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ディジュリドゥの選び方

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楽器選びはパーソナルな感覚とサウンドで、というのが一般的です。コンテンポラリーとトラディショナルという二つのスタイルそれぞれにフィットするディジュリドゥ。現地のアボリジナルのディ… もっと読む
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1. ディジュリドゥの選び方って何?

なぜこのコラムを書くのか? 音の好みや演奏の感覚はパーソナルなものです。「楽器の選び方」を人に伝えるって、自分の好みを押し付けてるみたいでなんかおこがましいし、楽器選びに正解は無いように思えます。 なのにあえて、「how to choose didjeridu - ディジュリドゥの選び方」のマガジンをnoteで書くのか?ディジュリドゥの選び方を人に伝えるって意味があるのか?関西人である自分が自分自身に激しいツッコミを入れ、それでもなお「いや、この情報はあった方がいい!」と

2. ビギナーのディジュリドゥの選び方

イダキ・マスターに選んでもらったファースト・イダキ ぼくにとっての釣りはメンターがいることで、スムーズで楽しさいっぱいにスタートすることができました。ぼくのディジュリドゥの最初の師は2001年に出会ったイダキ・マスターD. Gurruwiwi(故人)でした。 2000年の初渡豪の際、ダーウィンで白人のディジュリドゥ職人Frank Thillに出会いました。彼の家で聞かせてもらった現地録音のテープの音にぶっ飛んだ。それはイダキ・マスターの演奏するイダキが轟く、Bunggul

3. コンテンポラリーとトラディショナル

コンテンポラリーとトラディショナル ディジュリドゥを選ぶ時、一番最初のポイントは「演奏スタイル」の違いです。そを大きく分けるのは、コンテンポラリーとトラディショナルの二つです。この二つのスタイルの中にさらに細分化されたスタイルがあると思いますが、まずは自分の演奏スタイルがどちらなのかで選ぶ楽器は大きく変わってきます。 コンテンポラリーはノンアボリジナルのディジュリドゥ奏者の90%以上(2023年4月のインスタグラムで#didgeridooは19万件、#yidakiは1.6

4. スタイルを選ばない楽器

どんな演奏スタイルにもフィットするディジュリドゥ コンテンポラリーとトラディショナル、両方の集合の積にあたる、どちらにもフィットする楽器があります。ここではそういう楽器を「スタイルを選ばない楽器」というカテゴリーとして見てみたいと思います。 スタイルを選ばない楽器の条件 空洞がマウスピースからボトムまで狭まる箇所がなくオープン バックプレッシャーはミドルかややロー マウスピースの内径は「28~32mm」程度で小さすぎず、大きすぎないサイズ ピッチが「D#」以下にな

5. アボリジナルはどういう楽器を選ぶのか

アボリジナルのディジュリドゥ奏者はどんな楽器を選ぶのか? 前回はコンテンポラリー、トラディショナル、二つのスタイルに関わらずフィットする楽器についてのべました。この章からはトラディショナル目線でのセレクト方法について書いていきたいと思います。 Earth Tubeではアボリジナルが使っていたユーズドの楽器、彼らのプライベートの楽器を収集・保存しています。それは彼らが一体どういう楽器を好むのか?彼らの使っている楽器には共通したナニカが存在するのか?そういった伝統奏法を学ぶ人

6. 演奏感のウェイトで楽器を選ぶ

キッズ・イダキは軽自動車や50ccのスクーター感覚 出音の派手さや音量の大きさではなく、ハミングのギア=演奏感のウェイトでイダキをチョイスする。その感じってわかりやすく言うとバイクの排気量や車の種類に似ているのかもしれません。50ccのスクーター→125ccのモトクロス→250/400ccのバイク→ハーレー(限定解除)。車で例えるなら、軽自動車→普通車→スポーツカー→フェラーリー、のような感じ。 スクーターも軽自動車もどちらも誰でもテクなしで乗れる感じがします。そして、2

7. キッズ・イダキ

親から子へ手渡すイダキ キッズ・イダキはその名のとおり、ヨォルングの子供たちが使うイダキです。初めて北東アーネム・ランドを訪れた時にイダキ・マスターD. Gurruwiwiが語っていたことの一つに 「子供のころMilimgimbiから父のMonyuに連れられて、何日もかけてビーチ沿いをずーっとYirrkalaまで歩いたんだ。その時お父さんから兄へはビルマ(クラップスティック)を、そしてわたしにはイダキを手渡され、それを片時も離さず旅したんだ。」 というストーリーを聞きま

