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2時間で丸わかりのインボイス制度と消費税

「2時間で丸わかりインボイスと消費税の基本を学ぶ」吉澤大著・かんき出版2022年9月発行

著者は1967年生まれの税理士。最近のビジネス書のベストセラーである。

2023年10月インボイス制度がスタートする。インボイスとは消費税の納税額の証明書。従来の「区分記載請求書」を補正した適格請求書発行事業者による「適格請求書」をいう。

インボイス請求書が無くば、来年10月以降、買い手は仕入消費税を売上消費税から税額控除できず、消費税納付だけをしなければならない。適格請求書発行事業者は自動的に消費税課税事業者になるからだ。

従来、売上高1,000万円以下の中小事業者は消費税納付が免除された。免税業者は消費税分が利益となっていた。

インボイス制度はこの免税業者の「益税つぶし」が目的である。今後、免税業者と取引する者は仕入消費税を控除できない。

免税業者が課税業者になれば、問題はない。免税業者のままならば、①取引先は消費税分を自己負担する。②取引先へ仕入消費税分を値引きさせる。③取引を解消する。この三つの方法しかない。

受注する中小業者は立場が弱い。値引きをして免税業者として取引を継続するか、取引解消を応諾するしかない。

消費税処理はかなり面倒で、会計ソフト、請求書アプリの導入が必要となる。簡易課税制度の適用を受ける方法もある。それでも税計算は必要となる。税計算は従来の「総額方式」からインボイス集計の「積み上げ方式」に変更される。計算は複雑となる。

円安と資源価格高騰で仕入価格は上昇。価格転嫁できる業者は少ない。零細企業はかなり難しい。

免税事業者は全事業者の4割を占める。それゆえにインボイス制度導入を契機に廃業する零細事業者も多いだろう。

消費税は税収入でトップを占める。法人税、所得税より多い。税収増加が財務省の真の目的である。

ではインボイスで税収はどれくらい増加するのか?財務省は2,480億円の税収増を見込む。免税業者488万人、このうちBtoBの業者は372万人、4割が課税業者となる予想。インボイス制度の影響と比して税収効果は少ない。当局は課税の平等性を重視する。

かつて商店街が消滅し、スーパー、大型ショッピングセンターに変質した。同じことが起きようとしている。

コロナで飲食、サービス業は大打撃を受けた。外食、宿泊も大手は生き延び、中小は消滅している。

大手集中で、生産性は向上するだろう。しかし一度、消滅した事業は再び戻らない。海外移転した輸出産業が国内に戻らないのと同じである。

二重構造は弱点もあるが、強みもある。長所を伸ばさず、短所を消滅させた結果、中間層が消滅した。

日本経済の復活は「新しい資本主義」でなく、「力強い中小企業の復活」こそ必要ではないのか?

国民は岸田首相を真似してこう言いたい。「高い税金は断じて容認できない。また支払える立場にない。今後も丁寧な説明を続け、またしっかりと検討するものの、現段階での納税は差し控えたい」と。だが税務署は許してくれない。

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