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これからの官民連携を考えよう〜ちばを肴に、ゆるっと飲み会。〜【#イベントレポート】

2023年12月7日、1週間もようやく終わりを迎えようとする木曜日の夜に、東京駅八重洲口にある地域経済創発拠点”POTLUCK YAESU”に、40名近い人々が集まった。

「CHI-BAR〜ちばを肴に、ゆるっと飲み会。〜」と名付けられたこのイベントは、千葉県千葉市に拠点を置き活躍するアーティストユニット「岩沢兄弟」の弟・いわさわ たかし氏と、千葉県館山市に拠点を置きマイクロデベロッパーとして活躍する漆原 秀氏が、一夜限りのBARマネージャーとなり、「ちば」を肴とした飲み会を行うというもの。

「#千葉」「#まちづくり」「#これからの官民連携」、そんなキーワードに惹きつけられた人々と共に、館山市・旭市・市原市など4市の代表によるピッチと、参加者全員による交流会が行われた。

イベントの詳細ページはこちらから
一夜限りのBARマネージャーアーティストユニット「岩沢兄弟」の弟・ いわさわたかし氏
一夜限りのBARマネージャー マイクロデベロッパー 漆原秀氏

官民連携事例の共有〜4市のピッチについて〜

まずはじめに、イベントのなかでは館山市・旭市・市原市などの4市が、各地で取り組んでいる官民連携事例についてピッチを行った。

今回のピッチは、行政職員に続いて民間プレーヤーがタッグでスピーチするという方法をとったのだが、この“官民連携ピッチ”を企画した岩沢氏にその意図を聞いた。

「民間プレーヤーは自己紹介や独自のアピールがしやすいことが多いなか、行政職員の皆さんは自己アピールをしにくいことが多いように思います。今回のイベントでは、民間側から行政側へトスをあげたり、エールを送れるようなイメージで企画しました。」

ピッチの時間は「各市8分」が事前設定だったが、それぞれ多少の時間超過をしながら熱いピッチが繰り広げられた。今回はそんなピッチのなかから、紹介許可が得られた3市について以下にまとめる。

【館山市】民間がもっとやらねば!民間主導のまちづくりにおける官民連携について

千葉県のなかで南部に位置する館山市からは、館山市 経済観光部 雇用商工課 課長の島本一樹氏、企業誘致・公民連携担当係長 櫻井敏行氏に加え、株式会社館山家守舎 共同代表の本間裕二氏が登壇。

話のテーマは、主に2019年から同市で行われてきたリノベーションまちづくりの取り組みと、そのなかで館山家守舎が実際に取り組んできた館山駅東口のパブリックスペース「sPARK  tateyama」(スパークたてやま:以下sPARK)に関してであった。

sPARKを運営する株式会社館山家守舎の本間氏は、数年前まで空きビルだった場所を活用した取り組みに対し、「民間がもっとやらねば」と語り、これまでに駅前で行ってきたマルシェやビアガーデンなどの様子を報告した。

このマルシェ等が行われる「TRIAL PARK」はsPARKに隣接する市有地だが、元駐輪場だった場を民間からの請願により同社が管理・運営を行い、現在は市民の交流の場として活用している。

また、そんな取り組みで感じた官民連携の難しさのなかで、「いつも公私混同のうえ親身になってくれた」行政職員の存在を語り、積極的に行政と民間の板挟みになってくれる存在がいたことが、民間主導のまちづくりを行ううえで大きな手助けとなったことが伺える時間だった。

館山市 経済観光部 雇用商工課 課長の島本一樹氏
館山市 経済観光部 雇用商工課 企業誘致・公民連携担当係長 櫻井敏行氏
sPARKとTRIAL PARKでの取り組みを報告する本間裕二氏

【旭市】「生真面目な公務員×はみ出し会社員」が行う旭市の未来のまちづくり

次に、千葉県の東側に位置する旭市からは、旭市 企画政策課 政策推進班 主査の川瀬和彦氏と、イオンタウン株式会社 営業企画部 おひさまテラス 統括マネジャー/一般社団法人みらいあさひの永井大輔氏が登壇した。

話のテーマは主に、旭市が構想した「生涯活躍のまち・あさひ形成事業」として官民一体で取り組んでいる「みらいあさひ」について。そのなかでも特に、2022年4月よりオープンした旭市多世代交流施設「おひさまテラス」の事例について報告した。

印象的だったのは、「旭市での官民連携は、多くの人がイメージするスーパー公務員×超個性的なプレイヤー・経営者の掛け合わせではなく、生真面目公務員×はみ出し会社員の連携である。」と語られていたこと。

