爆発侍 尾之壱・爆発刀 四一

しかし、そこで尻込みしていては士道不覚悟の謗りを受けてしまう。いつまでも尻込みして突っ立っている訳にも行かないので、意を決して右門に打ちかかっても、

 容易くいなされ、

 恐るべき威力で打ち込まれ、

 手にした木剣をはたき落とされ、

 唖然とする目先に切っ先が突きつけられる始末である。

 もう、こうなっては、

「……参りました」

 と言う他は無い。

 もっとも、参ったとなれば、右門の全身を覆っていた闘気は嘘のように消え、その顔には温和な笑みが戻り、今の打ち込みに対する的確な指導が為されるのだが、またその内容がいちいち的確で解りやすく、

「なるほど、確かにそうだ」

「そうか、それが足りないのか」

 となり、右門と対した藩士達は己の至らぬ所にいちいち気づかされ、その悉くに得心するのであった。

 しかしながら……、

「相変わらず、絶対に勝たせてやらんな、お前の稽古は」

 右門は、そう声をかけられ振り向く。

 そこには苦々しい笑みを浮かべた堤が右門を見上げていた。

「お前の指導は解りやすい。だが、どうにも『甲斐』というものに欠けている。問答無用で捻じ伏せられては折れる心もあるというもの。もう少し手心を加えてやれ」

 これは今に始まった事では無く、下総の本家道場でも堤が右門に何度も口にした苦言である。

 だが、右門が真顔で返してきた答えも、本家道場で堤が何度も聞かされてきたものと変わりが無い。

「とは言え、敵は手心を持ち合わせませんからね」

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