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シニアエコノミーの将来

「老後不安を乗り越えるシニアエコノミー」大前研一著・小学館新書2023年10月発行

著者は1943年生まれ、経済・経営コンサルタント、経営指導と人材育成を行うBBT大学学長を務める。

本書は著者が主宰する企業経営者の勉強会での講演、雑誌連載記事からの抜粋、加筆した単行本。

人口減・高齢化率の最先端をゆく日本で、シニア世代の問題を解決することは大きなビジネスチャンスである。個人金融資産2,000兆円の6割を高齢者が保有する。高齢者の消費拡大が日本経済の復活につながると言う。

高齢者の消費拡大のためには、①老後不安をなくす、②高齢者の保有資産からキャッシュを生み出す、③人生を楽しむため、体の続く限り働くことを提案する。

①の不安には生涯バランスシートを作成し、死後に資産を残さない方法を取る。②のキャッシュ創出には「リバース・モゲージ」手法がある。③の働き続けることによって、老後不安、収入不安の解決になると言う。

税制改革案として次の提案をする。

①不動産キャピタルゲイン税を保有年数によらず、一律20%にする。

②銀行預金の金利課税及び資産運用益への課税廃止。

③国、自治体、NPO等への寄付は収入から全額控除、寄付額の10倍を相続税対象から除く。

更に①死ぬときは資産ゼロでよい。②余るものがあったら半分は国に寄付する。③死ぬとき「いい人生だった」と思い残さない生き方をせよ。と提言する。

岸田政権の政策に対しては厳しく批判する。マイナ保険証は必ず失敗する。なぜなら役所ありきの考え方で、生態認証制度を活用していないからだと言う。

インボイス導入は日本の税務会計デジタル化の最大のチャンス。しかし例外措置、補助金上乗せでチャンスを無駄にした。日本のデジタル化失敗の構造的原因がここにあると言う。

岸田政権政策の「所得倍増計画」は不可能と判明、お蔵入りした。「資産所得」倍増にすり替わった。これによって資産、株、不動産なき国民はカヤの外である。

「成長と分配の好循環をもたらす新しい資本主義」は意味不明。むしろ「借金と衰退の悪循環をもたらす新しい社会主義」であると厳しく批判する。

「デジタル田園都市国家構想」で2022年度中にデジタル推進委員2万人以上確保とぶち上げたが尻つぼみ。大平正芳内閣の「田園都市構想」の物まね。言葉遊び、思い付き政策ばかり。

日本のデジタル化、高齢化対策、日本経済復活の道はほど遠く、中長期課題解決の具体策がないまま、ただ時間だけが経過する。政治、官僚も期待できず、日本滅亡の道を進んでいるようにしか思えないのは私だけだろうか。

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