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花火を見ていたら、マッチョな男を思い出した。 【また、花火をたくさんの人が楽しめますように】

先日、花火の音が聴こえてきたので、ベランダにでてみると、向かいの家のすきまから花火がみえた。

コロナ収束を願ってのシークレット花火なのだろう、運が良いと思う。
すぐさまハイボールときゅうりののり巻きを用意して、醤油をちょんちょんとつけ、ぱりぽりやりながら見る。うまい。

そんな風にして花火を見ていたら、ずいぶんと昔のことを思い出した。

もう20年も前になる。二十歳くらい時の話。

はその頃、料理店でアルバイトをしていた。客層は、ランチを目当てにした主婦層が多かったように思う。そして近所の人やたまに若い人たち。ハンバーグが美味しい店だった。僕が本格的に料理に興味を持ったのはこの頃だったと思う。接客を主にしていたのだけれど、たまに料理も手伝ったりもした。

そこのマスターは調理を担当していた。年齢は30代後半、今の僕と同じくらいだったように思う。少年のような顔立ちなのに結構なマッチョ、当時の自分からすると、随分大人の男性だった。どんな風にマスターの事を呼んだらいいですか?と聞くと「社長とよんでほしいな(会社でもないけど)」と鼻の穴を膨らませるような可愛らしい人だった。朝から晩まで働いて、昼の休憩時間にはジムに通っていた。思いついたように日焼けマシンに入っては奥さんにいじられていた。スズキの隼というバイクが愛車で、休みの日には遠くまで走ることを楽しみにしていた。好奇心が旺盛で、いつもワクワクを探しているような人だった。

ある日、そのマスターがパントリーから顔をのぞかせてもじもじしている。どうしたんだろう。僕は不思議に思いながら、仕事を続ける。

食事を終えた女性が会計をしに立ち上がった。その様子を見て、意を決したようにマスターは「moyaちゃん、俺が接客するよ」と外に出てきたと思うと、すぐさまその女性に話しかけた。少し照れくさそうに、嬉しそうに。しばらく話した後、その女性も笑顔をみせ、帰っていった。

「知り合いだったんですか?」僕はマスターに聞く。

すると、自分が若い頃、付き合っていた人だと。そして、花火に行く約束をして待っていたけど、彼女、来なかったんだ。随分探したんだけど会えなかった。(携帯も無かった時代の話)なんでかわからなかった。すごく残念に思ったし、それから連絡も取れず、もう会わなくなったんだ。結婚したいと思ってたんだけどな。それでさっき店に来ていることに気がついて、勇気を出して話しかけたんだ。今、結婚してるって。俺も結婚しているけどね。

多分、マスターは理由を聞かなかったと思う。そういう人だ。あの時楽しかったね、懐かしいな〜とそのくらいの話をしただけだと思う。

他愛もない話だったように思うけど、人生経験の少ない僕にしてみたら、どんな気持ちだったかなんて想像もつかなかった。

答えを聞かないのも、答えにならないからこそ、淡い思い出にすることができるのかも知れない。大切な思い出、記憶。

今なら、いろんなことが自分の人生を作っていることもわかるし、人は出会うし別れる。結ばれなかったことも結ばれることもある。選択が正解かどうかなんて、自分が決めるだけだ。

それでも、その頃でも、マスターをみて、なんかいい感じがした。
ナルシストだと笑われるかもしれないが、僕は寂しそうで嬉しそうに話すマスターのことを本当にかっこいいと思った。

時間が経てば消化できることも、ただ愛した人がいたっていうことだけでも、嫌なことでも時間が経てばいい思い出になる。

間接的な僕のこんな経験でさえも、noteに書ける思い出になる。

そんな風に花火にはいろんな人の思い出がつまっているんだろうなと思う。

また、花火をたくさんの人が楽しめますように。
コロナの収束を願って。

あなたのワクワクが満たされますように。

それでは、また明日。

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