一杯のコーヒー

コーヒーって不思議だな、と思う。

どんなに落ち込んでいても、嫌なことがあっても、粉の入ったフィルターに、コポコポとお湯を注ぎ込んで、香り立つ湯気を嗅ぐと、やさぐれていた心の紐が、少しだけ緩まったような気になってくる。

この香りを楽しみたいから、僕は夏でも、自宅では温かいコーヒーを淹れるようにしている。そんなに良いコーヒー豆を使っているわけではないから、なかなか喫茶店のようにはいかないけれど、それでも、芳醇な香りが狭い部屋中を満たすと、落ち込んでいる時なんかは、「うん、まだ大丈夫だ」などと、理由もなく思えてくるから、不思議なもので。

そして、一杯のコーヒーを飲み終える頃には、前よりほんの少しだけ、楽観的で落ち着きを取り戻した自分がいる。そんなコーヒーを飲んで、気持ちを整えるのが朝のルーティンになってから、はや十数年が過ぎようとしている。良い朝を、そして良い一日を迎えるために、僕の朝の傍らには、今日も一杯のコーヒーがある。




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