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3.ADHDが大学教員になるまで③就活(公募戦士)の書類提出編

 今回は、①と②に続く第3弾、ADHD診断を受けた私が大学教員になるところのお話です(ただし、書類提出まで、かつ、初期キャリア向けの内容)。
 一応、前のものも上げておきます。

 今回のタイトル、少し悩んだのですが、公募戦士編と名乗れるほど戦っていない気もするので、カッコ付きにしておきました。
 それから、今回は、「ADHD関係ある?ないよね?」という話が満載な気もします。(というか、それ言い出せば過去2本もそんな気もしますが)
 以上2点を先にお詫び(言い訳)して始めます。

    目次です。1つ目~3つ目は個人的な経験語りのようなものですので、具体的な話をお求めの方は4つ目・5つ目に飛んで、お読みください。


博士課程修了

 前回の「院生サバイバル編」で書いたような院生生活を経て、なんとか3年で博士学位を取得し、博士課程を修了しました。

 と書けばサラッとですが、博士論文の提出まではかなり大変でした。学位を取るには、査読付き論文も要りますし、口頭試問もクリアしなければいけません。今回は、就活編なのでそのへんすっ飛ばしますが、提出そのものについては触れておきます。
 最終提出は、厳密に期限が決まっています。それまでに、かなり膨大な博論(私の場合、資料込みでA4・300枚以上)を6部?くらい組まないといけません。
 提出日当日に出力して、半日がかりくらいでやりました。
 というのは、まあ、もう、びっくりするくらいミスを連発したからです。
 順序が違うとか誤字脱字を見つけるとか目次と本体合っていない事件とか印刷の手違いとか。そのたびに出力のし直し。印刷機、「紙がありません」頻発。
 数種類の紙を順番に組み合わせて同じ冊子を6冊組むこと、難易度高いです。

 しかも、博論の提出って、本体だけでなくて、履歴書やらなんやら出すものがわんさかあるんですよね。もう、半泣き+混乱です。
 提出の要綱もちゃんと読めてないから、あとからルールやほかの提出物に気付くなんてこともあり、ほんと、綱渡りで出しました。
 
 なんて話を書いたのは、実は、これが大いに教員公募と関係するからです。

1年寝かせて

 私は、器用ではありません。
 博論を書きながら、仕事(博士課程3年目は非常勤講師のみに絞る)しながら、出た後のことまで考えるなんて芸当、無理です。
 博論提出直前に投稿論文の審査結果が届いて修正再査読でしたが、それすら無理で、取り下げたくらいです。
 というわけで、博士課程在籍中、就活は、一切していません。
 大学教員になるか(なりたいか)も当時はクエスチョンで、まず博士脱出が最優先。
 で、出たらどうか?

 1年寝かせて

 以上。

 という気分でした。

 しぼんだ風船、だしを取り切った昆布、しゃぶりつくした骨状態です。

 そんなわけで、1年は非常勤講師オンリー決定。
 1年かけてのんびり就活しよう、という作戦(成り行き?)でした。
 もちろん、経済的にはしんどい生活続行です。
 けれど、精神的平和のほうが100倍大事。
 焦ったって良いことは何一つありません。
 果報は寝て待て。

シュウカツするぞぉ

 ま。寝てても、別に翌年からの(正規の)仕事が来るわけではないので。
 就活(教員公募への応募)しました。
 やっぱり、研究を続けたかったとかいろいろな理由で、大学教員を志望。
 JREC-INで調べて、いくつか、出しました。
 JREC-INについては、多くの人が書いているのでここでは書きませんが、大学教員や志望者向けの求人サイトと思ってください。
 
 あと、非常勤先の大学の先生から、「うち、今公募出してるけど応募しませんか?」という有難いお言葉をいただき、そちらも書類を出しました。
 学内では有力候補だったそうですが、そちらは辞退させていただきました(詳しくは後述)。