8. MakoとKenbi - ドローンしか鳴らさない楽器 前編

Makoってどんな楽器? Mako(マーゴ)は西はGunbalanya(Oenpelli)から東はManingrida周辺、南はWugularr(Beswick)まで広い範囲でディジュリドゥを指す言葉として使わるようになりました。しかし、本来はKunwinjku語、Kune語、Kuninjku語でディジュリドゥを意味する言葉です。 マーゴはKUNBORRK(グンボルク : Bininj Kunwok語でダンスという意味)ダンスソングの伴奏をするディジュリドゥで、トゥーツ

9. MakoとKenbi - ドローンしか鳴らさない楽器 後編

Mako/Kenbiの魅力とは 「コールとトゥーツを鳴らす楽器じゃないからMako/Kenbiは自分には必要ない」という意見も時々聞きます。Mako(スペルはマーコですが発音はマーゴ)の名手David Blanasi、Kenbiの名手Nicky Jorrockのサウンドを聞けば、それぞれイダキにはないワイルドさや、やわらかく心地よい響き、その楽器ならではの特性を思いっきり引き出していることがわかります。そういった「らしさ」を追求するのも楽しみの一つです。 個人的にはMa

10. オールドファッションなイダキ

現代的なハードタングとオールドファッション 現在の北東アーネム・ランドの葬儀や割礼の場で使われる楽器は「F~G#」というハイピッチな楽器が主流になっているようです。それは60-70年代に勃興したと言われている「Nganarr-dal(ハードタング)」と彼らが呼ぶ、新しい演奏スタイルです。 ハードタング以前のイダキ演奏をどう呼ぶのか?英語で「オールド」という言葉の表現として「オールド(古い)スタイル」、「オールドマン(老人の)スタイル」、「オールドファッション(古風な)スタ

11. ディジュリドゥの上達へつながる楽器選び1

アボリジナルの人々のディジュリドゥとの接し方 アボリジナルのディジュリドゥ奏者って、なぜか誰もが初見の楽器をテストをせずにいきなり唄の伴奏をスタートします。儀式には手ぶらで行って、その場にある楽器を借りて演奏するっていうこともよく見かける光景です。 バランダ(ノンアボリジナル)のぼくらは、たいていドローン・トゥーツ・コールを短く鳴らしてみて、その3種類の音の大体の距離感をはかってから本格的な演奏をスタートとすることが多いんじゃないかなと思います。 この違いって何なんでし

12. ディジュリドゥの上達へつながる楽器選び2

センターになる楽器を選ぶ チャレンジングな楽器を選んだ場合、いつまでたっても何がなんだか分からない状態では成長は望めません。まずは今の自分にとって一番ナチュラルに鳴らしやすさを感じる「センターになる楽器」を1本セレクトするのがおすすめです。その選択基準は無理なく「乗りこなせてる/楽に演奏できる」という感覚があるかどうかです。 センターからほんの少しチャレンジングな楽器、それほど距離を感じないが明らかに「乗りこなせてない」感じの楽器をセレクトすると、どの要素が自分に足りない

13. ペイントの種類でディジュリドゥを選ぶ 1

アボリジナルの作るディジュリドゥに描かれるアートはさまざまです。アーネム・ランドのアボリジナルが描く「Rarrk(クロスハッチ)」と呼ばれる手法では、細い連続的なラインの上に90度よりも鋭角にクロスさせたラインを重ねて描かれます。 Daly Riverエリアではクロスハッチは用いられず、砂漠のアートに見られるようなドット(点描)とラインを中心に描かれるようです。 ディジュリドゥに描かれるのは、虹や水や泡などの自然現象の他にも、炎やクロコダイルの皮模様などその氏族特有のパタ

14. ペイントの種類でディジュリドゥを選ぶ2

経年変化と共に色あせていくチベットの砂曼荼羅のようなオーカペイント 個人的にはシンプルなペイントであってもオーカで描かれているディジュリドゥが一番クールに感じます。ユーカリの木と岩絵具という自然の中に存在する素材だけで作られているというテイストを強く感じさせるからです。また、画家自身もわざわざ手間のかかるオーカで描くのだから気持ちがのっているんじゃないかなと感じます。 ボディペイントにオーカが使われる時には時間をかけて丁寧に描かれたアートも、チベットの砂曼荼羅のように最終