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素描/1

ふとした時に、突然そこだけ陽の光が当たるように目に飛び込んでくる人がいる。こちらが見る前に、向こうから文字通り飛び込んでくるので、ちょっと面食らってしまう。
彼女(彼女、だと思う。)は、僕の座った席に背を向けて立っていた。すっと細い首筋がのぞくほどの短さに揃えられた髪、淡くクリームがかった白のひざ丈のトレンチから伸びたストレートジーンズは細くまっすぐ地面に向かい、それだけ少し使い古した感じの白いコンバースが、その先にちょこんと付いている。肩には黄味がかったフェイクレザーの、いやフェイクレザーというのは彼女の年恰好からしてそれが相応と考えた僕の都合だが、ふわふわしたかたちのバッグをかけていた。淡いブルーのスクエアなラインのバッグがお似合いだなと思ったが、そうすると隙のない嫌な感じになってしまうことに気がついて、すぐにその勝手なコーディネートを引っ込める。きっと、自分をちゃんと受け止めている人なんだろうという感じ、それだけで彼女(たぶん、だが。)に光が当たっているわけがわかる気がして少し楽しい気持ちになった。話せたらきっとすぐ友達になれる。でも、僕たちは、たぶんもうこれっきり。