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ペアリングイベント2のはなし ③

前回の予告通り、今回はプティフールに合わせたカクテルNo.2。
サヴォイホテルで生まれた名作にして近年の再評価も記憶に新しい”Hanky Panky”。

プティフールはチーズのサブレ。
チーズは数種類を使用したもので塩気が強く、甘味はかなり控えめ。
酒飲みの口直しにはこれ以上ない上、より飲みたくなるトラップ付き…ではあるもののNo.1同様、ゴリゴリのハイアルコール。
とりあえず基本レシピ。

Hanky Panky
<stir / cocktail glass>
ジン 30ml
スウィートヴェルモット 30ml
フェルネットブランカ 2dash
ガーニッシュ:オレンジピール

やや強引かもしれないけど、スウィートマティーニの変化形とみなすことができる。
それにしてもなぜこのカクテルにしたかは誰だってわかるくらい安直なチョイスである。
ケーキの余韻を引っ張りたいというそれもあるけれど、何よりサブレの塩気にこれ以上ないくらいマッチすると1回目の試食をした時に確信。
しかし、レシピに少し手を入れる必要性も同時に感じた。
比率と使用するジンを選んでこれは3テイクで着地。レシピは以下の通り。

Hanky Panky
<stir / cocktail glass>
ジン(タンカレー)40ml
スウィートヴェルモット(ノイリープラット ルージュ)20ml
フェルネットブランカ 1tsp
ガーニッシュ:オレンジピール

ジンは間違いなくタンカレーだと思いつつ、ボンベイサファイアとビーフィーターを試した。が、やはり予想通り。華やかさよりもどっしりと重さを湛えたものの方が合う。
そしてそこをより強調した方がサブレとのバランスが良いと感じたのでジン+10mlにしてヴェルモットをその分下げた。
そしてケーキの余韻を繋げたかったのでブランカを1tspに。
多少の調整はしてあるけどクラシックが十分に通用すると感じてもらえたなら幸い。

こんな事は書くまでもなく当たり前なんだけど、”ペアリング”と冠されるとどうしても「オリジナルを作らなければ」という強迫観念と「イベントだからそういうものが出てくるんでしょ?」という期待をされている感を作り手は勝手に受けてしまうわけで、こういうアプローチはなかなか勇気がいった。
「選ぶだけ」というのは(微調整するにせよ)ネガティブな印象をどうしても作る側として持ってしまう。
実際には、選ぶにもそれ相応の情報ストックと組み合わせるための経験値や解釈力、受け手を納得させるだけの論理構築や技術力が要求されるのだから決して安易なものではないのだけど。

クラシックを組み込んだのは前述の理由の他にそれ自体の面白さを体験してほしいということもあった。
まあこれは言いもしなかったのでほとんど届いていないだろうし、自発的にそう感じてもらえない限り意味がないから口にしなくて正解だと思っている。
でも、自分なりに手応えを得られたので次回も一つはクラシックを取り入れたい。

さて、次回はモクテルNo.1。

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