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劇作家は劇作家の感覚が解釈に写る


 私はよく考え事をする。 といっても、 大したことは考えていないのだが、 さまざまな普通の人にとってどうでもいい事や、しょうもない事をなぜそうなるのか?なぜそう考えるのか?と自分で考えることがどうやら好きなようだ。

 これをただの妄想癖と言ってしまえば、私はかなりの変態だろうし、自分の主張を誇示するための論破法をシュミレートしていると言えば、かなり嫌な奴だろう。

 私としては物事を考察するという、 どちらかと言えば、 多角的に物事を見るトレーニングに近いかもしれない。 我が子にも 「勉強しなさい」 というより、 「主観だけじゃなく多角的に物事を判断するようにしなさい」と言ってきた。実際、できているかどうかはわからないが・・・。

 そんな話はさておき、話を進めることにしよう。

 さて、劇作家、平田オリザさんのペルソナについての解釈は、 『人はみな、何かしらの仮面を被り自分を演じている。会社での顔、家族での顔、母の顔、学校の顔、すべてにおいて仮面を被り、なにかしらの姿を演じている。 』とこんな感じだったと思う。

 平田オリザさんは、影(シャドウ)の部分はペルソナからは除外して考えているようだ。そのうえで、たとえ話を用いて、 「演じることに疲れた。 本当の自分がわからない。 」 と引きこもる子がいるとすれば、 「本気で演じたこともないくせに、何を言っている。」 「本当の自分がわからない?そんなものがわかったら神にでもなれるよ」 「演じるなら演じきれ」と思うらしい。

 さすが劇作家らしい答えだ。演じるということに関してはなかなか手厳しい。 (笑)

 これは別に平田オリザさんの考えを否定するものではないことは最初に述べておく。そもそも哲学者がいろいろな自分の考えを提唱するように、 受け手もまた人の考え、 解釈はその人の自由なのでそのことについてどうこう言うつもりはない。ただ私とは違う解釈なんだなということで終わりである。

 でもまぁ、 それで終わりにしてしまっては、 いままで散々引っ張ってきて、 最後はこれかよ!となっても面白くないので、 少し平田オリザさんの考えに誠に恐縮ながら、ツッコミを入れてみたいと思う。

 まず、ユング心理学の『ペルソナ』とは人はみな外向きの顔(表の顔)に仮面を被っている(演じている)と提唱しているのだが、ほとんどの人はその意味を、 『本来の自分の姿を仮面で隠している。 』と『隠す』というところにフォーカスするだろう。私もそう考えた。

 だが、平田オリザさんは、 『演じる』という点にフォーカスを当てている。これはどういうことかというと、算数の問題で、 「ここにミカンが8つあります。 」と書いてあったら、ほとんどの人は算数の問題だから、8つの丸い物体を想像するだろう。平田オリザさんは、8 つの物体ではなくミカンを想像しているのだ。

 『演じるなら演じきれ』はいうなれば、算数の問題で 「しっかりリアルなミカンを想像しろ」と言っているようなものである。

 また、 平田オリザさんの解釈ですべての自分が仮面を被って演じている (別解釈のペルソナで、 本当の自分に近いペルソナを見つける説) とすれば、 私的ペルソナの解釈に当てはめると、 本当の自分を隠しているので、 私の読んだ彼が書いた著書も、 全国を回って講演会をしている彼も、演劇を指導している彼も仮面を被って本心を隠していることになる。

 そう考えると、 私が読んだ本の内容も、どれだけの厚みの仮面を被っているかわからないと思うのは私だけだろ
うか。

 何度も言うが、 決して平田オリザさんを否定したりバカにしているわけではない。 私は彼の着眼点が違うことに面白さがあると思っている。芸術系の人は一般の人と考えが違うことは多々ある。 音楽家も同じで、 一般人が 「この曲の歌詞がめっちゃいい!」 と言っても、音楽家はそれよりも音として耳に入るらしい。 音楽家にとって歌詞は一つの音に過ぎず、 意識して歌詞を読まないと (視覚を使って) 理解できない人もいるとか。

 平田オリザさんもまた、 劇作家、 芸術家ゆえにその感覚で物事を感じていると考えれば、 真の芸術家、 劇作家なのかもしれない。ペルソナの解釈は、算数(数学)ではないので、答えはないのだ。

 だから文学、 芸術は面白いのかもしれないし、 それを感じる人それぞれの感覚の違いを認めないことで、 バカにしているとか、 理解していないとかくだらないことで喧嘩が起きているのかもしれない。

 文学、 芸術とはそれだけ面白く、 また人の感覚次第という最も投げやりな問いなのだ。最近有名な、ひろゆきさんが「それってあなたの感想(主観)ですよね?」で物事を片付けられ、それにイライラする人のそれと同じである。

 とまぁ、 だらだらと書いている間に、 この著書も終わりが近づいてオリザさんもまとめに差し掛かったところで、 最後はきれいにまとめていた。

 まとめについてはまた次回にしようと思う。

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