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論文紹介

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神経科学、情報科学、分子生物学関連の原著論文紹介。月一で更新。
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記事一覧

続・ドーパミンは本当に報酬予測誤差を表現するか?~ANCCR:因果的連合学習におけるド…

アイスクリームを食べられると幸せである。また、ヒトはそれを幸せに思い、アイスクリームを食…

えぬ
3週間前
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合成遺伝子回路による細胞分化の頑健性獲得

私たちは多数の細胞から構成される多細胞生物である。単細胞生物は一つの細胞で生命の維持に必…

えぬ
2か月前

HyenaDNA: ゲノム配列の長距離依存関係を解明する基盤モデル

大規模言語モデルはゲノムの言語を読み解けるのか? 2003年にヒトのゲノム配列が解読された…

えぬ
2か月前
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エクスパンションマイクロスコピーを用いた順行性シナプス規定分子機構の解明

脳神経系の情報伝達・貯蔵は神経細胞間の結合部位であるシナプスを介す。過去には様々なシナプ…

えぬ
3か月前

前頭前野におけるメタ強化学習の実装~人工知能と脳科学の融合~

数学者・大道芸人として有名なピーター・フランクルは、多言語話者で、12か国語話せるといわれ…

えぬ
5か月前
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SPUD: 頭部方向細胞の活動状態はリングアトラクターを形成する

神経回路はその集団活動によって生存に必要な事柄を表現している。個々の神経細胞の活動はノイ…

えぬ
6か月前
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ファスト&スロー~記憶固定化と睡眠の関係~

私たちは日々めまぐるしく変化する生活の中で、どのように過去の記憶を保持していられるのだろうか? 記憶はまずは可塑性の高い脳領域である海馬に保持される。続いて、睡眠時に海馬は大脳皮質での記憶形成を助け、これはMemory consolidation(記憶固定化)として知られている。理論的には、大脳皮質でのゆっくりとした学習と海馬での素早い学習の2段階の学習システムにより過去の記憶が新しい記憶に干渉されるのを防ぐと提唱されている。しかし、in vivoで直接的にこれが示されたこ

運動野は筋収縮を表現するのか、運動を表現するのか?

大脳皮質運動野はどのようにして行動を指令するのか? 解剖学的には哺乳類の大脳皮質は5b層の…

えぬ
8か月前

AmadeusGPT: 大規模言語モデルは行動解析も変えるのか?

動物行動解析は従来は研究者が行動イベントを数える、または特定の動物の行動動画から特徴量を…

えぬ
9か月前
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睡眠時のリプレイが歌シークエンス生成神経回路の特性を明らかにする

Introduction システム神経科学においては、特定の脳領域を切除したり不活性化したりした際の…

えぬ
10か月前
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鏡の中の生物学

生命は普遍的にL-アミノ酸とD-核酸(DNA、RNA)のみを用いていることが知られており、ルイス・パ…

えぬ
11か月前
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CEBRA: 行動と神経活動を結び付ける

Introduction システム神経科学は、神経活動記録、行動記録の両面で近年の技術的進歩がすさま…

えぬ
1年前
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DeepLabCut: 自由行動下での動物行動トラッキング

脳の最終出力である行動を客観的指標に基づき研究するためには、その定量化が必要である。定量…

えぬ
1年前
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海馬場所細胞の表象は時間的に不安定である

海馬CA1には動物が特定の場所にいるときにのみ発火する場所細胞が存在し、これが動物の空間記憶やナビゲーションに重要な役割をすると考えられている。場所細胞の発見によりJohn O'Keefeは2014年にノーベル医学生理学賞を受賞している。 しかし、「場所表象が長期的にどのような変遷をたどるのか?」という問いは、長期的に自由行動している動物の多数の神経細胞の活動を1細胞レベルで記録することが困難だったために、明らかになっていなかった。 紹介する論文では自由行動中のマウスの神