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【夢から醒めて】#6「どうやらずっと意識なかったらしい」

「おはよ」
「おはよ〜」
「起きて良かった」
「あ・・・うん」
「調子はどう?」
「なんか頭重い〜。もやもやする」
「そう、ずっと寝てたからね」
・・・ん? ずっと寝てた?
何言ってんだ、おかん。
確かに長い夢は見てたけど・・・え、ずっと? 何言ってんだ?
「あ、ああ。ホント起きて良かった」
おとんは変わらず何とも言えない微妙な表情のまま。頭の中でどんな事を言うか考えている感じだ。
両親のこんな雰囲気を見たことは今までなかったし、お互いの空気が違いすぎてなんだか面白いなぁ。

ちなみにおかんはここではない大学病院で看護師をしている。
だから病院の事は色々と聞けるのでとっても楽ちんである。まずはわからない事を聞かなきゃ。
「ここ、何処?」
「ここは三鷹にある鈴橋病院ね」
は?鈴橋病院?
あたいの記憶だと鈴橋病院は三鷹じゃなかったはずなんだけど・・・
まぁ、それはさておき次だ。
「おれ、何でこんなところに寝てるの?」
「それはね、バイクで事故にあって頭をうっちゃったの。それでずっと寝てたのよ」
「ふーん・・・そうなんだ〜・・・」
どうやらこの夢ではそういう設定らしい。
「頭が重いのってなんでかね〜?」
「ずっと寝てたから、まだ活動モードになってないのよ」
「右腕動かないのって何で?」
「事故の時に痛めちゃったから、多分そのせいよ」
そうか。まぁ、それならいずれ動くようになるんだろうなぁ。

そうそう、右腕に刺さっている点滴から伸びているその先にある大きな袋。500mlだか1000mlもあるのだが、それの事も聞いてみた。
「コレは栄養の点滴なの。寝ている間はご飯食べられないでしょ。だからコレで栄養を取るの」
「そうなんだ〜」
だからか。長い間寝ている設定なのに、不思議とお腹が減らない理由は。
そして、最後の質問をした。
「ねぇ、このベルト。何でつけられてるの? 動けないんだけど」
「それは・・・暴れるから仕方なくつけられてるの」
・・・は?
暴れる?
なんじゃそりゃ?
昨夜、自力で立てなかったというのに。そんな人間が暴れたからどうだというのだろう・・・

「そうなんだ・・・」
しばらく沈黙の時が過ぎていく。
おかんは気持ち悪いぐらい愛しむような眼差し、おとんは相も変わらず言葉に窮した表情を浮かべている。そんな二人をモヤっとする頭のまま眺めていた・・・
カーテンの向こうに人影が浮かぶ
「板橋さん、失礼しまーす」
と、男性の医師が入ってきた。
「どーも、三谷です。意識戻ったんですね。具合はどうですか?」
「あ〜、なんか頭がモヤモヤするのと身体が重いのぐらいですかね」
「そうですか。筋力も落ちてますし、仕方ないですね」
「はぁ」
そして、この医師にもおかんにした質問と同じような事を聞いてみた。だが、ほぼ同じような内容が返ってきた。なんにせよ大した進展はなしと。

「じゃあ、また来ます。2人ともちょっと」
と、三谷医師は2人を連れて廊下へ行った。なんの話してるんだろ。
気にはなるけど、まぁいいや。
少し話しただけだけど、なんだかやたらと体力を使った気がして疲れたし。
3人で話している声がうっすら聞こえたものの、内容は分からなかった。
なんにせよ、なんだか本当に疲れたなぁ・・・

2人は戻ってくると、おかんが今の三谷医師の奥さんとは勤務先が一緒と教えてくれた。そして「起きてるあたいに会えて良かった。また来るね」と、これまた何とも言えない笑顔で帰っていった。

・・・うげ、なんなんだろ。この両親に対する違和感は。あまりにも違いすぎて、違和感通り越して気持ち悪い感じがしてくるぐらいだぞ。って、そういえばコレって夢なんだっけか。
・・・いや、もしかしてここって宇宙船なんかの中なんじゃないか?
そう考えると色々と納得がいく。
・今までに一度も見た事のなかった親の態度。
・頭のモヤモヤ具合
・記憶と違う京路病院の場所の事
とかとか、かな。

と言うわけで、現在の結論
「宇宙人が遊びであたいの事を地球とほぼ同じ世界に連れてきて観察している」
うん、こう考えるのが一番しっくりくるな。両親の雰囲気が違うのも、そう考えれば納得いくもんな〜
そうだよ。やっぱりこの病院から出れば、きっと目が覚めるってことだろ。

#7「病院での日々が始まる」

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