itanoyasuharu

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最近の記事

E・トッドの新書って・・・

『パンデミック以後 ー米中激突と日本の最終選択ー』(エマニュエル・トッド、朝日新書、2021年2月)読了。  出ました。またまたトッドの新書。「昔ドラッガー、今トッド」的に、なんかあると、今の日本のインテリ層は、すぐトッド発言を気にする。・・・その需要に応えるあざとい新書(笑)。というとシニカル過ぎるか。  「千円未満で買える新書に何を期待してんねん!」といわれそうだが、トッドの新書のパターンはどこかの雑誌インタビュー数本をガッチャン束ね、そこに最新時事ネタを追加インタビュ

    • バスで田舎

      『バスで田舎へ行く』(泉麻人、ちくま文庫、2005年)読了。  文庫刊行は2005年だけど、もとの雑誌連載は1999年、本は2001年。なので実際のバス旅は1999年、2000年のものが多い。(もっと前のもある。)  ・・・ざっと20年前。だからここに載っているバス路線で廃線になっているルートも多い。もともと絶滅危惧種だった田舎のバス路線なので、なおさら、その激減率は高い・・・そりゃそうだ。  とはいえ、では廃線になって、田舎は困っているか?といえば、田舎こそ自動車社会なの

      • 堤さんと増田さんの共通点と差異

        『ユリイカ 2014年2月号 特集:堤清二/辻井喬 ー西武百貨店からセゾングループへ ・・・詩人経営者の戦後史』を一部再読。 前年の2013年11月に堤さんが逝去(享年86歳)した関係で特集された号。 経営者としての堤清二と文学だけでなく社会批評も含めた物書きとしての辻井喬。単純に線引きできないだけに、追悼本としてビジネス系の話が多い。そんな中でも、出色なのは三浦展さんのインタビュー。 ■堤さん(西武百貨店)と増田さん(パルコ)の共通点と差異について、とてもわかりやすく

        • パリの日本人(朝吹さん)1950ー1989

          『私の巴里物語 1950ー1989』(朝吹登水子、文化出版局、1989年)読了  この本の内容は、タイトル通り、1950年から89年(執筆当時)までのパリを軸として生活記録のエッセイ集である。ただ著者は第二次世界大戦前の1935年から1939年にもパリに滞在しており、11年後の再びのパリである。  自分にとっては、この著者である朝吹さんの本を読むのは三冊目になる。(過去二冊は『豊かに生きる』と『私の東京物語』)  あくまで著者の朝吹さんの視点軸でまわっている時空感を回想

        E・トッドの新書って・・・

          古代の女性天皇の系譜

          『女性天皇』(瀧浪貞子、集英社新書、2004年)読了 新書であるが内容はとても充実して濃い。アマゾン古書で高価格維持も納得。 女性天皇は古代で6人・8代出ている。(江戸期にも2人女性天皇が出ているが、もはや政治とは関係ない存在なので本書では対象外) 1:推古天皇(飛鳥時代)すいこてんのう 2:皇極/斉明天皇(大化改新戦後)こうぎょく/さいめいてんのう 3:持統天皇(飛鳥から藤原京)じとうてんのう 4:元明天皇(奈良時代)げんめいてんのう 5:元正天皇(奈良時代)げんしょ

          古代の女性天皇の系譜

          DXって何?

          『DXとは何か? ー意識改革からニューノーマルへ』(坂村健、角川新書、2021年4月)読了。  『新L型経済』を読みローカル圏での経済活動にこそDX(デジタル・トランスフォーメーション)による生産性向上が再生のカギといっていたが、で結局「DXって何?」という疑問は解消されなかった。  なので、ちょうど同じ角川新書で、組込み系OS「TRON」の生みの親でもある坂村健さんが説明してくれるDXの本ということで、飛びついてみた。  結果・・・うぅ〜ん、なんだろう、スッキリしない

          DXって何?

          明治維新に道を拓いたキーマン阿部正弘?

          『阿部正弘 ー日本を救った幕末の大政治家ー』(祖父江一郎、PHP文庫、2002年)読了。  以前読んだ『0から学ぶ「日本史」講義【戦国・江戸篇】』で江戸幕府の老中首座という行政トップとして、のちの明治維新につながる数々の改革(といえるような)施策を打ち出し実現していった「阿部正弘(あべ・まさひろ)ってどんな人?」という疑問を解消しようと読んでみた。サラッと読みたかったんで、小説を選んでみた。  結果、読み易かったのでよかったんだが、本当の人物像を知るためには、よかったんだ

          明治維新に道を拓いたキーマン阿部正弘?

          30万都市圏で新L型経済を!

          『新L型経済 ーコロナ後の日本を立て直すー』(冨山和彦、田原総一郎、角川新書、2021年4月)読了。  対談ものなので、サクサクっと読める。  内容的には、コロナ禍後に出た冨山さんの本『コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画』や『コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える』の重なる部分が多い。L型経済という考え方も『なぜローカル経済から日本は甦るのか ーGとLの経済成長戦略』以来のもので、新味はない。全般的に、新しさは無い。が、繰り返すことで頭

          30万都市圏で新L型経済を!

