爆発侍 尾之壱・爆発刀 四六

右門は木剣を僅かに上げ、伸び迫る小刀に当てた。

 その勢いで、木剣の軌道が右へとずれる。

 右門はそのまま木剣を右に捻ると、相手の勢いを利用して胴打ちを狙った。

 中庭に、甲高い乾いた音が鳴り響く。

 右門が胴を狙った一撃は、宮部の左手に握られた木剣によって受け止められていた。

 次の瞬間、右門の右下から剣圧が上がってくる。

 右門は必死に身体を捻り、その勢いで左へと飛び退く。

 一瞬前まで右門がいた場所を、宮部の小刀が弧を描いて跳ね上がった。

 間髪入れず、そのまま宮部が身体を回転させ、右の木剣を突き込んでくる。

 小刀の間合いに対してきた右門の目には、木剣の長さが通常の何倍にも長く見える。

 これもまた、宮部の「変形二刀」の怖さである。

 右門は、なんとか木剣の峰でそれを弾くと、たまらず大きく跳ね退き、宮部と距離を取った。

 三間(約6m)程、始めとほぼ同じ距離を置き、二人は再び睨み合う。

 ここで、今まで静まり返っていた庭内に、どよめきと喝采が湧き上がった。

 響めきは慈外流門人が、喝采は智惠家の家中の者が発したものである。慈外流の門人は右門の苦戦を信じられぬ思いで受け止め、智惠家の者達は、自分らも初めて見る宮部の超絶な剣技に、その勝利を確信した。

 広場に溢れる嵐のような声を四方から浴びながら、右門は木剣を上段に構え直し、思う。

 強い。生半可なものではない。

 露天風呂で宮部を退ける事が出来たのは、不意を突く形になったからこそだったか。

 真正面からやり合うと、その強さを改めて思い知る。

「これは、一筋縄にはいかんな……」

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