爆発侍 尾之壱・爆発刀 五一

無表情ではあるものの、その声色に賞賛の意が感じられ、右門は無意識に姿勢を正す。

それは、卓越した業前を持った一人の剣客に対しての、自然な礼儀だった。

「……正直な話、あの夜に一度対したから、なんとか対応できただけだ」

 右門が大きく息を吐き、答えた。

「それから……峰九里稲荷での一件も、役に立っているかも知れないな」
「なるほど」

 それまで無表情だった宮部の顔が歪む。どうやら笑っているらしい。

「確かに、我の手の内を知ったが故の勝利かもしれん……だが、それにしても、驚くべき強さだった。人間とは思えん」

「人間とは思えない、か。褒め言葉として受け取ろう」

「褒めている。我も人には為し得ぬほど長きの間、数多くの剣客を見、それらと剣を交えてきたが、お前程の動きを見せた者は数える程もおらぬ……いや、感服した」

「おお、二人とも、良き試合でござったな」

 そこに、親しげな声と共に堤節治がやって来た。堤は右門に頷いてみせると、宮部にも笑顔を向けた。

「宮部殿、お見事な業前でござった」

「いや、龍堂殿には叶わなかった。まだまだでござる」

「なんの、勝敗など時の運。先程の試合は、どちらが勝ってもおかしくはありませんでしたぞ」

 そう言って笑う堤に、宮部は無言で頭を下げる。その姿は、正体が土蜘蛛という怪妖である事を、右門が一瞬疑わしく思う程であった。

「堤殿……一つお伺いしても宜しいか」

「私に答えられる事であれば」

「先程の……勝負を決めた龍堂殿の業前でござる」

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