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特徴を出すための普通

こんにちは。

多様性が叫ばれる現代ですが、非常に難しい概念だなと日頃から思うところがあります。
特徴的な個性があると周囲からは色物扱いを受けてしまうことも少なくありません。
しかし、普通のことをやっていても面白みや魅力というのはなかなか表現することも出来ません。
他者の評価なんかに左右されないことも大切ですが、他者の意見に耳を傾けることで、客観的な自身の立ち位置を確認することも出来るので、私は大切だと思います。
ではどのように特徴を出せば良いか難しくなりますが、上記の2つにはお互いを理解する作業が欠けていると考えます。
特徴を出すためには、まず普通を知ってみる必要があると思います。
普通を改善することで、より良い特徴として昇華することが出来ます。
世の中の普通は、長い歴史によって経験則的に形成された文化と捉えることも出来ますので、合理的・調和的・普遍的であることが多く、わざわざ変える必要がないようにも思えます。
しかし、特に時代の流れが早い現代においては当てはまらないことも多々あり、変化がある方がむしろ普遍的であることもあり得ます。
さらに合理性も経済合理性の観点から考えられた現象も多くあり、本当は個別に必要な事柄も見えにくく忘れ去られていることもあります。
建築も例に漏れず、普通を提供することが良いと市場では評価されることが多くありますが、本当にそうなのか各々考える必要があると考えます。
そのために今回は私の生業から住宅、特にマンション住宅の普通に関して説明させてもらい、何か疑問を持って頂けたらと思います。

プランに関してですが、共用部から占有部に入るために当然玄関が最初に位置します。
玄関は1平米前後の計画が多く、概ねシューズクローゼットが脇に備えられております。
入ってすぐに照明のスイッチ(場合によっては人感センサースイッチ)があり、玄関付近を明るくすることが可能な計画が普通でしょう。
・玄関の広さは1平米前後で良いのか
・シューズクローゼットは玄関に備え付けのもので足りているか
・収納するのもは靴だけか
・明るくしたいのは玄関だけか
いくつか普通に対して疑問点を提案させてもらいます。
玄関の広さですが、地方や昔の玄関であれば三和土(たたき)と言われる土間が玄関の床となり、多目的な用途を担うスペースでした。
そのため大きさも1平米どころではなく、かなり広く用意することが一般的でした。
マンションとなると面積の制約が大きくなるため、必要最低限の面積で玄関での動作を制限することが合理的と考えられたのも納得は出来ますが、個別で考えるとその広さは妥当でしょうか?
最近では併設している駐輪場に置くには心配なほど高額な自転車を保有している方もいらっしゃいます。
また、小さなお子さんがいればベビーカーの置き場所や外での遊ぶ道具なども室内にしまうには不便が多いように感じます。
さらに、玄関は家の顔と考えるのが古くからの日本建築の考え方です。
人を頻繁に招く習慣がある方にとって、最適な玄関となっているでしょうか。
さらに、照明は玄関付近しか操作出来ないことが普通ではありますが、防犯や恐怖心を緩和するために玄関だけでなく奥の部屋まで操作出来ても良いと思います。
もちろん今の疑問は全てデメリットもあるわけですが、その判断は個人ですれば良いと思います。

次に各部屋を考えていきますが、廊下を経由して水廻りは一角にまとまり、1番置くの広いバルコニーが面している部屋がリビング・ダイニングとなります。
廊下の手前側には個室がある場合は、そこが寝室となります。
おそらくこれが普通のマンションでのプランとなります。
・水廻りはまとまっていて良いのか
・リビングは絶対奥のバルコニーに面したスペースなのか
・個室は全体の手前が適切か
まず水廻りに関してですが、マンションの場合排水の都合上一角にまとまっていることがほとんどです。
排水するためには、配管に勾配を設ける必要があるのですが、勾配さえ確保出来れば水廻りはどこにでも設置できます。
しかし、勾配確保のためには床を上げる可能性もあるため部屋の空間を圧迫することがあり得ます。
多くの場合、配管距離を短くすることで床を上げることを最小限にして空間を広くすることが叶うため、これは合理的に考えられた結果だと思います。
ただし、これも個別の生活を考えたら床を上げてでも水廻りを分散される計画があっても良いかと考えます。
リビング・ダイニングが奥のバルコニーに面した場所に設置されるのは、窓が大きく、明るい広い空間として計画しやすいからです。
また、バルコニーは道路側か隣地に面していない方向に計画されることが多いため、プライバシーの観点からも有利なため、窓を開放しながら生活出来るメリットもあります。
これも個別で考えた時、その必要があるかを検討する必要があります。
家に長くいない方にとって、朝と夜だけを過ごす空間としてはオーバースペックと言えないこともないでしょう。
また、バルコニーの利用として洗濯物を干したり家庭菜園を行う方にとってはリビング・ダイニングを経由する必要があります。
キッチンや洗面室からのアクセスを優先してバルコニーに近づけることで、家事軽減を図ることも出来ます。
また個室を手前に設けることは、概ね共用部に面した場所となることが多くなります。
マンションの事情によりますが、睡眠を取る部屋であった際に他の住人の影響を受ける可能性があります。
開放感はいらないかもしれませんが、影響を受けづらい場所を探すことも良いかと思います。

まだまだよく提供されているマンション住宅には普通が隠れています。
しかし、個別の生活を考えた時に違和感を感じたら、しょうがないと考えるのか、改善したいと考えるのか。
改善したいと考えた時がおそらく自宅に特徴を出すチャンスだと思います。
みなさんのご自宅、これから検討している物件において、まずは普通のことに疑問を持って頂き特徴を出すきっかけを探ってみてください。

では、また。

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