的だし、ベジータはどんだけ悟空に固執してんだよとか思わずツッコミたくなるし、どうしてこんなに一人一人のキャラクターが個々存在感を持って生きていられるんだろう? と、身の程知らずですが鳥山さんに素直に嫉妬しました。

自分の書いてきた文章を振り返ってみると、キャラの弱さがすごく目立っていることに気がついて、これじゃ人は読み続けられないよなあと、したり顔で書いていた自分をすごく恥ずかしく感じたんです。

ショートショートはさておき、長いこと時間を割いて付き合ってもらおうと思うのであれば、これはとても致命的なこと。だから、細かなキャラ設定をしっかりと考えてから、それぞれの相関と最終的な落とし所までどう山場を持っていくのかとか、しっかり考えなきゃだめだよなと当たり前のことを改めて考えたんです。

でも、その正攻法って全然自分ぽくなくて。自分が書きたい・読みたいものをつくりたくて小説書いてるのに、それでも売れる作家になりたいと考えている。そこからさらに、「あれ、そもそもなんで俺って小説書くんだっけ?」とか考え始めてしまってからはもうダメ。頭の中では喧々諤々、理性と感情がやりあい始めてしまいました。

ドラゴンボールを読む前から薄々気がついていたはずなんですけど、まざまざとそれを突きつけられた気がして、なけなしの自信を喪失してしまった感じ。書きたいのに書けないって、想像以上にきついんだなあと枕を濡らしています。

鳥山さんは鳥山さんで、「はやくドラゴンボールを終わらせたかった」「新しいものが書きたかった」と言っているから、当たり前だけどまた違った苦悩があるんでしょうね。おんなじように悩んでいても、フェーズが違うからなんの慰めにもならないわけですが。


これを一丁前にスランプと呼ぶとするならば、僕がこの重大なスランプを抜け出せるようになるのはいつになるかはわかりません。

ドラゴンボールというとんでもない名作に完全にノックアウトされて、動けなくなるなんて思ってもみなかったな。
身の程知らずなんて言われたって知りません。最初から身の丈なんて知らないんだから。

とにかく、やっぱり面白いものには理由があるんだな。
コロナだ、和牛だの、思わずため息をついてしまうようなことばかりの最近ですが、なんとか前向きにやっていこうと思います。

はやいところ、全世界も自分自身もスランプから抜け出せますように。アーメン

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