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医学編集 適応症の数珠繋ぎ

医薬品の箱の中には、薬と紙数枚がいつも⼀緒に⼊っています。この紙は「添付⽂書」と呼ばれる使⽤説明書です。あんまり読まないで、なんか余計だと思っていることがありませんか?

医薬業界では、この紙はとても大切な物だとされています。新たな薬品とであったとき、いつもその薬品の添付文書を確認します。それも、医療専門家向けの添付文書で、その内容は一般向けのそれより多いです。

その中でも、適応症(てきおうしょう)は添付文書のコアで、この薬品の存在理由と言っても過言ではないです。どの疾患の治療に使って良いか(治療用途)と、どの群で使って良いか(対象)など、規制当局(日本の厚生労働省やアメリカのFDA)は先に審査します。そして、製薬会社は、当商品が許可をもらった項目をこの紙で適応症(効能又は効果)として記載します。

適応症の許可を増やすため、製薬会社はひたすら試験を進めます。良い結果が出ると、すぐ政府に申請します。製薬会社にとって新たな適応症の許可をもらうのはとても喜ばしいことです。その時、もちろん大々的に宣伝を進めます。しかし、試験はいつも良い結果とは限りません。逆に悪い結果を出す可能性もあります。例えば新しい副作用を発見してしまいます。その時には、添付文書に新しい警告文を書き込まなければならなくなります。ですので、添付文書は年に数回更新されている可能性があります。医学編集者も進み具合において、資料の更新や宣伝物の書き直しや、新しいものへの作り直しなどをします。

なお、適用群以外の患者には、危険があるので使えない状況もあるし、単に不明という状況もあります。例えば妊婦や子供などは、念のため医薬品の開発初期では試験対象になれないです。一般的に、医薬品の試験結果を十分に積み重ねたあと、妊婦や子供たちでも使用できると考えられています。

また、アメリカでは既に許可も使用実績もあるのに、台湾では許可が下りなかったこともよく見られます。すなわちドラッグ・ラグの問題です。一方、一定の条件を満たした、適応外使用(てきおうがいしよう、英語: Off-label use)は可能です。

医学の世界は複雑すぎて専門家にとっても不明なところが多々あります。誤用しないように適応外使用の広告と宣伝は絶対に禁じられています。もし見つかったら酷い罰金が科されます。よって、医学編集者にとって、文書や図を校閲する際、適応外使用の暗示と考えられる部分を削ることも大事なことです。

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