【AIRY】大方岳個展「天気雨を待つ」を見に行く
はじめに
甲府の中心部、昭和時代の面影を残す白い3階建てのビルディングに「AIRY(エアリー)」(アーティスト・イン・レジデンス山梨)はあります。
今回は、開催中だった大方岳個展『天気雨を待つ/Waiting for a Sunshower』(2024.3.8~3.10)の模様を紹介いたします。
「AIRY(エアリー)」については前回の記事をご覧ください。
大方岳個展「天気雨を待つ/Waiting for a Sunshower」
大方岳氏は北杜市育ち、甲府市在住の美術家です。山梨学院大国際リベラルアーツ学部の卒業で在学中にはオーストラリアに留学経験もあり語学も堪能。絵は独学という異色(失礼しました)の経歴の持ち主です。2019年(令和元年)からインターン、その後スタッフとしてAIRYを支えてきた人物です。
氏は4月より美術の修行のためドイツへ渡航するとのこと。大方岳個展「天気雨を待つ/Waiting for a Sunshower」(2024.3.8~3.10)は新作を含むこれまでの集大成ともいうべき作品展でした。
本個展については地元紙にも掲載されております。
天気雨を待つ
AIRYの2階がギャラリーで個展の会場です。はじめ外階段から入ることが分からずに困っていましたが無事たどり着けました。
外階段の扉に描かれた絵も大方氏の手によるものです。びっしり描かれているのですが、その割にはごちゃごちゃとした感じのしない不思議な世界です。
AIRYのギャラリーは創作室も兼ねています。元医院で入院室だった2部屋分を1部屋にしています。床はピカピカのフローリングで、白い壁に作品が並びます。
ピアノやギターといった楽器もあります。美術、映画関係の書籍や図録などが並ぶ書棚もあります。
大方氏の作品は、抽象画です。また、描いたものが分かる作品もあれば、色の重なりを描いている作品など、時期によつて作風が異なっているように感じます。
それもそのはず、テーマの一貫性ではなく、その時の時々で作りたいものや自分の状況などから表現してきたのだといいます。
そうしているうちに、出来てきた共通のテーマあるそうで、自分の中にある「不安」「孤独」だったといいます。自身の雲がかかる頭の中の絵を描くことで、整理できない考えを整理したり、絵からのつながりが助けになっていったのだともいいます。
「天気雨を待つ」とは、雲が雨を降らせることは恵みの雨になる、そして雨のあとに晴れを期待する。そうしたことが、心の中を覆う雲に似ていることからのタイトルだといいます。
抽象画のほかにもイラスト作品がありました。
こちらが、メインビジュアルになっている作品です。あとでAIRYのサイトを見て知ったのですが、実は作業台だったようです。抽象画にしてしまうとは驚きました。
また、この日(2024.3.9)は、一日限りで出張カフェも営業されていました。甲府の中心部で営業されていた「カフェ・モアラ」さんがコーヒーを入れてくれていました。
かいぶつくんの探し物
『かいぶつくんの探し物』という本を購入しました。
新型コロナ感染拡大の2020年(令和2年)にAIRYでは「かいぶつくんの探し物」という参加型巡回アートプロジェクトを行っています。甲府の市街地に大きなボードを持って出掛け、そこで出会った人たちに落書きをしてもらうという内容です。
『かいぶつくんの探し物』は、3密を防ぎながらもアートの在り方を模索した記録です。アートプロジェクトの中心として活躍した大方氏の姿が映されています。
始まりは大方氏の描く下絵からです。これを出掛けた先でペイントしたりしてもらうのです。
「怪物」あるいは「かいぶつ」は、大方氏の心の内に潜むものでしょうか、それとも氏自身でしょうか。『かいぶつくんの探し物』には、次のような記述があります。
市街地を転戦して完成した「かいぶつくん」です。コロナ渦においていち早く行動を起こしたこのプロジェクトは新聞紙面でも取り上げられ、この「かいぶつくん」は甲府市役所を初め各所に展示されました。
完成までとその後の様子はAIRYの公式サイトでも公開されていますので、ご覧ください。
おわりに
個展には旅立っていく大方氏の送別と健闘を祈る人たちが来ていました。まさに氏のいう絵を通じたつながりを見せてもらいました。最終日の夕刻からは、投げ銭ライブも行われ盛大だったようです。
海外での美術研究を目指していた氏の願いがいま叶うことをお祝いするとともに、この先の成功を祈るものです。凱旋個展でぜひまたお会いしたいです。
参考文献
AIRY編『かいぶつくんの探し物』AIRY、2020
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