見出し画像

我が子に好きなことしてもらいたい一心で、自分の好きなことがわからなくなった母 続き


 「もう、やだ。」と言って家を飛び出した私ですが、


 実際何が「やだ」なのか自分でもよく分かっていなかった。こんがらかった黒い糸が胸の中にぎゅうぎゅうに押し込まれて雨雲みたいになってる感じ。考えても答えが見えない。

 途中ワインを買って、そんな私でも受け入れてくれる友人の家に行った。携帯を忘れたのでアポなしで夕飯時に押しかけたけど、友人は快く迎えてくれた。
「家出できてよかったね」
本当だね。家を出てなかったら、私どうなってたんだろう。その先が怖くて想像できない。

 久しぶりに人のご飯をご馳走になり、色々おしゃべりして、ワイン飲んで、久しぶりに1人で寝た。翌日は友人が入れてくれたおいしいコーヒーをゆっくり飲んで、友人宅を後にした。隣町のスーパーまで行って、いつもは一日2000円って決めているんだけど、今日だけとカードでいっぱい美味しそうな食材を買って1日ぶりの自宅に帰った。

 家には息子しかおらず、息子は私の顔を見るなり抱きついてきた。「昨日ひとりで寝たんだよ。ママが事故にあったかもとか、色々考えちゃった。」という息子が可愛くて、癒された。
 息子と台所で昼過ぎからyoutube見ながら、料理しては食べてを繰り返し、遅くに帰って来た旦那と娘と入れ違いに私と息子は台所を出て布団に入った。

 旦那は私と息子の問題だと思っていたらしく、息子と仲良くしている私を見てなにも言ってこなかった。でも実際のところは私の胸の雨雲はそのままだったし、私の心にできたちょっとの余裕も埋まるのは時間の問題だった。
 そして次の日の昼過ぎにその時が来た。

 些細なことがきっかけだった。何だかあまりよく思い出せないのだけど、私は突然子供達に怒鳴り始めた。そして、旦那にも怒鳴り始めた。口から黒い糸がスルスルと出てきた。
「私の時間を返せ!」「何でも私に押し付けるな!」そんなことを叫んだことは記憶にある。

 出始めると止まらなくなった黒い糸は、外が暗くなってからも私の口から出続けた。

 旦那が私の言葉を、私の中から出てくるどろどろした言葉を、ただ聞いてくれた。時々旦那は「それはどういうこと?」って質問をしてきた。その度に私は自分の発した言葉がどういうことなのかを考えた。そうするとだんだん私の心の中が整理されて、私がなぜこんなになってしまったのかが何となくわかってきた。

 家族のためと思ってたくさんの事を我慢している。お母さんってそういうものだと思ってる。でも時々ガス抜きしてる。ドラマ観まくったり、ランチ行ったり、衝動買いしたり。
 息子が学校に行かなくなってずっと家にいて、そういうことができなくなってた。旦那や娘がいることでもっとできなくなった。ずっとお母さんでいなくてはならなくなった。しかも息子のモチベーションを上げるために旦那や娘から守らなくてはとも思っていた。それが私の今与えられた使命だと自分にいい聞かせていた。

 「家出できてよかったね。」私は元に戻ることができた。

 衝動で自殺したり、犯罪を犯してしまったりする人の心の状態が少しわかった気がした。もう1人の自分が暴れ出してどうにも止まらなくなる感じ。心によくないものを溜め込んでいっぱいになったら、スイッチが入る。コントロールができなくなる。私は容量が小さいからすぐにスイッチが入ってしまったのかも知れないけど、いっぱい我慢できる容量が大きい人がいっぱいになったら、もっと辛いんだろうなと思ってゾッとした。

 私たちは我慢できる子供に育てられてきた。でも、我慢は心の健康に良くないです。我慢できる子供ではなく、ストレスに強い子供を育てたいと思った。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?