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さようならの態度

飛行機のドアが閉まったというアナウンスのあと、少しずつ機体が動き出す。私は小さな二重窓から外を見る。夏でも長袖長ズボンの、ヘルメットを被ったおそらく整備士の人たちが、ゆったりと飛行機を見守りながら近くまで歩いてくる。機体は管制官のGoを待って少しの間だけ止まる。整備士たちはゆったりとこちらを向いて立ち、みじろぎせずに真っ直ぐ機体を見つめている。やがてまた飛行機が動き出しいよいよ滑走路へ向かうと、彼らは両腕を大きく動かし、飛行機に向かって手を振り始める。表情は見えない。手を振り始めると彼らはもう歩かない。飛行機がゆっくり彼らの前を通過する長い間、同じ調子で丁寧に手を振り続けた後、丁寧に深々と一礼する。そしてきっぱりと踵を返して持ち場へ戻っていく。振り返らない。何かが胸に込み上げる、清々しい寂しさのような、でも温かさのような。

人と人の別れは、それがどんな時でも、ほんとはいつだってそんな風でいいんじゃないかと思う。もう二度と会わないかもしれないけど、どうか元気で、安全に。この先いいことがたくさんありますように。and gone. 

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夏の思い出

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