          KENZOのパリを舞台にした自伝

          『夢の回想録 ー高田賢三ー』(高田賢三、日本経済新聞出版社、2017)読了。 2020年、新型コロナの感染で亡くなったファッション業界人。 とはいえ、自身が立ち上げた「KENZO」ブランドは90年代にLVMHグループに買収され、99年にはブランドを離れている。 この自伝を読めばわかるが、ハッピーな引退だったわけでなく、その後もセブン&アイとコラボしたり、ユニクロと組んでオリンピックの代表団ユニフォームをデザインを手掛けたりしていた。そして亡くなられる直近でも、新しいブランド

          KENZOのパリを舞台にした自伝

          三中井(みなかい)百貨店を知ってますか?

          『幻の三中井百貨店 ー朝鮮を席巻した近江商人・百貨店王の興亡ー』(林廣茂、晩聲社、2004年)読了。 三中井百貨店と書いて「みなかい ひゃっかてん」と読む。 普通の人に「三中井百貨店」と聞いても、知らないはずだ。かなりな百貨店好きに聞いたとしても「あれっ?そんなローカル百貨店があったかな?」となるだろう。そう、三中井百貨店は地方百貨店ではない。それは、戦前の朝鮮半島で日系の百貨店として一番大きく展開していた店であったが、戦後に消滅した百貨店である。 つまり、今となっては、も

          三中井(みなかい)百貨店を知ってますか?

          天智期を古代の占領統治下と読む

          『天智朝と東アジア ー唐の支配から律令国家へー』読了。 初めて知った説(?)の歴史本。トンデモ系とも言えない、突っ込み所=弱点もなくはない気もするあ、総体的には真面目に検討する価値のある説だと思った。 自分が受け取った著者による説とは 白村江の戦い(西暦663年)に敗れた倭に対して、唐が羈縻(きび)政策※を通じて、敗戦処理を進めた。実務としては唐から直接ではなく、敗戦国の百済に進駐した部隊(熊津都督府)を通じて行われた。しかし、その期間は意外に短く、朝鮮半島の覇者となった

          天智期を古代の占領統治下と読む

          西武、セゾンの美術展キーマン回顧録

          『展覧会の絵』(森口陽、美術出版、2001年)読了。  著者は美術出版社を経て、1975年開館の西武美術館(のちセゾン美術館)の設立時から参加、学芸部長、副館長を務める。1994年まで同館の現代美術の主要展覧会を担当。1994年から東京造形大学教授。本書は教授退任を機に刊行される。  というわけで、西武、セゾンの文化事業を代表する一つであった美術展の裏側、背景を知ることができるのでは?と期待して読んでみた。  結果・・・あれっ?というほど、西武、セゾンの話はナシ。せいぜい

          西武、セゾンの美術展キーマン回顧録

          セゾン文化キーマンへのインタビュー

          『セゾン文化は何を夢みた』(永江朗、朝日新聞出版、2010年)再読。  初版は2010年なので、もう10年近く経っている。出た直後ぐらいに読んで、興味深かった記憶がある。確かに、書かれた当時の2010年段階で、すでに増田通二は鬼籍に入っており、パルコ関係のインタビューや考察が抜けているのはいかにも残念である。けれども今思えば、2010年頃がセゾンの当時を知るキーマンはまだご存命の方々も多かったろうし、セゾンの記憶を記録に残しておくギリギリ間に合ったタイミングだったのではない

          セゾン文化キーマンへのインタビュー

          じかに接した部下からの小林一三の人物像

          『小林一三翁に教えられるもの』(清水雅、梅田書房、1957年)読了。 著者は、戦前の小林一三の欧米視察旅行に秘書役として随行し、のち阪急・東宝の社長、会長を勤めた人物である。1957年は小林一三逝去の年で、生前に著者がじかに接した経験を軸に小林一三の人物像を回想した本である。各章ごとにエピソードが完結するエッセイ集。 小林一三(逸翁)はこんな人(清水雅から見て、聞いた人物像) 1:思いついたことに部下がすぐ着手しないと、怒る。 2:怒っても、すぐ忘れ後をひかない。が、しっ

          じかに接した部下からの小林一三の人物像

          東京と京都、失うと困る店と味

          『遺したい味 ーわたしの東京、わたしの京都ー』(平松洋子、姜尚美、淡交社、2021年1月)読了。  食関連のエッセイストの平松さんと京都ベースの食関連で強い姜さんとの間で、それぞれが東西で「遺したい」と思う店と食べ物を紹介しあう往復書簡形式で雑誌連載したものをまとめた一冊。  『あんこの本』『京都の中華』というしっかりした取材と考察、とくにマチと店の関係などにも踏み込んだ素晴らしい本を書いている姜さんが書いているだけに、著者名買いとして読んでみた。正直な感想としては、もっ

          東京と京都、失うと困る店と味

          横丁の考察

          『横丁の引力』(三浦展、イースト新書、2017年)再読。  いつから「横丁」がブームになったか?を確認したく、あらためて読んでみた。 ブーム?この本の「はじめに」にて2005年がブーム元年とし、2016年頃の吉祥寺ハモニカ横丁論ブームとしている。  2020年には森ビル開発の虎ノ門ヒルズの「虎ノ門横丁」という飲食スペースが開発され話題になっている。バードランドや琉球チャイニーズ・タマなど珍しい店のテナント誘致の成功という面もあろうが、大きな開発に中に小さな横丁というコンセプ

          横丁の考察