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画家と伯爵

ペアリングイベントのはなしが終わったかと思ったらカクテルのはなし。
BARっぽい投稿ばかりで個人的には悪くないと思うけど、案の定でこの手のものはあまり読まれない。まあ日常を徒然に書いても大して読まれることもないからいいか。

そんなわけで久々にオリジナルカクテル作りました。
タイトルはなんかちゃちいですが…レシピ見てわかる人にはわかってもらえるタイトル。
というわけでとりあえずレシピ。

画家と伯爵
< Blender / champagne glass >
桃50g
カンパリ 10ml
スウィートヴェルモット 10ml
レモン 2tsp
グレナデンシロップ 1tsp
※シンプルシロップ 1tsp
カルヴァドス 1tsp
キュラソー(ルクサルド)1tsp
※回してみて糖度が足りないようなら加える
・カルヴァドスとキュラソーは他をブレンダーで回した後に入れて軽く回す。

わかりました?

これはベリーニとネグローニのアイデンティティ(と、僕が考えた部分)を合わせて再構成したカクテル。
ベリーニはジョヴァンニ・ベリーニという画家の名が付けられたもので(@ Harry’s Bar、Venezia)、ネグローニはカミーユ・ネグローニ伯爵に由来するもの。つまり、画家と伯爵の名を戴いたカクテルのミックスツイスト。なのでこういう名前にした。

レシピ先でネーミングに迷った挙句、ベリーニ・ネグローニじゃ安直過ぎてつまらなかったので…と書きたいところですが、これは逆でネーム先行。
なぜこれがネーム先行になったのかはもう思い出せないのだけど。
で、名前からレシピ辿って(辿るまでも無いが)、合わせたらなんか良さそう!という思いつき。
なんならこの二つは全て入れ込んでも成立し得る。なんの問題もなく美味しく作れるのだけどそれじゃつまらないし、創作する意味もない。
cocktail & cocktailあるいはcocktail in cocktailという形も面白いけど安直が過ぎるというか。
なので、アイデンティティがどれなのか?という思考をして合わせた。
ベリーニからはスパークリングワインを、ネグローニからはジンを抜いた。
これらは個人的にアイデンティティではないと思えた部分。
ざっくり言えば、ベリーニは桃色(ピンク)であれば良いと思ったし、ネグローニはその原型である”Mi-To”の要素を持たせれば良いと思った(普通に考えればネグローニから抜くべき要素は一切ないだろうな。そういう意味での反論は受けつけます)。

あまり聞いたことのない(と思われる)”Mi-To”のレシピ。

Mi-To
<build / tumbler>
Italian Bitter Liqueur 1/2
Sweet Vermouth 1/2
Soda

ここで書かれているItalian~は要するにCampari。
これはミラノで産まれた。
方やSweet Vermouthはトリノで産まれたものを指す。
トリノで産まれたItalian Vermouth(=Sweet Vermouth)と言えば?
これはCinzano。
この二つ、”Campari(Milano)- Cinzano(Torino)”を合わせてソーダを加えたものが”Mi-To”。
おや?と思われた方いるでしょう。
そう、これはつまり”Americano”です。

そもそも伯爵はこれを愛飲していた(らしい)のだけど、「よりパンチのあるモノを」とオーダーされたのに応えて、バーテンダーがジンを加えソーダを省いた(と言われている…はず)。
つまりそのアイデンティティはMi-To(= Americano)なのだ。
だからジンはオミットした。
で、これでまとまるかと思ったらさすがにそこまですんなり行ってはくれず、キュラソーとレモンジュースも加えた(カルヴァドスはベリーニを作る時に普段より加えており、このカクテルゆえ入っているわけではない。桃も林檎も同じバラ科というのがその理由。繋ぐ意味で隠し味的なものとして)。
フレッシュな桃の甘みの中にカンパリのほろ苦さとスウィートベルモットの独特な複雑さが愉しめる。
全体をうまく纏めているのはキュラソー。わずかしか使っていないけれど役割はけっこう大きい。
アルコールはそんなに強くない。だからスターターにも軽めのクローザーにもなれる、使い勝手のいいものが作れたと思っている。
ただ、桃の粘性が気になると言えば気になる。
もうちょっとさっぱりさせられればいいのだけど、そしてその方法もないではないのだけど、フレッシュなテクスチャとのトレードオフということで自分を納得させた。
しかし桃はもうそろそろシーズンアウトなので、手元にあるなら名残として作るか、来年まで持ち越すかの二択ですね。
こういった時季にこういう話をリリースする辺り、自分のセンスのなさに呆れる。
もうちょっと早くに公開すれば良かったなあ。

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