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ブックレビュー 【まほり】

高田大介(1968〜)
『まほり』

人には歴史があるが、国にも歴史がある。
人間というのは一番の興味は結局自分であるので、自分のことはよく思い出すし振り返る。
他人のことやその過去についても興味は湧くだろう。
だが、自分の国やその過去(歴史)となるとどうだろうか。

学生時代、歴史は苦手であった(歴史だけでなく勉強全体だが)
年号や人名、戦の名前を暗記する作業が得意ではなく、暗記そのものというよりも興味のないことを覚えることが出来なかった。
まぁ、誰もがが興味をもって暗記してるわけではないだろうが、そんな理由で分かりやすく私は落ちこぼれていった。

その落ちこぼれが大人になり、最近歴史の勉強をしている。
受験勉強という枠から解放され、純粋に興味から始める勉強は楽しい。
誰かに点数や偏差値をつけられることもない、ただ自分のための勉強なのだ。

さて、そこへきての本書『まほり』である。
民俗学ミステリとのふれ込みで読み始めてみた。
舞台は上州(群馬県)のとある村。
そのある集落に伝わる忌まわしき因習を大学生の主人公が紐解いていくというストーリーで、蛇の目紋、少女の監禁というキーワードが物語に連なっている。

特に主人公がその土地の郷土史を漁るシーンには力が入っていた。
筆者の高田大介さんは言語学者でもあり、学者らしく文献に対する姿勢や考え方については強いこだわりを感じた。
が、この文献参照のシーンが個人的には昔苦手だった勉強を思い出してしまい、読み進めるのに苦労した。
しかしこの部分こそが物語の肝であり、ここを端折れば途端に説得力やリアリティは薄いものになっていたであろう。
そして歴史を認知するとはこういうことなのかと非常に勉強にもなった。

本筋をいくストーリーの方も上手く構成されている。
キャラクターの魅力もさることながら、主人公がこの調査を始める動機付けというのも納得ができるものであった。
そしてタイトル『まほり』の意味、これこそが本書最大の謎解きとなっている。是非、自分自身の目で確かめて欲しい。

と、この最後の一行こそが、ちょっとしたネタバレになっているのだが。



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