爆発侍 尾之壱・爆発刀 四八

 その事実を、宮部も感じているのだろう。右門の剣を迎え撃つその動きが、当初の勢いを減じ、僅かながらも慎重さが含まれてきているのである。

 勝てぬ相手では無い。

 破れぬ剣では無い。

 だが、今の攻めでは危うい。

 この男には、生半可な小手先は通じぬ。今まで自らが鍛え、積み上げてきた到達点、己の最高の力を持って当たらねばならぬ。

 自分の持つ最も強力な一撃で捻じ伏せるしかない。

「あの技」で、目の前の敵を――
 ふと、右門の脳裏に、四年前のあの情景が思い浮かんだ。
 
「あの技」を使うのは、あの時以来だ。
 
 それ以来、もう決して使わぬと決めた技である。

 そう、あの時に、もう決して使わぬと決めたのだ。

 だが、使わねば、負ける。

 右門は頭を振り、自らの中で相反し、ぶつかる二つの考えを打ち消そうとする。

 そんな右門の頭の中に、声が聞こえた。
 
 勝って下さいまし。
 
 あの時、自らにそっとかけられた声。

 右門に向かってそう声をかける女の顔。
 
 あなたが行くのは、剣の道。

 ならば、それ以外は全て些事としなければ。

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