【読書メモ】デンマークの親は子供を褒めない

通院しているメンタルクリニックで受けているカウンセリングで「レジリエンス(折れない力)」の話が出たので、関連書籍を探していて見つけた一冊。

デンマーク人と結婚した女性が「なぜデンマーク人は世界一幸せなのか?」を突き止めようと、育児の観点からの調査をまとめた本だ。

どんな本?

一見育児本に見えるし、語り口も育児を切り口にした本だが、

実際のところは「大事にしたい人たち(≒家族など)といかにしてWIN-WINな関係を築き、継続していくか」についてデンマーク流のやり方をつぶさに観察した本である。

育児本の枠に収まっているにはもったいなく、人間関係に悩む人全般に役立つ。

とくに「いつも自分ばかりが譲らされてしまう」人間関係を作りがちな人、欧米で良しとされるような「(誰かと比べて)個性的にならなきゃ」「競争に勝たなくちゃ」と焦る人にとっては得るものが大きい。

(本書によると、皮肉にも「個人の自由と競争」を重んじるアメリカは幸福度が低いのだとか)

リフレーミングとは無理やりポジティブになることではない

デンマークでは教育段階においてごく自然に「ネガティブな出来事は最悪で変えられない事象ではなく、捉え直しができる」と教えられていると本書は言う。

このリフレーミングの能力があるかないかは折れない心(レジリエンス)の有無を決定づけるといい、アメリカの成功者たちもこぞって必要な能力だと訴えているそうだ。

リフレーミングとは、「決めつけ」の反対語のようなものだ。

本書の例を借りると、雨の日に「今日は雨が降っているから最悪の日だ」と言うと決めつけになってしまうが、「仕事だからちょうどいい」とか「旅行先でなくてよかった!」「今夜はゆっくりできる」というふうに捉えることもできる。

デンマークの人々は、この力がとてもうまいそうで、このことが子どもたちの真の意味での自信、「自分は良いときも悪いときもあるが、それで大丈夫なのだ」という自己肯定感を育むのに繋がり、結果として心が折れる人を作り出しにくくしているということなのだ。

これを読んでハッとした。

たしかに世の中の8割の人に賛同されるようなわかりやすい決めつけの言葉を吐くのは楽だ。

でも、それをしたりされたりすることで、本当の気持ちに蓋をして、結果としてモヤモヤが残る人間関係を続けては居ないだろうかと。

その場限りのたいして親しくもない相手ならいいが、身近な人にもそういうコミュニケーションを取り続けるのはなんだか寂しいことなのかもしれない、と思ってしまった。

見習いたい「ヒュゲ」の精神ー真の意味での相互依存と尊重によって成り立つ関係

本書を読んでいくと、デンマーク人が幸せであるのはアメリカ的な競争・比較における成功を収める人が多いからではなく、全く逆であることがわかってくる。

彼らは「ヒュゲ」というあり方をとても大事にしている。

ヒュゲとは「居心地のいい」という意味だそうで、生き方そのものを指す。

人が集まったときに、我を通して強いものが勝つのではなく、「ヒュゲ」であることを目指すのがデンマーク流なのだそう。

電子機器の電源を切り、面白かった体験談を共有し、不必要な文句はそっとしまっておいて、楽しい時間をともに過ごす。

「私が」ではなく、「私達が」楽しめるように心がける集まり。

聞いているだけでもとても楽しそうだ。

ましてや、前提条件として「共感力」や「リフレーミング(ネガティブ事象の捉え直しの技術のこと)」を育まれてきた人々が集うとなれば、どれほど穏やかな会だろうか。

ただ、それで果たして個人が満たされるものだろうか?我慢の連続なのでは?とついアメリカ的生き方≒個人の能力至上主義に染まっている私は思ってしまったのだが、幸福度調査という結果に如実に出ているのだからその心配は不要なのだろう。

人はついそちらに目を奪われがちとは言え、成果や見た目の華やかさ、ポジティブなことを求め続けるだけでは疲れてしまう。

身近な家族や友人、趣味のつながりのようなところから、「ヒュゲ」な空間を作れたら私達はもっと生きやすくなるのではないか?

そんな風に思わせてくれる一冊だった。


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