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映画「ムーンライト・シャドウ」

うわ〜全然ここに字を書いてなかった!書く仕事は公私に渡っていろいろとやっていたので、書いていなかったわけではないのだけど。


映画「ムーンライト・シャドウ」をようやく観に行った。この小説は小学生の終わり頃だか中学生になった頃だか、すみずみまで何度も読んだ。ほんとうに何度も読んだので、そのディテールが不思議な感じで身体にしみついている。


この小説には寓話的な調子が、そしてなんともいえない浮遊感があるが、そのことが損なわれず映画になっていたのがよかった。小説では風邪のシーンと最後のドーナツのシーンが印象的だったので、それらがちゃんと組み込まれていて嬉しかった(そういう風に表現したのか!という驚きと共に)。役者さんとしては柊くん役の佐藤緋美さんがよかった。しっかりとしたキャラクターが立ち上がっていた。


この小説を初めて読んだ頃の私は、ほんのりと思春期が始まった程度の田舎のローティーンだったので、人と人が付き合うということや死に別れるということについて、まったくリアリティがなかった。町だって自分の住んでいる町しかろくに知らなかった。


そんなほとんど子供の私がリアリティがないなりの想像力で構築したこの小説の世界が、映画を観ながら突然映像として頭の中に蘇ってきた。私の想像の中では、橋は地元の大きな川にかかるあの古い橋で、そこは実際に自宅から歩いて30分くらい。映画を見ながら、その映像が急に見えた。橋といえばあの橋しか知らなかった頃の私。二十歳ぐらいの恋愛がどんなものか、人の死、理不尽な別れ、時間しか癒してくれない悲しみ、私にとっては当時すべて知らないことだった。そして知らないままでは生きていけない。その頃から30年以上が経ち、私は橋もたくさん渡ったし、別れや死も人並みには経験したように思う。


私がかつて頭の中にこしらえた小さな世界は、水底から静かに泡が上がってくるみたいにこうして出てきた。それは昔の私のかけらみたいで、しばらくそれを飴玉をなめるみたいに、でも何か大事なものを損なわないように、頭の中で転がしていた。





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