 結論を先に書くと、私は、2つの大学を経験しているので、2回就活をしたことになります。
 1回目:6つ出して、1つ内定(採用)、1つは辞退。
 2回目:1つ出して、1つ内定(採用)

 正直、大学教員の就活って、書類を使い回せないし、書類作成にめちゃくちゃ時間かかるし、ものすごく大変で、私は、たくさん出せるほどの能力は持ち合わせていませんでした。
(もちろんほかの就活でも同様の面はありますし私自身も大学教員以外の就活を経験していますが、教員公募は複雑な書類が多い印象です)
 
 というわけで、さほど経験のない私ですが、私なりに、学んだことをいくつか書きます。
 なお、かなり初歩的とか常識とか思われそうなことを文字化しています。
 私が当時欲しかったと思うような情報を書きました。
 「分かってるわ!」と言われそうなことを書いていますが、バカにしているとかではありません。
 まず、土台に上がらないと意味がないので、土台の話をここではします。
 土台の上の話は、ほかの方がたくさんわかりやすく書いているので、そちらをご覧ください(「大学教員 応募or公募」とか、「大学教員 書類or面接」とか調べると出ると思います)。

公募における考え方のポイント:どこに出すかを決める段階

①納得できること
 大学教員の仕事って、大きく言うと、研究・教育・学内業務(委員会など)ですが、大学によっても職種によっても求めらる業務内容(範囲)や条件に違いがあります。
 たとえば、大学によっては「高校訪問」「オープンキャンパス時期は毎週日曜(or土曜)出勤」「勤務時間:○時~○時」「週○日は大学に来ること」とかもあります。
 全部が全部、裁量労働制ではないのです。
 けれど、納得いかないところにいくと、あとからしんどい(と思います)。

 公募に出さないかと誘っていただいた非常勤先の大学は、こういう面で、不安がありました。
 それで、もう1つ受けてみたところ、幸運にも拾っていただけましたので、そちらの大学でスタートを切ることにしました。
 けれど、このとき非常勤先に誘ってくださった先生が、私の書類を見て細かくアドバイスくださったことはものすごく助かりました。
 
 非常勤講師をしている大学だと、どんな大学かある程度わかりますし、知っている先生から内実も聞けます。
 調べられる範囲でその大学の中身やリアルをリサーチおくと、あとからの齟齬が減ると思います。

 自分が納得いくかどうか、すなわち、自分が何を大事にしている人間かを知ることは、(大学教員に限らず就活全般で)大事だと思います。
 大学教員の場合、たとえば、研究時間の確保、待遇面、求められる科目と専門分野の一致、地理的条件、職場環境などがあるでしょうか。
 これらは、人によって優先順位が変わるので、優先順位をつけてみるとよいかもしれません。

 ちなみに、「…など大学が求める業務(科目)」といったざっくりな公募は要注意。入ってから、書いていないことが増えることがあるからです。

 科目名明記、担当コマ数明記、給与目安明記。

 こういう求人の方が、個人的には、安心です(当然と思われますが、明記じゃないものも少なくないので書きました)。
 少し前までは給与が書いていないのが圧倒的でしたが、最近のJREC-INは給与の記載が出ることが増えてきたので、精神衛生的によいですね。

②大学教員公募は、書いていないことを読み取る力も要求される
 なんだか矛盾した表現の項目ですが、あくまでも主観です。
 最近ではかなり情報が増えてきた感がありますが、教員公募って、かなり、不親切だと思ったことがあります。
 明文化されていないことが多すぎるのです。

 かく言う私も、一応、条件が書いてあるので、それを満たしたら応募できるかな~と思って、出していたわけです。
 条件というのは、論文何本とか学位とか、です。
 
 けれど、です。
 後から考えて、博士出たばかりで専任の教育歴もないひよっこが、准教授とか教授とかに出して受かるわけがないんですよ(もちろん、長年の現場経験がある方が実務家教員の公募に応募するとかなら話は別だと思います)。
 科研費取ったこともないピヨピヨが、外部資金獲得実績を書かされる国公立大学に応募しても受かるわけないんですよ。
 こういうの、お互いに時間の無駄と不幸なんで、ほんと、書いておいてほしい。
 私がやっていたことは、新卒がいきなり部長職の求人に応募した、みたいなことだったらしい、とずっと経ってから気づきました。