「みんながスーパー公務員じゃなくていい。生真面目公務員だって公民連携できる。いつからでも自分は変われる。」

そう語る永井氏と川瀬氏の姿から、これまでインフォーマルな関係性で運命共同体のようにまちづくりに取り組んできた旭市の官民連携を垣間見ることができた。

お揃いのTシャツで登壇しブラックASAHI、ホワイトASAHIと笑うお二人
イオンタウン株式会社 営業企画部 おひさまテラス 統括マネジャー 永井大輔氏
旭市 企画政策課 政策推進班 主査 川瀬和彦氏

【市原市】まちにダイブして、まちづくりを。家族も楽しめる街 市原市

次に、千葉県中西部に位置する千葉最大面積の市原市からは、市原市 都市部 拠点形成課の三澤正幸氏、オープンロード合同会社から小川起生氏が登壇した。

市原市は、JR五井駅西口から徒歩1分のアーケード商店街を活用した3つの官民連携事例について報告。普段は居酒屋で賑わう夜のアーケード商店街を活用した「五井朝市〜夜のまちに、朝食を。〜」や「シェアキッチン SOMARU」、さらには半年に一度、五井朝市と共に開催される「家族も楽しめるマルシェ”梨の木市”」について、これまでの活動を報告した。

同市はそんな取り組みのなかで課題と感じていた「人材の集め方」に関する解決策についても話し、行政や民間という立場に関わらず、「①イベント/お店に顔を出す②プライベートでも関わる③楽しんでやる」という3点を大切に、まちにダイブしていくことの重要性を語った。

また、これまでの官民連携における両者の関係性を「やりたいことをやるための良き蜜月関係(大変仲良しであるさま)」とも表現し、官民連携には行政と民間の垣根を超えた関係性の構築が重要であると伝えた。

市原市 都市部 拠点形成課 三澤正幸氏
オープンロード合同会社 小川起生氏
街の様子のBefore /After

実際にイベントに参加して感じたこと

官民連携のキーワードは「垣根を越えた関係性」「プライベートから街に溶け込む」「今と未来の暮らしを豊かに」

4市のピッチ、ならびにその後の交流会を通して、今回のイベントでは官民連携に必要なキーワードとして以下の3つがあげられるように感じた。

①垣根を越えた関係性
②プライベートから街に溶け込む
③今と未来の暮らしをもっと豊かに

①垣根を越えた関係性
垣根を越えた関係性とは、いわずもがな行政と民間の垣根を越えた関係性の構築が、官民連携には重要であるということ。

そもそも、対立関係としての行政と民間という図式自体が古く、行政プレイヤーと民間プレイヤーが合わさり一つのチームとなっている登壇者たちの姿が、あるべき姿なのだと感じた。

②プライベートから街に溶け込む
プライベートから街に溶け込むとは、その名の通り「仕事の時だけ街に顔を出すのではなく、プライベートからどんどん街にでていく」ということ。

しかし「自分が暮らす街」でおこるすべての場にでていくかどうかは別として、仕事の時だけ街に現れるというのは逆に難しい気がしてしまった。

「いやな事柄とは積極的に距離を置く」「プライベートと仕事を分ける」、そうやって自分自身の生きやすさを守る現代だ。「誰かと良いことも悪いことも本音で話し合う」「プライベートでも街の行事に参加する」そうやって、継続的で建設的な関係性を構築していくというのは、そう容易いことではない。

③今と未来の暮らしをもっと豊かに
では、今回集まったメンバーがそれでもそういった行動にでるのはなぜか。それはきっと、「自分と大切な人たちの暮らしを、今も、そして未来も、もっと楽しくしていきたい」という、日々に対する希望・危機感・使命感なのだと思った。

目を逸らせない「経済合理性」。鍵は、好きと楽しいがもつ「磁力」。

ノマドワーカーとして無拠点生活をしていた頃の筆者
全国でまちづくりや暮らしづくりに関する場を訪問

私は2022年にノマドワーカーとして無拠点生活を行い、自分の暮らしたい場所を探していた。いわば、まちづくりや地域活性を謳う地域から「きてほしい」と誘致される側の人間だった。そんな私が2023年4月より館山市で暮らし始め、今は「自分と周りの大切な人たちが、楽しいと思える暮らしをつくる」をテーマに、駅前のマルシェ事業などに関わらせてもらっている。

各地を巡りながら「どの地域も抱えている課題は同じ。人がいない。お金が回らない。やる気があった人たちが消耗していなくなり、また打ち上げ花火で終わったと冷めた目が増え、新しい人が挑戦しづらくなる。」と痛感してきた。

