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旅の記憶 1994・夏 トルファンからカシュガルへ バス旅2日目 #2


30年前の夏
 僕は中華人民共和国 新疆ウイグル自治区
トルファンからカシュガルへ向かう
バスに乗っていた

西に向かう僕たちのバスは
何もないはずの一本道で
突如できた渋滞のため
砂漠の真ん中で止まってしまった


渋滞の先に何があるのかが知りたくて
僕たちはバスの屋根に登る
何しろ砂漠のど真ん中
それ以外に高い場所はないのだ


バスの上から渋滞の先を見つめる


渋滞の列の先に
何やら人だかりが見える
この砂漠の真ん中で何があるのだろう


バスの上で途方に暮れる

こんな時
地元の人はおおらかなもので
運転手さんに文句を言ったりする人はいない
ひとしきり何があったんだと
少し騒いだ後は
みんな思い思いに
時間を潰し始める
トイレに行く人
食事を取り始める人
ちょうど数台先のトラックが
スイカを積んでいたので
その場で売ってもらい食べ始める人もいた


足元に散らばるスイカの皮


アジア旅行の怖いところは
こんな状況の時
いつバスが動き出すかわからないことだ

動き出すことに気が付かなかったら
そのまま置いていかれかねないのだ

休憩の時もそうだが
バスの出発にあたり
出るぞと声がけがある訳でもなければ
点呼をとるわけでも無いし
席が埋まってるかを確認する訳でもない
運転手さんのタイミングで
急に発信するのだ

こんな砂漠で置いてきぼりになったら
それこそ生きて砂漠をでられる
保証はないから
僕たちも、他の乗客も
バスから離れようとはしなかった

バスの周りでウロウロする乗客たち

こんな状況で
1時間以上が過ぎただろうか
こんな時に困るのはトイレだ
車がこれだけ並んでいると
当然それなりに人がいる
砂漠のど真ん中遮るものは何もなくて
僕たちはどこで用を足そうか悩んでしまう

この頃の中国の人は
トイレのプライバシーに対して
考え方がおおらかで
公衆トイレにも扉がないことがほとんど
人の多い駅のトレイでは
後ろに並んでいる人に見られながら
大きい方の用を足すことになる

こんな砂漠の場合
男性は人がいる方に背を向ければ
そんなに気にならないが
女性はそうはいかない
特に欧米の女性の旅行者は
視線がすごく気になるようで
そんなに遠くまでいかなくても
と思うほど遠くで用を足す人もいた

僕の目の前ですっきりしたお爺さん
向こうを向いてすればいいのに笑


話がすっかり逸れてしまったが
それくらい長い間
僕たちはこの場に留まっていた


イサクがかけてきた


一緒にバスに乗っていた
イサクがかけてきて
バスの上の僕らに声をかける
待ちくたびれたバスの運転手が
前方に向かって歩いて行ったと言うのだ
暇を持て余した僕たちは
一緒に渋滞の先を見に行こうと
バスから駆け降りた



万が一運転手とはぐれても
自力で戻れるようにと
バスの特徴とナンバーを確認してから
運転手の後を追う

僕たちの乗ってきたバス


運転手に続いて渋滞の先へと向かって歩く
程なくして、バスの上から見えた
人だかりが見えてきた
事故が起きている訳でもなさそうで
人だかり以外には何も見えない
さらに前に進んだ僕たちの目に
ありえない光景が広がった

砂漠の真ん中に道路を分断する
大きな川があった



砂漠に突如現れた川


続く


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