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内観療法

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過去の経験や体験を見つめ直し、自己の再発見とともに、生きる喜びに変える気づきと学び。
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知識と経験の発酵作業

老子第三十三章現代語訳  他の選択肢があったのに、なぜ薬物依存症回復施設で集団生活を送ることを選んだのかというと、私は他者の欺瞞や社会の矛盾をいち早く捉えることができるという長所を持つ独特の感性のために常にストレスを感じていることが多いのですが、その反面、自分自身が社会や他者と同じ矛盾を持ちうることを理解したり受け入れたりすることができず、薬物を使用して自分を誤魔化し続けたという過去があります。  他者との交流を通じてのみ人は変われると確信し、集団生活を通じて積極的に自分

同時存在

 今回は、薬物依存症回復支援施設に入寮して約2年経過した時、「ニュースレター」として投稿した記事です。  前回は入寮後、1週間も経たずに『iが姿をアラワす』を投稿することになり、私が「医療観察法」の処遇を受ける経緯や過去の生き方を綴りました。  2013年4月に傷害事件を起こし、2015年5月に司法病棟を退院後、施設に入寮しながら通院処遇を受けることになった。入院中に自助グループのミーティングを設けてくれたので、ミーティングに参加していた仲間のおかげで寮生活にもすぐに慣れ

ゆらぎ

老子第十八章現代語訳 社会において 平和が議論されるほど 本当は平和ではない 戦争について 議論がされているうちは まだ平和なのだ 男女平等 という声が上がる間は まだ平等ではない 裕福さを他人に誇る間は その人の心が寂しく貧乏なのだ 自分は悟ったと 自称する人間ほど まだ悟ってはいない  最近の出来事を振り返ると、自分が感傷的になっている理由を知る機会に恵まれていることに気づきました。  その感情の先に「自分が望むものor望まないもの」「受け入れ難いことや受

We are not alone.

 夫婦喧嘩が日常茶飯事の家で育ち、私のことでケンカをしているときに聞こえてくるいつものセリフ。  「コイツがこうなのはお前の遺伝子が悪いからだ!」「お前が中卒だから!」と父が母に詰め寄っているのを見て、「オレが生まれなきゃこんなことにはならなかったのになぁ」と思うことで自分を納得させていた。  夫婦喧嘩がひどい時は、母親が外に出て行くのを追いかけて「自殺しないで」と声をかけていた。そんな母親は私に何かしてあげる余裕などほとんどなかったので、ゲームソフトを私に買い与えるなど

よりいと

 私はこれまでの人生で何度も自暴自棄になり、自分の行動を他人や社会のせいにし、自分の行動が報われないと思い込んで感謝や達成感をないがしろにしてきました。  恨みや憎しみを行動に移し、自分の行動を正当化しなければ、自分の存在を維持することさえできないほど、私は自分自身を見つめることから逃げていたのです。  当時、私の心はとても貧しく、自分を表現する方法は反骨心ばかりで、自分がやりたい目的を見失っていました。私は罪悪感や憎しみ、その他さまざまな思いを抱きながら、自分の新しい生

Open Your Heart

オープニング とは外部からの刺激が目、耳、鼻、舌、皮膚などを通じて脳の中枢に到達することで起こる意識現象であり、内面的な物事のとらえ方や感じ方の両方が含まれます。  この感覚に加え、それに対する思考が組み合わさったものが感情であると定義しています。感覚そのものは、ポジティブでもネガティブでもなく、あくまでもニュートラルな報告です。  それは、世の中で起こっていることに対して、あなた独自の感受性や適応力を示す一種のバロメーターに過ぎません。 感情の一覧 心理学者のロバー

想いを胸に抱いて

サバイバルスキル 集団生活で各々が獲得してきた思考・行動パターンをサバイバルスキルと呼びます。これらの思考や行動のクセは、これまでの生活を守ったり、逆に脅かしたりするものなので、集団生活を通じて気づきや修正を促すのですが、その過程で人それぞれの認識や時間の違いからトラブルに発展することも少なくありません。自分の問題は他者の行動によって明らかになり、自分の行動によって、他者の問題が浮き彫りになります。  また、自分の問題と他人の問題の区別がつけられず、他者との境界線が曖昧に

夢幻から無限の知性へ

四諦のサイクル苦諦 人間にとってはこの世界の「一切が苦である」という真理  施設のミーティングで過去を振り返りながら話をするうちに、今まで自分の間違いに気づかなかったことに気づいたり、薬物を使っているときに自分勝手な行動をとってしまったことを後悔して、自責の念に駆られている仲間をよく目にします。私もその中の一人でした。  その後、毎日のプログラムに耐えられず再び薬物に手を出す者、生き方を変えたくないがために施設から逃げ出す者も少なくなかったです。 集諦 「苦には原因

iが姿をアラワす

探しても見つからなかった 忘れていることも忘れていた 取り戻そうとして苦しんだ すべては 自分が何者であるかを思い出す 旅のはじまりだった  私には薬物に対する恐怖や抵抗をもつ情報以上に好奇心や環境の方が整っていた。最初に使用したのは大麻だった。音楽によく効くと聞いていたので積極的に関わった。使った印象は味覚や聴覚に効果が表れ、解放感は酒のほうが強いが、使用後の柔らかい心地よさから好きになった。  しかし、いつの間にか目的が変わり、昔から感じていた孤独感や虚無感を埋め

相対的によりも相似的に

 「結果について計画をたてるのはやめよう」という文章を目にして、色々考えることになった。そういえば、結果という予測や目標の中で計画を立て、その数字に踊らされた生活に恐怖を感じていた。今はそういったものに振り回されることはないが、「結果を求めた生活をしなくなったか?」といわれれば、まだまだそんなことはない。「なぜそうなってしまうのか?」と振り返ると、自分の思考や行動の証明に「対価(見返り)を求めてしまう」傾向に問題があることに気づいた。それが「エゴ」と呼ばれるものの正体だろう。