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総合的に判断という"玉虫色"の外交政策

今から十数年前までであれば、イスラームでありハラールであり、イスラームの教義戒律の研究をしたり勉強していることがその筋の手合いに漏れ伝わると、途端に〇安のマークがつき、色々調べられたものだった。危険分子ではないか、不穏分子ではないか……と考えたかどうかは分からぬが、そういうものだった。
 しかし、時代は変わり当時16億人市場と云われたイスラームという宗教派生市場へのアプローチを決定した日本は信仰を持たれる人々のルールを取り入れる選択にシフトした。
 古くはオイルショックを契機として日本は中東でありイスラーム教国、イスラーム王国からは振り回されて来た経験を持ち、ある種のトラウマを抱えており、ひとたび中東で火の手が上がると日本の"腰"はいまだに泳ぐ。


こと中東問題になると腰が引け玉虫色の落としどころを模索するのは日本という国のお家芸だ。貶しているわけではない。仕方がないのだ。自ら化石資源をもたず輸入に頼る日本という国にとって石油は生命線である。挙句が151円を超えた円安基調。
これに中東のご機嫌を損ね石油が停まると日本はアウトだ。
心情的には国連緊急特別会合決議「ガザ人道休戦決議案」の採択においては、賛成票を入れたかっただろうことは想像に難くない。しかし、同盟国の顔色も無視はできないという大きな都合もある。

TPPをはじめ、グローバルサウスとの距離感。
日本の外交は少なくない課題と都合を抱えている。
例えば、グローバルサウスに数えられる国を一つとってもTPPのメンバーとして重複する。ご存知のようにTPP加盟国はASEAN加盟のイスラーム市場からの恩恵を得ている国が大半であり、その昔、アメブロでわたしが書いたように「TPPは環太平洋経済連携協定ではなく、環太平洋ハラール協定に他ならない」という知見に基づくなら、日本にとってイスラーム社会との軋轢の種、エネルギー問題に繋がる芽は摘んでおきたいと考えることは何ら不思議はない。ここに貿易問題の不均衡が加わると今の政府では些か荷が勝ち過ぎの感は否めない。

棄権に回った日本、イギリス、カナダ、オーストラリアはアメリカの同盟国であると同時に、TPP加盟国でもある(USAはTPP不参加)。同様に棄権に回ったイラクも今更アメリカとの関係を拗らせたくない都合は抱えている。
棄権に回った44か国の内、大国、先進国に位置づけられる国は、反対、賛成の双方に対し都合を抱えていることが理解できるのではないだろうか。


国連緊急特別会合決議「ガザ人道休戦決議案」+賛成-反対×棄権

従って、「総合的に判断」という言葉が紙面を飾ることは然も在りなんと落としどころを見るのである。

 本来は121か国同様に賛成に回って然るべきであり、即時停戦に向けてすべての外交資源を投下投入するべきであろうことは百も承知。
が、ロシアとウクライナ、中国と台湾と南シナ海領有権問題(グローバルサウスへの影響力強化)。

日本政府にしてみれば地球儀を俯瞰しただけでも頭が痛くなるだろう。
紙くずになりそうな「円」を頼みに復興支援、人道支援をうたってみても、値打ちを考えりゃ出す金額もゼロが一桁増えそうな気配だ。

さて、ここからの舵取り。胸突き八丁と思えてくる。
どうせ棄権したのだ。棄権したことに意味を持たせる考え方が必要だろう。
中道是々非々。双方への人道支援を中道と定め是々非々の声を上げるぐらいしか棄権に意味を持たせることはできなかろう。
ウクライナ、ロシアの問題とは違うのだものね。


文責 飛鳥 世一


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