バラクーダ

さよならするまで遊ぼうよ。

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  • 重要文化財

    何度も読み返したい、スキ以上の記事たち。

  • 【本】について

    本の紹介、本についての記事をまとめました。

  • 【料理】を考える

    様々な料理について考えてみました。

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私が好きなSF小説 5選

こんな話を聞いた。 ビジネスマンが、男に尋ねる。 「本は読むかい?」 「まぁ、多少は」男が答える。 「どういうのを読む?」 「小説ですかね、主にSFとか」 ビジネスマンは自分の仕事に誇りを持っている。 今、世界の経済に自分は最先端の場所で関わっていることを。 それこそがビジネスマンのアイデンティティであり、全てであった。 「小説って、それを読んで何になるの?」 「何になるって、どういう意味?」男は訊ねる。 「いや、だって小説って作り話でしょ? この世にない架空の話でしょ

    • 物語を味わう楽しみ、物語を創る喜び

      我々はこれまでどれだけの物語に触れてきたのだろう。 小説、漫画、アニメ、ドラマ、映画。 歴史や古典の教科書、歌の中の詩の世界だっていい。 私自身で考えても、文字通り数えきれないほど触れてきたと思う。 細部まで覚えているものは少ない。むしろ、ほとんどの話は忘れてしまっている。 では、忘れてしまったのなら意味がないことだろうか? 否、そんなことはないはずだ。 自分の人生という一番の物語、昔のことを忘れてしまったらそこに意味はなかったのだろうか。 いつか自分が認知症になったら、そ

      • 遥かなるオルゴール #青ブラ文学部

        「なんでも、小さなオルゴールを貰ったらしいのよ」  晩酌中の妻が言った。  先日13歳になった中学生の娘の話だ。 「それがどうもボーイフレンドからっぽいの。かわいいでしょ?」  赤ワインを飲みながら嬉々として喋っている。  ボーイフレンド?  父親の私としてはその言葉にひっかかったが、実はオルゴールという単語にも興味が湧いていた。 「へぇ、オルゴールねぇ」  動揺と興味を悟られないよう、私も缶チューハイに口をつけた。 「ベッドの横に置いてあって私にも触らせてくれないのよ」

        • 愛媛旅行記 (後編)〜ぼくらが旅に出る理由〜

          前回からの続き 旅行二日目。 宿をチェックアウトし、松山へ。 ブランチは鍋焼うどん『ことり』と決めていた。 そう、こちらも映画『がんばっていきまっしょい』に登場した聖地である。 レンタカーを返し、ここへ来る時に乗ったタクシーの情報では松山市民は讃岐うどんを好む人が多いと聞いたが、この柔らかいうどん、なんとも美味しいじゃんすか!! 出汁も関東にはない風味。正直、かなり期待してこの店まで来たが、その期待を上回る美味しさ。大満足です。 食後の散歩がてらに松山城へ。 (人生

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        私が好きなSF小説 5選

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          愛媛旅行記 (前編)~ぼくらが旅に出る理由~

          旅の名言というのはいくつもあるが、その中でも写真家、星野道夫さんのものがシンプルで好きだ。 そんな訳でいざ、愛媛へと出発しました! 先日の記事でも書いた通り、初の四国旅行。 結論から書いてしまえば、初の四国に愛媛を選んで本当に良かったなと思っています。 一泊二日のタイトなスケジュールだったので、それなりに詰め込みましたが大満足でした。 それにしても、この四月から転職をして夢の土日休みを獲得した途端、まだ仕事も慣れてないのに早速土日を旅行に費やすなんて我ながらアクティブ!

          愛媛旅行記 (前編)~ぼくらが旅に出る理由~

          趣味との向き合い方 (エッセイ)

          自分が気分屋かどうか考えると、認めたくはないが気分屋の部分はある。 もちろん、気分次第で仕事に行かないなんてことは出来ないが、それ以外のものは割と気分で決めている気がする。 食べ物だって気分で決めていいし、自分の好きなもの(趣味)だって気の向いた時に楽しめばいい。何も問題はない。 自分の趣味で言えば、本を読みたいときに読書をするし、映画が観たければ映画を観る。音楽だって同様だ。このnoteだって、書きたいときに書きたい内容を書いている。 逆にそれらをしないのは、疲れていると

          趣味との向き合い方 (エッセイ)

          祈りの雨を待っている #青ブラ文学部

          今回はこちらの企画に参加させていただきます。 山根さん、今回も宜しくお願い致します。 「祈りの雨を待ってるの」  少女はそう答えた。  公園前の交差点、少女はそこに立っていた。  男は公園内の喫煙所から何気なく交差点を眺めていた。歩行者用の信号が青になっても少女は渡る素振りがない。そして信号は赤に変わる。男が缶コーヒーと一緒に2本の煙草を吸っている間、少女は立ち続け信号は変わり続けた。  男は非番の警察官であった。職業柄、人々の動きの異変には敏感だ。小学生と思われる少

          祈りの雨を待っている #青ブラ文学部

          いざ、愛媛へ、がんばっていきまっしょい!

          1998年の映画『がんばっていきまっしょい』 監督は磯村一路、女優・田中麗奈のデビュー作でもある。 普段、映画レビューはやらない私がこの作品を取り上げたのは理由がある。 来週、愛媛旅行に行ってきます! 一泊二日の旅ではあるが、初の四国の地。今から楽しみである。 若い頃は仕事に追われ、あまり旅行に行く習慣はなかったが、年を取ってから意識して向かうようになった。 旅は準備も楽しい。その土地のことを勉強したり。 その一環でやっているのが、その土地が舞台の映画を観て気分を高めると

          いざ、愛媛へ、がんばっていきまっしょい!

