【あ】　

「あいしてる」にしようかな。

と、思ったのだけれど。

照れちゃう。

なんか読む側がみんな照れちゃうんじゃないかなぁ照れちゃって読んでくれなくなっちゃうんじゃないかなぁ読んでも恥ずかしさのあまり読んでないふりとかされちゃうんじゃないかなぁ照れるあまり堂々としてもらえずこっそりしか見てもらえないかもしれないなぁ、ほら、知り合いの漫画家さんから掲載が決まったの読んでねって言われて本屋さんに走ったらそれがレディースコミックで表紙がなんだか赤面しちゃう感じのもので買うに買えなくて困った時みたいな、わたしのFACEBOOKのお友達はみなそんな感じになってはしまいか、と想像したら自分が落ち着かなくなって照れちゃう。ああ恥ずかしい。知り合いに会ったら下向いちゃう。ああだめ恥ずかしい、どうしよう。「あ」なら「亜鉛（あえん）」、とか「あこうだい」、とか「安保理（あんぽり）」とか、そういうトレンドとか旬の食べ物とか時事問題とかを置くほうがみんな、安心して読んでくれるのではなかろうか。
とか、とか、

あれこれあれこれ、そんなことを考えて。

やめようかな。
と、思ったのだけれど。

「あ」から始まる以上、やはり逃げるわけにはいくまい。観念して「あいしてる」。甘口辛口両方で。

なんてぇ具合に。もとい。

【あ】

「あいしてる」　（の、甘口）

あいしてる。

読んでる人は、言ってみて。

「あいしてる」

あいしてる。あああいしてる。あいしてる。

あいしているよ

あいしているわ

甘美な言葉。甘く切ないその五文字。時に六文字か七文字。

甘口では、これを発する側限定です。
だって受けとる側になるときは相手や状況によって「嬉しい」「しあわせ」「とろーん」以外にも、「困惑」とか時には「迷惑」とか「怖い」といった様々な気持が入ってくるので必ずしも甘いとばかりいえずややこしいのですもん。けれど発する側なら単純に「気持いい」で統一された甘口になる。

そう。
あいしてる、の甘口はむしろそれを言える側なのです。言われている側ではなくて。

そもそもこれを言える毎日は客観的に見てすでにしあわせな環境にいるわけだけれども。

だから昔々、「愛していると言ってくれ」というドラマがあったけれど、「愛していると言わせてくれ」とか、「愛していると言ってもいいですか」のほうがなんだかしっくりくるわけです。

あいしてる

アイシテル

愛してる

漢字にしてもカタカナにしても、なんだか胸がきゅんとします。きゅん、というのは「胸が甘く締めつけられるの意」です。
この、きゅん、の出どころはなんなのか。

沖縄語では、「愛しているよ」という時に「かなさんどー」と言うのですが、「かなさん」というその語源は「悲しい」から来ているのだそうです。

「愛している」と「悲しい」はよく似てる。まるで同義語みたい。

悲しいくらいの気持ち。
ヒロイズム。だからそれを思うとき発する時、どれも甘いのですね。
チョコレイト。食べ過ぎる。甘過ぎる。虫歯になっちゃう。だめだめ。そっちにいっちゃだめ。

きゅんです。

さて話はすこし変わりますが、言葉の持つ波動そのものがとても高い、よき言葉が３つあります。
なんだと思いますか？

「あいしてる」

「ありがとう」

「すばらしい」

です。

中でもこの「あいしてる」の威力はなかなかだなぁって思うのですけれども、どう思う？みな経験あると思うの。

試験に合格する。

事故を免れる。

免れぬとも怪我ひとつなくすむ。

会社で異例の出世をする。

死にかけていたのが生き返る。

And so on…

そんなことも普通に起きたりしますよね。

もちろん、適当なそれとかまやかしのそれとか不純なそれとかきれいとは言い難いそれではなくて、純正のそれ。
混じり気のない澄んだそれ。

最強ですよね。

ましてや時にはごく自然に互いに一致して掛け合わされたときの威力たるや。

最最強ですよね。

馬上社長は謙遜でなくほんとうにものを色々知らないのだけれど、なぜかそのことだけはあなたと同じように知っています。

矢とか盾とかより何より強い。

世界をも動かす。

時々、それを台無しにして邪魔するような社会の現象が起きるのは、わるい人たちもそれを知っていて、その力を怖がるからなんじゃないかなぁなんて、まるでアニメの世界のようなことを、思ったり思わなかったりします。

そうだ。「あいしてる」のなかなかな威力がわかる小さな話をひとつ。

Tさんは片想いの女性に毎日毎日、「愛しています。愛させてください」とメールや手紙を送りました。

相手の女性は困惑しました。なぜなら彼女には他にすごく好きな男性がいてTさんのことは全くまるきり全然好きではなかったからです。

しかしそんなことは一向に関係なく、Tさんはほとんど毎日毎日、時にはささやかな贈り物と一緒に「愛しています。愛させてください」と言い続けました。

言い続けて約一年。

女性のほうからTさんのもとへ走っていきましたとさ。

世界規模とまではいかないけれど、これも小さな奇跡。

あのね。
夜、眠る前、愛する人の顔を思い浮かべて、「あいしてる」「ありがとう」「すばらしい」と心の中でむにゃむにゃ言ってみて。

仮に、特にそんな相手がいなくても、なんだか気持ちいい。
その言葉を唱えるのは身体にも心にもとてもいいそうです。ついでに、なにか奇跡が起きるかも。

馬上社長も書きながら、今夜からそうしよう、と思いました。

奇跡がどうとか世界を動かすとか、大袈裟なこと言いすぎチャッタ、と、馬上社長は反省しています。

そんな大層なことはなくても、とりあえず「あいしてる」は心と身体にいい。老若男女、特に健全な二人は毎日言おう。

これを見た今日から、おやすみなさいに加えて言って。
「あいしてるよ。おやすみ。（kiss.)」

おはようの朝、玄関で、「いってらっしゃい。あいしてる。（kiss.)」
朝は照れくさかったら、いってらっしゃいのキスだけでもいいです。見送ったあなた（奥さんあるいは旦那さん）は、ダーあるいはハニーが玄関を出てからメールするのさ。
「いってらっしゃい。今日もよい1日でありますように。あいちてる」
「ち」に若干の照れかくしが見える。
が、するがよい。

あいしてる、はサプリメント。

でも摂り過ぎは禁物、用法容量は大切に。

「あいしてる」（の、辛口）

あいしてる。

簡単に言うなや。

あいしてる。あいしてる。

それ違うから。

簡単に言うひとが多過ぎる。
適当に簡単に。
不埒に。

言うなや。


そのようなわけで、「あいしてる」の問題を、そこかしこで耳にした実例を置きながら、隈なく炙り出しますですよ。

その1.「あいしてる。あいしてる。（気持の確認もしあう前から）お願い、僕を癒して」

？

その2.「あいしてる。あいしてる。ひどいな。これだけ色々してあげてるのだから優しくしてくれたっていいのに。僕はとても傷ついた。今泣いています、もう死にそう（片想いの彼女にわざわざお知らせ）」

？？？？？

その3.「あいしてる。あいしてる。他の男より愛してるってこと飛び降りて証明してやる！もう死んでやる（屋上に登っていった…）」ｺﾞﾜｲｺﾞﾜｽｷﾞﾙ…。