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「ブラックホーク・ダウン」およびユアン・ブレムナー【※ネタバレあり】

前にも観たけど、アメプラで観直してみる。
観直して良かった、名作だよこれは。

初めて観たのは映画館でだっただけど、でもなんか好きになれなくて。
人によっては『名作戦争映画』のベストに入れる人もいるけど、なんで?
って。

気になったのは2点、
「米兵キャラクター、戦闘が入り混じりすぎて誰が誰だか判んなくなる」
「これじゃソマリア人はゾンビ扱いだよ」
というところ。

ひとつ目としては、客を戦場の目線に巻き込むことが目的の映画であるら、
ある意味達成はされてんのかなー、と。

『プライベート・ライアン』の冒頭30分の状態が2時間続くような映画ですから。
実際に戦場で登場人物たちが「誰が誰だか判らん」状態なシーンもあったりするし。
リアルに戦場を再現したした結果、ああなる狙いだったのかな。

ふたつ目の点については、差別意識的なものを感じて嫌悪感が出てしまったんだな。
でも、ちょっとだけ見直したら印象が違った。
ちゃんと民間人を描き分けているし、ソマリア人はあくまで『ゲリラ民兵』として描かれていた。

英語を話せるソマリア民兵が、アメリカ人捕虜に向かって
「アメリカとソマリアの価値観の違い」
について語るシーンなんかでも、一緒くたに「ゾンビ」扱いはしていなかったのかなと。

あと、「誰が誰だか」とか言いながら、1人のキャストが気になる。
情けない顔で、情けないことを言う重機関銃射手。
『お前を頼りにしているんだから、ここは援護無しでもお前が守れ!』
『頼りにされたくねえよっ!』
ってやり取りが好きだった。

それで、この俳優は絶対にどっかで見たことがあるぞと思いながら、誰だか思い出せなくてモヤモヤしているうちに、また戦場目線に巻き込まれて。
「死ぬな、撃て、どっかで見た情けない顔の俳優!」
なんて。

そうして、ひとりの登場人物に注目してそのキャラクター目線で観ていったら、戦場目線もあってすげえスリリングで。
そうか、この感触を出したかったのか。

そして、ラスと近くなってようやく気付いた。
「スパッドだ!」
『トレインスポッティング』で情けなかったスパッドは、やっぱりソマリアの戦場でも頼りなかった。
なのに、強い。

かっこいい役もらったなあ、ユアン・ブレムナー。
そして、いい役者さんなんだなあ。
これからは「スパッド」じゃなくて、ちゃんと『ユアン・ブレムナー』と覚えたよ、ユアン。

でも、やっぱりラスト近くの象徴的なシーン。
兵士たちが走ってパキスタン軍基地へ逃げていく。
途中、ランナーズハイなのか幻覚なのか黒人の少年たちに先導されて、沿道からは拍手を受けて走り、
無事に国連軍基地のゲートをくぐって振り向くと、朝日が昇り手前には霧。
画面の奥にどよめくだけの群集と、群集の手前にうろうろとゆっくり歩き回るソマリア民兵たち。

その画面が「ドーン・オブ・ザ・デッド」と被るんです、どうしても。

だから『名作』であるとは気付かされたが、やっぱり「好きな映画」ではないな。
あのワンシーンさえなければ、素直に好きになれた作品だったのかも。


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