カミングアウト

「あのね、おとうさん、ほんとはね」

晩御飯を食べていると、突然カミングアウトな雰囲気を醸し出したおはなちゃん

「あのね、あのね、ほんとはね」

なんだなんだ?いったいどうした?

頑張って言葉にしようとしている

よっぽど言いにくいことらしい

がんばれおはなちゃん!

お父さんちゃんと聞くから

「あのね、ほんとはね、あのね、おとうさん・・えとね、あのね」

「うん、うん。ゆっくりでいいよ。ゆっくりでいいから言ってごらん」

「うん、あのね」

「でも言いたくなかったら言わなくてもいいからね」

「うん、あのね、ほんとはね」

「うん、本当は?」

「ざりがにはね、かわにいるんだよ」

「・・知ってますけど」

突然何を言い出すのかと思ったら、

なぜザリガニ!!!?

今までの会話でザリガニのザの字も出てこなかった

かつ!

君が生まれて4年半、一度たりともザリガニについて話題になることはなかった

未だかつてカミングインしてないザリガニ、

カミングスーンの気配さえなかったザリガニ

突然ザリガニについてカミングアウトされてもー!

しかも、その情報、あたしは知っている

ザリガニは川にいる

探偵はBARにいると同じぐらい、誰でも知っている

でもせっかくおはなちゃんが勇気を出して打ち明けたのだから、ちゃんと話を広げてあげないといけない

それが大人対応

「ザリガニはね、お父さんが小さい頃、よく川で獲ってたよ」

「ええええ!?おはなちゃんもざりがにたべたーい!!」

「いや、食べてはないけど・・」

「いや!たべたい!」

「いや食べれないから・・。待てよ、でもおばあちゃんは小さい頃食べてたって言ってた気がする」

「たべたぁぃいい!おとうさんばっかりずるい!」

「だから食べてないし!!」

「たべたぁぁあああぃぃいいいいいっ!ぅぁああああああ!!」


・・・。

この世にザリガニがいなければ、今日の食卓は平和でいれたのに・・・

あたしの子ども時代の楽しかったザリガニ獲りの想い出が、今日、一瞬で暴落した

おしまいまで読んでいただいてありがとうございます( ̄▽ ̄)