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J-POPとJ-WAVE

私は音楽を聴くのが好きですが、特に90年代はJ-WAVEが好きでした。
今は音楽を聴く選択肢が多いのでFMラジオの比率は高くないですが、それでもJ-WAVEへの信頼感はいまだに揺らいでいません。

東京限定になってしまうかもしれませんが、J-WAVEのカッコよさは今までのラジオのイメージを非常に大きく変えたと思います。

もともと洋楽をよく聞いていたので、24時間本当にノンストップで洋楽が流れ続けるというのに驚き、放送中のジングルも凝っていて、かなりマニアックな洋楽が常に聴けたのでとてもありがたかったです。

調べたら、設立にセゾングループが大きく関わったということを知り、バブル経済当時の雰囲気を改めて感じることができました。


初めての海外発ではない独自の音楽シーン


J-WAVEが成し遂げた功績はさまざまあると思いますが、一番大きいと思うのは、「海外から輸入した音楽文化の真似ではない、日本独自の流行を作った」という点です。

私は音楽の趣味に関しては少数派で、中学からどっぷりと洋楽にはまっていたのですが、そのおかげで「アメリカ発のヒットチャート」「イギリス発のムーブメント」のようなものに常に触れていました。

しかし海外の情報は基本的に少なく言葉もあまり理解できないので、正直言ってよく分からないままとりあえず聴いていたことも多く、あとどんなに情報を仕入れたとしても、日本人とは感性が違いすぎて良さが分からない曲がいくつもありました。

そのため、鳴り物入りでやってくる海外の人気アーティストには常に懐疑的に接していて(本当にいいものももちろんありましたが)、なけなしのお金と有り余る時間を使いできるだけ自分の力で好きな音楽を探していました。


昭和の昔は、「アメリカで流行っている」「世界で有名」といった謳い文句で最新の音楽が紹介されることが多く、舶来品としてありがたがられていて、海外信仰のひとつとして洋楽を聴くという趣味が位置付けられていたのだと思います。

でも自分にはそんな信仰はなかったので、J-WAVEが他の放送局とはまったく違う独自の視点で東京発の音楽の流行を24時間流し続けるという姿勢に、ちょうどドハマりしたんだと思います。

バブル経済という金の力を借りた勢いというのは否めないものの、欧米に対して文化的な劣等感を感じていた上の世代の負債を払拭し、自分たちの思ったように聴けばいいんじゃない?という当たり前がようやく訪れたように感じました。


「J-POP」の誕生


J-POPという呼び方がJ-WAVE発祥というのは有名な話かも知れません。

かつての日本の歌謡曲は、伝統的な演歌のような土着の音楽とその時々の海外の音楽ブームを掛け合わせた日本独自のものだったと思います。

一部の素晴らしい作品を除いた多くの普通の流行歌は、海外で流行した新しい音楽から数年遅れてその要素の一部だけを取り入れ、日本人の耳になじむよう調整された国内限定の音楽でした。

音的には、特に低音域が不足し、テンポが遅く単調で、新しくて過激な楽器や音色はすべて排除され、ほとんどの歌手は狭い音域しか出せず、あと海外の曲のパクリもひどかったようです。

当時の歌謡曲は今聴くと何とも言えない味わいがあり、それはそれで貴重なものですが、それは時間が経ったから言えることで、思い出補正をなくして冷静に聴けばどれくらい残念な出来だったかわかります。

しかしそういったかつての歌謡曲ではない、洋楽と遜色ない日本の音楽がたぶん80年代後半から増えてきて、J-WAVEがそれらを洋楽と並んで取り扱うためにJ-POPという名称を定めたということです。


90年代以降の時代の変化


開局当初はほぼ海外の曲ばかりだったJ-WAVEですが、その後J-POPも増えていき、いい曲なら誰でもいい、椎名林檎の次にジプシーキングスが並んでもいいというコンセプトが世間に認知されていきました。

そういった自由な音楽への接し方がいつの間にか一般的となり、それに合わせて音楽のレベルも上がり、好みも多様化しています。

Apple Music|Top 100 Japan


今の音楽のチャートは、Apple music、Spotify、オリコン、ビルボードなどそれぞれで国も言語も違うさまざまな曲が並んでいて、みんなが好き好きに音楽を聴いているのがわかります。
でも昔はそうではありませんでした。

海外文化に対する無理解から来る劣等感、無知によるレベルの低さ、多様性という言葉とは全く無縁の文化的成熟度の低さによって、一部の例外を除き、凡庸で分かりやすい音楽に人気が集中していました。

しかし昭和後期から平成という時期を越えてようやく、個人が自分の好みを主張してよい、みんなと同じでなくてよい、という価値観が広まってきたように思います。

こういった変化のひとつの現れとしてJ-WAVEの登場という事件があったのは間違いなく、その後の日本の音楽シーンやラジオ文化の方向性に影響を与えたという意味で、非常に評価されるべき存在だと思います。





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