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4. 演奏によるクラックの原因と対処

含水率100〜200%の生木でディジュリドゥは作られる

アコースティックギターやウッドベースが割れるとか、木製のリコーダーが割れるということはあまり聞きませんが、ディジュリドゥでは結構な頻度でクラックが散発します。

それはディジュリドゥが生木を使って作られるのが一番の原因だと考えられます。カットされたばかりの生木の含水率は100~200%もあり、自然大気中での平衡状態での木材の含水率は15%ほどなのでその落差は大きい。生木で製作がはじまると急激に木の水分は抜けていきます。その過程で潜在的なクラックができてしまう場合があります。

[樹皮と白太のレイヤー ]Dhalilnybuyでヨォルングの若者からもらった製作途中のイダキ。樹皮をめくるとすぐ下に白太があり、その下に赤身が出てきます。ボトムが大きく長い楽器ほどマウスピース周辺から下をしっかりと削ることになるので赤身になっていることが多い。

それ以外にもクラックの要因はさまざまですが、大きく分けると2つのタイプがあるんじゃないかと思います。1つは演奏によるクラック、もう1つが薄さによるクラックです。あるいはこの2つの要素が重なった場合が考えられます。


演奏によるクラックの場合

「演奏によるクラック」はどうやって起るのでしょう。みなさんは寒い季節にディジュリドゥを鳴らした時、空洞の中を見たことがありますか?寒い季節に外で息を吐くと白くなります。ディジュリドゥが冷えきっている時、同じように空洞の中で呼気は白くスパイラル状に渦巻いてます。

ペンライトでその様子を見て見ると、フーっと強い息を吹き入れると、マウスピース直下20-30cmの所で白い息は留まり続けます。ハァーっと両手を暖めるようにそぉっと息をはくと、白い息は少しづつボトムに向けて移動していきます。そして、何度かハァーっと息をはき続けると、最終的にはボトムからパイプの煙のように白い息が出てきます。

この現象はディジュリドゥのクラックの原因を探るのに非常に示唆的です。勢いの無いスローな呼気はゆっくりとディジュリドゥから輩出されます。強くスピーディーな呼気はマウスピース直下に留まり続けます。

長時間ディジュリドゥを演奏していて、マウスピース直下20-30cmがやけにあったかくなる、という経験をしたことはありませんか?その時、まわりは冷たく乾燥しているのに、マウスピース直下だけが急激に高音多湿の状態になっていると考えられます。その部分が冷却・乾燥する時に割れるという可能性が高いようです。


演奏によるクラックを避ける方法

演奏方法を急に変えることはできませんが、強くコンプレッションの効いたブレスを勢いよくディジュリドゥに当てるといった演奏から、両手を暖めるような重くゆったりとした呼気がディジュリドゥに入っていくように意識的に変えていくと、本当にクラックは起こりにくくなります。

キャリアの長いディジュリドゥ奏者ほどクラックを起こしにくくなるのは、演奏がこなれてきて無駄なパワーをディジュリドゥに注がなくなるからじゃないかと思います。自分自身のクラック体験も演奏をスタートして3-4年に集中していて、その後はゼロに近いと思います。

濡れた状態が長く続くことを避けるためにウエスで空洞内側を拭くことは管楽器全般で推奨されることだと思うので、こまめにマウスピース周辺を拭いてあげるのも意外なほど効果的です。

マウスピース周辺を拭いた後は、急激な乾燥を防ぐためにマウスピースの上に薄い布をかけてディジュリドゥ・スタンドに立てかけます。そうすることでゆっくり乾燥していきます。この方法は湿度の高い時期にはカビの原因になってしまう場合がありますので、時期にお気をつけください。

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