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普通への渇望

気がついた時にはもう「普通」への憧れがありました。

(ここで何が「普通」なのかについて。所謂マジョリティ。的なところですね)

そう気がついた時。

気がつくってすごいですね。

気がついた途端、世界がガラッと変わってしまう。

子どもの頃、そんな気づきがあって、

私は「普通ではない」枠におさまった。

それまでは「普通」も「普通ではない」も、私の世界にはなかった。

けれども「普通ではない」を経験したかったのだろう私は、その願望通りに「普通ではない」世界に自分をおさめていった。


そして「普通ではない」世界から「普通」の世界を眺めた。

「普通」の世界は、楽しそうだった。

でもどこかつまらなさそうでもあった。

でも、私にはわからない「何か」があるのかもしれない、そう思った。

そう思ったので、飽きるほど眺めた。

自分のいる世界との違いを見つけようとした。

何か秘密がある気がした。

しかしよくわからなかった。


私は、自分で「普通ではない」世界におさまった癖に、そんなことなどいつの間にかすっかり忘れてしまい、「普通」の世界に行きたくて行きたくて仕方がなかった。

私はついに決心する。

憧れのマジョリティの世界への冒険だ!!!いや、身分を偽って潜入する、という感覚だろうか。


自分の言葉を捨てた。

自分の考えを捨てた。

自分の感覚を捨てた。

自分の好きなものは言わない。

自分の色を変えた。


頑張って「普通」の世界に飛び込んでみたけれど、お判りの通り、

結局、そこでは何も見つけることはできなかった。


私は、この分離した世界をただただ見たかっただけなのかもしれない。

だから、自分で世界を二つに分けたのかもしれない。

私の目に映る「世界」の様子を。

父を。

母を。

弟を。

学校で会う友人を。

世間、というものを。


あのマジョリティの世界へダイブした時に自分から切り離した、言葉、感覚、考え、好きなもの、自分の色、というものを今は取り戻している。自分が元々持っているもの。必要ないと思って途中でボトボト落としながら歩いてきたから。後ろを振り返らないで歩いてきた。

まずは、このボトボト落とした粘土のようなパーツをくっつけて私という人型にしなくては。人型になったら、そこから、いよいよ造形作業が始まる。

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