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生命科学系

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生命科学に関するトピックを扱った記事まとめ。
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記事一覧

脳機能局在論と最近の進展

ヒトの脳には約1000億個の神経細胞が存在するといわれている。 この1000億個の神経細胞は、ど…

えぬ
5日前

第六感~地磁気感覚は獲得可能か?~

ヒトの五感 ヒトは視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感を感じることができる。これらの感覚…

えぬ
1か月前
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相分離生物学:分子からマクロへの架け橋

相分離 分子で説明されるミクロな現象と生物の表現型などマクロな現象のギャップをつなぐの…

えぬ
2か月前
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ゲノムからDNNまで:進化はなぜうまくいく?

進化はなぜうまくいくのか? 自然選択の理論によると、進化は環境内での適応度の高い変異を…

えぬ
3か月前

冬眠生物学:SFから現実へ、人工冬眠の可能性

小説『三体』やアニメ『凪のあすから』では、ヒトが冬眠を行うことが物語のキーになっている。…

えぬ
3か月前
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電気生理とイメージングの比較まとめ

脳内で何が起こっているかを明らかにするためには、脳にある神経細胞の活動を記録する必要があ…

えぬ
4か月前
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ヤンバルクイナを見て思ったこと

ずんぐりとした体に似合わずそそくさと駆けていく。鮮やかなオレンジ色の嘴に甲高い鳴き声、そしてこのような動きを併せ持つヤンバルクイナは、沖縄を象徴する鳥となっているのもうなずける。 ヤンバルクイナは沖縄県北部に生息し、飛べない鳥として知られている。形態学的にも、翼が小さく、空を飛ぶための胸筋を支える竜骨突起が小さい一方で、太くて丈夫な足と発達した足の筋肉を持つことから、森林で素早く走るといった陸上での生活に適応していると考えられる。 生態学では、同じニッチを共有する生物同士

進化の分岐年代推定: 特殊相対性理論と分子時計

特殊相対性理論は、時空の性質から、観測者に対して相対的に動いている時計は、観測者の基準…

えぬ
4か月前
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非相同末端連結の生物による利用と研究者による利用

非相同末端連結(NHEJ)とはDNA2本鎖切断修復方法の1つで、切断されたDNA末端を直接つなぎ合わ…

えぬ
5か月前

獲得形質は遺伝する?

獲得形質の遺伝 獲得形質の遺伝とは、生物が生涯で獲得した形質がその子孫に受け継がれるこ…

えぬ
6か月前
3

ノーベル生理学・医学賞2023: mRNAワクチン開発につながる塩基修飾の発見

COVID-19によるパンデミックは多くの人の命を奪うとともに、私たちの生活のあり方を変える大き…

えぬ
7か月前
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顕微鏡vsシークエンス~バイオテクノロジーにおける収斂進化~

顕微鏡を用いたイメージングは、17世紀にロバート・フックが細胞構造を観察して以来、様々な生…

えぬ
7か月前
4

特異性を有用性に変換する

科学において、普遍的な現象を見つけた方が一般に価値が高く、重宝される。 特異的な現象を発…

えぬ
7か月前
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Brainbow: 脳の確率的多色標識法

脳の情報伝達・機能は神経同士のつながりによって決まる。よって、特定の機能を担う神経回路の解剖学的構造がどうなっているかは神経科学における重大な問いであり、その詳細を明らかにすることは神経科学の主要な目標である。しかし、脳内には多くの細胞が密に詰まっており、それらを分離して可視化することは困難である。 神経のつながりを調べる古典的手法 神経同士の解剖学的結合を調べる古典的な手法には、染色液を用いて染色する方法、拡散または輸送されるラベルを用いて光学的に観察する方法、電子顕微