季節の移ろい
昔から、季節の匂いや感覚に敏感だった。
春風が吹いた後の、ほんのり柔らかく体を包む甘い香り、夏の草木から不意に香る、清々しい青臭さ、秋の夕暮れに、理由なく訪れる切なさ、冬の早朝、頬をピシャリと打つ風の清涼さ。
視覚することのできない、季節という4つの区切りに対して、感覚的にはなるのだけれど、はっきりと、僕の五感は反応してくれる。少なくとも、物心ついた時から、今日に至るまでは。
季節の移ろいとは不思議なもので、巡るたびに、過去の情景が思い出される。それは、自分にとって心地よいものであろうがなかろうが、否応なしに。まるで、時間になると必ず現れる、置き時計のドワーフのように。
できることなら、良い記憶だけを思い出したいものだなぁ、と思う。だけれども、人間である以上、ネガティブな感情は、切っても切り離せないものなのだから、これからは、少しでも良い記憶を積み重ねられるように、とも思う。
朝夕の風が、心地よい清涼感を帯びてきて、夏の終りと、秋の始まりを感じる今日此頃。
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