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【読書感想】祈りの幕が下りる時/大切な人を守るためには、鬼にならなきゃいけない時がある

祈りの幕が下りる時/東野 圭吾

 

<著者紹介>2023年現在、「好きな作家ランキング」9年連続1位を更新中。
本作は、書下ろし作品。2011年に起きた東日本大震災に着想を得たと思われる個所が随所にちりばめられている。

第48回吉川英治文学賞受賞作品。

 

※前回の記事で容疑者Xの献身を取り上げました。

東野作品にドハマりしたので、他の作品も読んでみたくなりました。

 

※この記事は約2700文字、だいたい3分で読めます。

 

 


〇フィクションでよかった…

読み終えたあとの率直な感想。

 

「これ、フィクションなんだよね。…よかった」

 

そう思ってしまう。
そのくらい、浅居親子の人生は壮絶だ。

だいたい、この手の殺人事件を扱った小説には、
犯人側にもそれ相応の動機が必要になってくる。

切羽詰まった、止むにやまれぬ事情があることで、
「凶悪犯罪」をテーマにしても、どこか感動的な印象を与えることができる。

「遊ぶ金が欲しかったから」とか、
「その場のノリでなんとなく」とか
そんな理由の犯罪に、読者が共感するわけないのだから、
当然と言えば当然なのだけど。

…にしても、だ。

浅居親子の境遇は、まるでこの世のすべての不幸を濃縮したかのようだ。

実際、当時14歳の中学生だった浅居博美には、何が出来たのか。

ただ、大人の言うことをその通り実行し、
目立たずおとなしくしているくらいしか出来なかっただろう。

それを思うと、胸が締め付けられる。

 

 

〇謎が謎を呼ぶ構成

大人気「加賀恭一郎」シリーズ10作目である本作品には、
加賀恭一郎の母親のことが出てくる。

容疑者Xの献身もそうだったけど、
冒頭の物語が、一見、ストーリーと無関係に思えて、
実は、めちゃくちゃ大事で、トリックとか動機とかに関係してくる。

この構成は、もしかしたらこの作者特有なのかもしれないなと思った。

謎がひとつ解決すると、そこにはまた新たな謎がでてくる…。
まったく違う別々のお話が、だんだんと読み進めていくうちにキレイにつながっていく。
これは一種の「アハ体験」であり、
そういうところも小説を読む面白さになっていると思う。

 

 

〇「鬼」になれないと、大切な人を守れない

誰が悪いわけでなくても、とてつもない不幸に見舞われることがある。

そんなことを考えさせられた。

被害者のほとんどは、悪人だったから殺されたのではない。

むしろいい人ばかりだ。

同級生だった押谷道子も、担任だった苗村誠三も、
良かれと思って善意で近づき、ちょっとばかりお節介が過ぎただけだ。

いい人だったから、深入りしすぎて「知り過ぎてしまった」
だから、殺されてしまったのだ。

博美の父親の浅居忠雄にいたっては、いい人を通り越してただの“おひとよし”だ。

洋品店を営んでいた忠雄は、
儲け度外視で、客からの値引きに応じてしまう。
そんなだから、生活は苦しいままだ。

そんなある日、
妻に家のお金を持ち逃げされ、浮気相手と出ていかれてしまう。
さらに、妻がつくった借金が発覚する。

勝手に離婚届まで出されたので
本来ならもうその時点で「赤の他人」だ。
借金を背負う義務はないのに
取り立てに応じてしまう。

絵にかいたような「ザ・おひとよし」。

こんないい人に向かってこんなことを言うのは、本当に酷だと思う。

でもあえて、言わせてほしい。

「本当に大切な人を守るためには、鬼にならなきゃいけない時がある」

関わったすべての人にとっての「いい人」になんて、なれるわけがない。
そのせいで、本当に大切な人を傷つけることだってあるんだ。

忠雄にとって大切な人とは、もちろん、娘の博美である。

忠雄が儲けを度外視した商売をし、元妻の借金を背負ったことで、
博美がどれだけの苦境に立たされることになったのか。

最終的に、忠雄は文字通り“体を張って”大切な人を守った。

でも、博美はそんなことは望んでいなかった。

忠雄が体を張るべきだったのは、もっとずっと前だ。

自分たちの生活を守るために、言うべきことはきちんと言う。
納得できない理不尽なことには、毅然として立ち向かう。

本当に大切な人を守るために、時として鬼になる。
その覚悟と決意。
残念だけど、忠雄は気づくのが遅かった…。

 

 

〇まとめ

正直、「容疑者Xの献身」よりも、後味が悪かった。
たぶんそれは、
浅居忠雄の人の良さが招いた過酷すぎる境遇に、
何とも言えない「理不尽さ」を感じたからかもしれない。

鬼になれない「やさしさ」で不幸の底まで落ちた忠雄と博美。

唯一の救いは、
大人になった博美から事の真相を聞かされた母厚子が、
良心の呵責を感じてくれたことくらいだろうか。

 

 

 

祈りの幕が下りる時/東野 圭吾

 

 

 

生きづらさを解消し、
本来の自分を取り戻すためには、

1)なによりもまず自分を深く理解すること。

2)自分を理解するために、他人の人生を知ること。

この両方が必要不可欠なのではないのでしょうか。

生きづらさを解消するために、
もっと他人の人生を知ってください。

「経験」「気づき」「考え」「学び」「生き方」

ほかの人の人生から学べることは、
思った以上にたくさんあります。

「コンプレックス」「黒歴史」「恥ずかしいこと」「失敗談」

みんな抱えて生きています。

 

そんな素振りを見せないで、平気な顔をしているから
わからないだけ。知らないだけ。

傷つくことが怖くて、人と深く関わってこなかった人こそ、
他人の人生を知ってもらいたい。

わたしの人生にも同じようなことあったかも。
似たような境遇なのに、どうやって乗り越えたんだろう。

対話するように本を読む。

自分事として本を読む。

わたしたちは、もっと人生を楽しんでいいんです!!

 

 

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