爆発侍 尾之壱・爆発刀 五三

「お前がどうして人間の姿をして剣の腕を磨いているのかは解らないが、少なくともその業前は、俺が見ても本当に見事なものだ。ならばこそ、このまま一人の人間として、剣客として、このまま生きていく事は――」

「笑止」

 右門の言葉を、宮部が遮る。

「なにを勘違いしているのかは知らぬが、そも我が人の姿をし、剣の道を歩むのは、ひとえにその業前をもってお前達人間に思い知らせるが為。そして、あの女狐の尾を奪い、我がものとするのも、同じ理由だ」

 宮部の言葉に、右門ははっとする。

「……まさか、講談のあの話が原因か。源頼光の土蜘蛛退治の恨みを――」

「その名を口にするな」

 宮部が声を荒げる。

 自らを見る宮部の目が、名状しがたい輝きを放ち始めるのを右門は感じた。

「おのれ、おのれ、忌まわしい。源氏め、朝廷め。あやつらの為した所業、我は決して忘れぬ、許さぬ。そしてあの時、我を見下したあの女狐も、等しく容赦ならぬ」

「宮部……」

「龍堂右門よ、お前には解らぬ思いだ。人には解らぬ怒りだ。これ以上踏み込む事、まかり成らぬ。これ以上の問答も罷り成らぬ。我はあの女狐の力を得る。まずはお前の持つ刀だ。その為にも、我はお前を斃さねばならぬ」

 宮部は一息にそう言うと、踵を返し、右門に背を向けた。

「此度の木剣勝負では後れを取った。潔く負けを認めよう。だが、真剣勝負ではこうはいかぬ。我は必ずお前を斬り捨て、お前の持つ白柄朱鞘……あの女狐の尾をもらい受ける」

「待て……」

 そのままずかずかと歩み去る宮部に、右門は声をかけるが、その歩みは止まらない。

「宮部殿!」

「問答無用と申した筈。次に見える時こそ、お前と、あの女狐の最後と知――」

 不意に、宮部の膝ががくりと崩れ落ちる。

 そのまま両膝を屈し、宮部の全身がぶるぶると震え始めた。

「こ、こ、これ、これは、ま、ま、まさか……」

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