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冬眠生物学:SFから現実へ、人工冬眠の可能性

小説『三体』やアニメ『凪のあすから』では、ヒトが冬眠を行うことが物語のキーになっている。冬眠は困難な環境をスキップして豊かな世界で過ごす、現在治療が不可能な病気を将来の技術を用いて治すといったことを可能にする夢の技術として用いられているが、これはSFの中だけの話で現実的でないと考える人も多いだろう。

冬眠生物学

能動的に代謝と熱の発生を抑制することで消費エネルギーを削減し、普段の恒温状態から逸脱した低体温の状態を休眠と呼ぶ。寒冷や飢餓といった厳しい環境を、休眠を数ヶ月にわたり繰り返すことで乗り越える現象を冬眠と呼ぶ。

多くの研究者も以前はほぼ不可能と考えていたと思われるが、2020年に将来ヒトの人工冬眠も可能なのではないかと思わせるような研究がなされ、世界を驚かせた。これは、マウスの自律神経系や内分泌系を調節する脳部位である視床下部の神経回路の活性化で、冬眠(のような体温と代謝が低下した状態)を人工的に引き起こしたとする研究である。熊などで用いられている冬眠の神経回路が、多くの動物では使われていないだけで、哺乳類に広く保存されており、人工的にスイッチできる可能性を示唆している。ヒトなどへの医療応用は当分先の話になると思うが、現在冬眠誘導の方法の洗練や冬眠を引き起こす分子メカニズムの解明などが行われており、冬眠生物学なる一大分野を形成するに至っている。

参考文献

A discrete neuronal circuit induces a hibernation-like state in rodents | Nature
Neurons that regulate mouse torpor | Nature
冬眠生物学2.0:能動的低代謝の制御・適応機構の理解 【学術変革領域研究(A)】 (hibernationbiology.jp)

「三体」や「凪のあすから」の冬眠技術は、困難な環境回避や未来医療への応用として描かれるが、実現は遠い。しかし、2020年の研究でヒトの人工冬眠の可能性が示唆され、冬眠生物学が進展している。

ChatGPTを用いて要約
サムネイル画像はDALL-Eにより生成