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初めてひとり暮らしをした街のこと

わたしが初めてひとり暮らしをしたのは、大阪府豊中市、最寄りの駅は阪急宝塚線の岡町駅。急行の停まる豊中駅も徒歩+3分くらいで利用できる場所だったけれど、わたしはあえて「岡町に住んでいた」と言いたい。

岡町に初めて来てまず驚いたのは、たこ焼き屋、お好み焼き屋がそれぞれ3軒ずつくらいあることだ。
観光客向けの食べ物じゃなくて、住宅街とかに普通にたこ焼きが売ってるんだ、と感動した覚えがある。しかも東京で見るそれより全然安い。
大阪での物価は基本的に1玉50円くらいだったから、東京に戻って600円くらいするたこ焼きを見ても食指が動かなくなってしまった…。

桜塚商店街の素敵だなと思ったところは、原田神社という古い神社が商店街の中心になっている点だ。
この神社、建立は4世紀ごろと想像を遥かに超える歴史があり、「これは間違いない」と大きな決め手になった。商店の並ぶ通りは一本道ではなく十字というかなんというか…不思議な形に広がっており、神社に沿って道があるのがよかった。

そこに並ぶお店たちには肩の力が入っている感じが全くなく、不要な頑張りはせず、それゆえ外の人がわざわざやってくることはなく、それでいて地域の人の往来は常に緩やかに存在し、そう、つまり、至って普通の商店街の姿だった。
しかし今、これだけ「普通に」存在し続ける商店街はむしろ珍しいんじゃないだろうか?

という考察は引っ越して5年経つ今、しているけれど、当時は理屈抜きにその良さを感じ取っていたのだと思う。
おばちゃんたちと一緒にストッキングのデッドストックのガレージセールに群がったり、八百屋のおばあちゃんに20円おまけしてもらったり、自転車屋さんにパンクを直してもらったり、わたしも必要な時にごく自然なテンションであの商店街を利用していた。直感通りのいい街だった、と今でも思う。

原田神社では、秋に1週間以上にわたるお祭りが開かれていて、突然神輿に遭遇したのも良い思い出だ。
「これは何!?」と思って調べたら翌日が最終日「宵宮」であることがわかり、手ぶらで見物に行った。
交わったことはないのだけれど、この街に確かに暮らしている地元の方々がいきいきとしていて、なんだかとっても良い気分だったのを覚えている。

突然

今となっては、もう少し岡町で過ごし、いろんなお店に行ってみればよかったなと思っている。
当時は初めてのひとり暮らしでびっくりするくらいお金がなくて、ひとりで飲食店に入る余裕なんて持ち合わせていなかった。
加えて何かと大阪市内や京都に出かけてしまっていて、それもそれで大事な記憶なのだけれど、少しもったいなかったかな、と思う。

(後日譚)
先日久しぶりに大阪に行ったので、岡町で一瞬降りてみた。なんだかこのままフワーっと自分の家に帰れそうな気分だった。つめたくもあたたかくもない、透明な風が吹いていた。

交通費にします!!!!