私は今、館山という街が好きだ。ここにいる人たちと暮らしを作っていきたい。だけど、「やりたいから」という気持ちと善意だけを頼りに継続しつづけられるほど、まちづくりは楽しいだけではないし、それは各地の皆さんも同じだと思う。実際に私はマルシェ運営に関わりながら、「もっと経済性のことを考えなければ、いろんな意味でこの活動は続かない」と思い焦ってしまう。今回のイベントはそんななかでの参加でもあった。

人口が多い、都心との距離が近い、そういうことは来場者数や売上とはあまり関係がない。それは、今回のピッチを通して改めて再確認することができた。だとするならば、大事なことはいかにそこにいる人たちの好きと楽しいを磁力にして「磁場作り」をしていくかだ。

リアルとバーチャルは繋がっている。SNSに学ぶ人だかりの作り方。

私はInstagramの運用や講師業を一つの仕事としている。オンライン、とりわけSNSの世界というのは非常に面白く、誰もいないバーチャルの世界に「人だかり」が生まれ、そこでお金が落ちることで経済が循環し、継続性が担保されていく。

感情は磁力。SNSで発せられる個人の強烈な「好き」と「楽しい」には、人を惹きつける力がある。このバーチャルでの考えを、まちづくりというリアルの場にも応用できないだろうか。

私は各ピッチをみていて、皆さんの実体験と共に映し出される写真に「この人たちが好き!」「この活動が楽しい!」とその場の感情が滲み出ているものがいくつもあったと感じた。そして、そんな様子をもっとみていたいとも思った。

長年まちづくりに関わってきた人ほど、大変なこともきっとたくさんあったと思う。それでもなお、今も頑張れる理由は、きっとそこに好きな人たちがいて、きっとそこに楽しさを感じる瞬間があるからだと思う。そういう姿をもっとみたい。そういう姿をもっといろんな人にみてほしい。そういう磁力の集まりが磁場となり、人が引き寄せられてくるような気がする。

やったからこそわかる大変さを「肴」に、笑える場の重要性。

スナックイベントでの一コマ
笑い合える場の重要性

なんだか諸先輩方を前に、偉そうなことを書いてしまったなぁと思いつつ、最後に一つだけ書いて終わりにしたい。

今回のイベントは、いろいろな経験をしている人たちと「お酒」を飲めたのがよかったと感じている。はじめましての緊張感、ちょっと聞きづらい本音のところ、そういう普通なら少し時間のかかる互いの距離感を、お酒は本当によく近づけてくれる。

今、館山で月に一回スナックイベントをさせてもらっているのだが、その時にもこのお酒の優秀さは痛感する。しかし、今回のイベントではそんなお酒と共に、皆さんの「やってきたからこそわかる大変さ」がいい肴になっていたと感じる。どんなに大変なことも、笑い合える人と場があれば、私たちはきっとまた明日も頑張れる。こういう場があることは、各地で頑張る人にとって大きな活力となるはずだ。

いま、どこでも暮らせる時代のなかで、「ここが私の暮らす大好きな故郷です。」と言いたくなる街があるという状況に、多くの人が憧れている。

だけど、そんな「故郷」という意識は、自分から能動的に関わり、自ら育まないと決して生まれてくるものではない。簡単に手に入らない希少なものだからこそ、これからの時代で価値が高く、多くの人の憧れになるのだと思う。

今回のイベントでは、自分の街に能動的に関わろうとする皆さんと出会えたことで、なんだか元気とやる気をもらえる時間だった。これから先、私自身も館山を故郷と呼べる日がくるかはわからないけれど、いろいろやってみた経験を肴に、もっと皆さんと笑えるように頑張りたい。

企画してくださったいわさわさん、漆原さん、ピッチを準備してくださった4市の皆さん、交流会でお話しさせていただいた皆さん、貴重なお話しとお時間をいただきありがとうございました。

交流会での様子
交流会での様子
交流会での様子
交流会での様子

ライター:蓑口亜寿紗
北海道生まれ、千葉県館山市在住。発信(Instagram運用)、言語化(取材)、コミュニティ(新しい働き方Lab)の3本を軸にソーシャルコミュニケーターとして活動。北海道、東京での暮らしを経て、2022年は無拠点生活を実施。その後、千葉県館山市へ移住。


読みにきてくださってありがとうございました!きっと私の文章を読んでくれる方は近いつながりの方だと思うのでどこかでお会いできる日を楽しみにしています。^^