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人生でいちばん「舌骨」のことを考えた日

2023年7月、千葉県流山市で開催された「摂食・嚥下と褥瘡予防のポジショニング」研修会に参加してきました。

講師は理学療法士の小松洋介さん。「患者・利用者の立場に立てる医療・介護職を全国に増やすこと」を目指し、全国を飛び回ってる方です。小松さんの研修に参加するのは今回が2回目になります。

SNSで知り合った、訪問介護事業所リバーサイド・ヴィラ(社会福祉法人根木内福祉会)の管理者・雨澤慎吾さんのご縁で、前回は介護職向けの研修に記録のお手伝い係として参加。今回は「私も実技やりたい~~!」と、外部参加枠でエントリーし、参加させてもらいました。

介護のキーパーソンとして義父母の認知症介護に関わった経験はあるけれど、身体介護の経験はほぼゼロ。ほんの1年前までは「介護技術を学ぼう」という気はまったくなく、むしろ下手に技術を学ぶと勝手に戦力カウントされ、介護疲弊リスクが増えるだろうから、全力回避こそベストとも思っていました。

それが、ひょんなきっかけで、すっかり介護技術に夢中の2023年夏。なんたる心境の変化かといういきさつについては別の機会にご紹介するとして、とにもかくにも、ウキウキワクワクで流山に向かったわけです。着替えのTシャツとスウェット的なパンツをトートバッグに突っ込んで。会場に着くなり、速攻で着替え、すっぴん上等でやる気MAX。

この日の内容は大きく3つ。
(1)姿勢と嚥下の関係性を理解する
(2)臥位・座位の評価と実践
(3)ポジショニングの考え方と実践


食べるとき、飲むとき、人の身体はどう動くのか。スライドを見ながら、骨や筋肉の動きを説明してもらった後は、さっそく「やってみよう」タイム!

体験① 口を開けたまま、水を飲んでみてください。
体験② くちびるを離した、水を飲んでみてください。
体験③ 下を向いて、舌を使わずに、水を飲んでみてください。

「摂食・嚥下と褥瘡予防のポジショニング」(流山研修)より

飲もうと思えば、なんとか飲める。飲めるけど、くるしい~~!

「良い姿勢・悪い姿勢」とよく言われるけど、ここで言う「良い姿勢」って何? 「悪い姿勢」はどうダメなの?

「嚥下・褥瘡にまつわるポジショニングの悩み」として「食事中に姿勢を正してもすぐ崩れてしまう」が挙がっていたけれど、そもそも「姿勢の崩れ」は何にどう影響する?

どうやら、むせたり、苦しい思いをすることなく、食べたり飲んだりするためには「舌骨」の自由度がめちゃくちゃ重要らしい。何げない動作や仕草が舌骨の動きを自由にも不自由にもする。

姿勢の影響も大きい。

胸部が骨盤の上にしっかり乗ると、左右に揺らしても軽い。乗っていないとずっしり重い。こんなに変わるのか!

「この重さをよく感じて。この重みがあるってことは、何か介助に誤りがあるなと気づくきっかけになるから」と雨澤さん。

リクライニングできるタイプの車椅子をどれぐらい傾けると、快適に飲めるのか。盛大にむせながら、最適解を探る。それにしても、このむせる瞬間は本当に苦しくて、こんな姿勢で「水分補給しましょうね~~!」と言われても「結構です。今はのどが渇いてません」と断るかもとも思う。

一方で、高齢になり、背中が丸くなったり腰が大きく曲がったりする、いわゆる「円背(えんぱい)姿勢」になってしまっても、あきらめるのは早いということも知った。上体を無理なく起こすにしても、負荷が少ない姿勢を探すにしても、工夫の余地はある。

身体状況がさほど変わらないはずのメンバー同士でも、快適だと感じるポジショニングはかなり違うというのも興味深い発見でした。あと、たいていは自分が快適だと感じるポジショニングを目指しがち。代わる代わる試して、感覚をシェアし合い、また試す。こうした試行錯誤と対話の積み重ねでようやく「違い」と勘どころが見えてくる。

身体介護をめぐる対話の奥深さと難しさ、面白さを味あわせてもらった一日でもありました。




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