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生活の建築知識.58

おはようございます。

過去住んでいた物件で夏場にエアコンで冷房をつけた時にポコポコと音が鳴ってしまったことがありました。
こんな経験がある方はいますでしょうか?
結論から言えば換気と気密の問題です。
音が鳴った時にキッチンでレンジフードを稼働させていました。
そして気密が高い物件であったために、冷房時に発生するドレン排水が室内側に引っ張られてしまい、配管内で逆流しかけポコポコ音を出していたのです。
原因がすぐにわかったので、レンジフードを止めたら案の定音も止まりましたが、毎回これになるのかとガッカリしたこと覚えがあります。
そのような手間は発生しないことが良いのですが、今回は何気なく利用する換気についてのあれこれについて説明をしていきます。

換気というと、まず自然換気があります。
当然ですが、窓を開放して通気させることで外部の新鮮な空気を取り込むことが可能です。
この時換気を効率良くするためには対角線上に窓を開放することが有効です。
しかし、自然換気の効率は物件の環境にも左右されます。
窓の前面に風を遮るものがあれば、やはり空気を取り込みにくくなります。
また、風向きが開放している窓の対角線上に対して直行であったり、そもそも風がなければ換気効率は落ちます。
マンションなどでは考慮することも難しいかもしれませんが、出来れば地域の風向き特性を把握し、その方向と平行方向に窓が配置されていると効率的な自然換気が可能となります。

自然換気には外部の風を利用した方法以外にも存在します。
暖かい空気は上へ、冷たい空気は下に流れる性質があります。
室内においてもこの空気の流れは発生し、高い位置の窓と低い位置の窓を開放することで換気されます。
高い位置の窓からは排気、低い位置の窓からは給気が行われます。
この換気システムの問題点としては、排気する窓に向かって風が吹いていると換気効率は著しく悪化します。

次に機械換気についてですが、住宅内で機械換気を行う場所は キッチン・トイレ・浴室・洗面室が一般的です。
どれも基本的には強制排気をすることで、換気を促す方法を取ります。
各所の排気能力は換気扇の種類にもよりますが、キッチンが最も大きい能力を有します。
理由としては、発生する汚染空気(水蒸気・臭気・煙のこと)が多く、キッチン換気用のダクトは直径150mmφやそれに類する大きさのダクトが利用されています。
一方、トイレ・浴室・洗面室は100mmφのダクトが多く利用されているため、能力としてはキッチンより劣ります。
強制排気の換気を行うと、室内の気圧は下がります。
真空パックなどを想像してもらえるとわかりやすいかもしれませんが、空気を抜いてしまうとパックは膨らんだ状態を保てなくなります。
住宅ではここまでのことは起こりえませんが、各部屋の扉が開きにくくなることがあります。
それを避けるために、トイレ・浴室・洗面室の扉にはガラリが付いていたり、扉の下部を大きめに開けていること(アンダーカット)があります。
そのように施されていることで給気もしやすくなり、換気効率と上がります。
そして冒頭に説明したレンジフードによる換気ですが、排気する空気の対象はキッチンと一続きになっているスペース全てとなります。
広域が換気対象となること、換気能力が比較的高いこと、そして近年の高気密性能が組み合わさるとわずかな隙間であるエアコンのドレン配管内部すら空気を引っ張ってしまいます。

現行の基準では24時間換気設備を設けることが決められています。
多くはレンジフードか浴室乾燥機に付いていますが、合わせて給気口が必要となります。
※ロスナイなどが設置されている場合は当てはまりません。
給気口があればこちらを開放することで気密を緩和し換気することが可能になります。
しかしレンジフードでの換気の場合、給気量が追いつかないケースもあります。
給気量が追いつかない場合は、窓を開ければ解決出来ます。
もしくは見合うだけの給気量を確保するために強制給気を行う機械換気を設けることも良いでしょう。

近年は高気密とすることが一般的な性能のため、このようなことが起こっても不思議はありません。
冬場の暖房時を考えれば高気密は決して悪いことではありませんが、日本はどちらかというと夏場の蒸し暑さに対して工夫がされてきた歴史があります。
私個人の意見ではありますが、建築において今主流の基準が必ずしも日本の風土に適しているとは思えない側面もあるように感じます。
換気性能だけに限った話ではありませんが、スペックだけを気にするより、実際に快適かどうかを肌で感じることが良い物件を選ぶのに有効な手段かもしれません。

では、また。

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