          ANGELINAを弾きながら (日記)

          新しい仕事もまだ慣れていないが、それゆえに待ち焦がれた休日。 残りの人生は趣味に没頭しようと決めた転職だ(もちろん仕事も頑張りますよ!)早速、部屋の隅で眠っていたギターを引っ張りだした。 無職中も何度か久しぶりにギターを弾いてみようかと思うことはあった。だが、ギターなんて弾いてる場合かとブレーキがかかったし、たぶん実際に弾いていたらより自己嫌悪に陥った気がする。 しかし、晴れて社会人になった身だ。これで後ろめたい気持ちもなくギターもかき鳴らせるというものだ。 部屋の隅にあ

          ANGELINAを弾きながら (日記)

          クレヨンと選挙ポスターと多様性 #シロクマ文芸部

          今回はこちらの企画に参加させていただきます。 よろしくお願いします。 「変わる時が、来た」  こんなキャッチコピーをつけた『西川たかし』のポスターが目に付いた。  僕が住む街の市議会議員選挙の告知ポスター、西川たかしはカメラ目線で笑いながらガッツポーズをしている。ポスターの左側には「今こそ若い力で変革を!」とゴシック体での文字もある。  西川たかしは僕の小学校の同級生だ。  本当は西川隆と言うし、なぜ名前だけ平仮名にしたのかは分からない。きっと投票所で書きやすいとか、戦

          クレヨンと選挙ポスターと多様性 #シロクマ文芸部

          四月物語 (日記)

          四月になって新しい生活が始まった。 今回、そんな近況報告の日記を書くつもりでいるが、この場所で日記を書くことはあまりしなかった。 というのも、私のような名もない男の日記など誰が読むんだという自制心が働いていたからだ。 好きな人の日記なら覗き見してみたい心情も分かる。だが、どこの馬の骨ともしれない男の日記などどこに需要があるんだという思いでいた。 とはいえ、このnoteに初投稿した去年の八月、それなりの自己紹介記事を書いた。 自分が何者なのかを説明するのはある程度の礼儀だと思

          四月物語 (日記)

          【ブックレビュー】村上春樹訳で読むレイモンド・チャンドラー『さよなら、愛しい人』

          ジョナサン・レセムはチャンドラーをこう評している。 清水俊二さん訳の『さらば愛しき女よ』はもちろん読んでいる。 しかし、レセムの言う通り数年ごとに読み返すに値するチャンドラー、どうせなら話題になった村上春樹さんの訳で読み返してみようと思った次第だ。 村上春樹さん版のチャンドラーは初であった。タイトルは『さよなら、愛しい人』になっている。 私立探偵フィリップ・マーロウの長編小説は全七作あり、本作はその二作目。『長いお別れ/ロング・グッドバイ』と並ぶ人気作だ。 改めて読み返して

          【ブックレビュー】村上春樹訳で読むレイモンド・チャンドラー『さよなら、愛しい人』

          【フードエッセイ】和食を考える(国立科学博物館)

          先月の話になってしまう。 ふと美術館に行きたくなって調べていたら、上野でモネ展をやっているのを発見した。 これにしようと上野へ向かう。 当日は雨だったが、久しぶりの美術館ということで心も弾む。傘に弾ける雨音も心情を反映しているようだった。 道中、和食展の看板を見つけた。 和食展か、何を展示しているのだろうと興味を惹かれた。日程を見ると、もうすぐ終わってしまうらしい。今日を逃すと観られない気がした。えーい、モネ展は今度でいいかと博物館の方へ入館した。 和食については、元々

          【フードエッセイ】和食を考える(国立科学博物館)

          マッチングアプリ(短編小説)

          「だから、誰にでも出来ることって価値がないのよ。そう思わない?」  強制的に同意を求めるような聞き方に「そうかもね」と反射的に答えていた。 「貧乏には誰でもなれるの。働かないで、持ってるお金使っちゃえばいいだけだもん。だから、貧乏に価値はないの」  目の前のカナという女は三杯目のハイボールを飲みながら流暢に語りかけてくる。 「その意味でお金持ちってそれだけですごいと思わない? お金を稼ぐって簡単じゃないし、そこには努力や才能が必要でしょ?」  変わらず同意を求めるようなしゃべ

          マッチングアプリ(短編小説)

          自分はズレているんじゃないかという恐怖について (エッセイ)

          見当違い、的外れ。 自分はズレているんじゃないかという恐怖がある。 これは「他人と違う私」とか「個性的な考え」とか「独創性」とかの話ではない。 もっとコミュニケーションにおいて致命的な、 ・相手の意図が汲みとれない ・要点が分からない ・本筋からズレている などと言った話だ。 例えばこのnote上でも、どなたかの記事にコメントを書く時、自分がズレたコメントをしているんじゃないかと思うことがある。 小説やエッセイ記事の感想に、見当違いなことを書いていないか。聞かれてもいな

          自分はズレているんじゃないかという恐怖について (エッセイ)

          公園にて (短編小説)

           リストラされたサラリーマンが昼間に向かうのは公園と、昔から相場が決まっている。  たまに、失恋した男が公園に向かうこともある。今の僕がそれにあたる。  失恋といっても最近の話ではない。もう三年前の出来事だ。この公園に来ると彼女のことをよく思い出す。最近は思い出すために公園に来ている節もあり、この行為が目的なのか手段なのか自分でもよく分からない。 「まだ忘れられないの?」と、周りの人間はよく僕に言う。  忘れたくないという想いが根底にあるかは置いといて、物事というのはいつだっ

          公園にて (短編小説)