 求められる職位や条件と自身が一致しているかの確認、大事です。
 「当たり前」と思われそうですが、、、私は、こういう当たり前をちゃんと言語化してくれないとわからない人間なので、書いておきました。

 何を求められているかを知る方法の一つは、求められている書類。
 それから、大学のホームページも情報の宝庫ですね。
 何を大事にして何を求めている大学か、どんな教員が多いのかのチェックをして、戦えそうな場所で戦うことが大事なのだと思います。

 とはいえ、研究業績とかも、大学によって若干様式が違ったりもして、「どこまで書くの?」「これは、どっちの部類に入れたらいいの?」なんて疑問も山ほど起きます。
 聞ける人がいるときは積極的に聞いた方がいいし、見てくれる人がいるときは、見てもらった方がいいです。
 どちらもないときは…どうしましょう。

 科研費申請書のメンター制度をやっている大学がありますが、教員公募書類のメンター制度もあればいいのに。

公募書類提出における留意点:出すところを決めたら

①公募情報をよく読む
 そうです。当たり前です。当たり前よね~と言って、できていたら、私はたぶん苦労していません。
 当たり前よね~ができないからADHDなんだと思っています。

 公募情報は、よく、読みましょう。

 教員公募の何が難しいって、「書類を作成すること」と「書類を指定通りに送ること」だと思っています。
 え?そこ?
 そこです。
 
 大学によって、求める書類が違うし、様式も違うので、そのまま使い回しができないし、貼り付けると体裁が狂うし…。
 履歴書、研究業績書はマストですが、それらも、ワードのところ、エクセルのところ、JREC-INの様式、大学指定様式などがあります。
 また、送り方(提出方法)も、郵送、webシステムでの提出、webシステムと郵送両方など、混在しています。
 そのルールを示しているのが公募情報ですから、よく読む必要があります。

ということをふまえて、公募情報の読み方を書きます。
「公募情報はよく読む」の、具体的な中身です。

<公募情報の読み方・どこを見るか?>
 
チェックリストのように使えたら、と思い、かなり細かく書きます。

・期限⇒当日消印有効か、必着かを確認。そのうえで、スケジュールに書き込む。期限と同時に送る日も予定に入れる。見えるところに貼っておく。


 世の中には、公募書類を送る時期はいつがよい、といった情報もあります(真偽は分かりません)。けれど、それは、高等技術。まず、期限を守って出すことが一番大事なのです(私は、一生懸命書いて仕上げて、ふと見たら、期限過ぎてて出せなかった求人がいくつかあります)。

・送り方⇒普通郵便か書留かwebか両方か
 相手が求めている提出の仕方をしなければいけません。
 それから、住所の書き間違いをしないように確認することも必要です。
 「~~書類在中と朱書き」といった指示にも注意。

 ちなみに、求められている部数や自身の研究業績の分量が多くて、封筒に入らない時は、郵便局で売っている箱で送ったこともあります。

 郵便局から送るのが一番いいと思います。
 書留などの指定がある場合も多いですし、重さを測ってくれるので、郵送料金の間違いがありません。
 郵便局の開いている時間を事前に調べましょう。
 ちなみに、期限ギリギリのときは、速達という手段を使いましょう。
 期限を守るのは絶対です。

    応募書類、期限過ぎたらただの塵。

・提出書類の種類と部数
 履歴書と業績書のほかに、大学によって求められる書類があります。
 ギリギリになって抜けていたことに気付いて、間に合わなくなる場合もあるので、事前に、「何をいつどの順番で準備するか」まで考えておけるとよいと思います。
 大学の指定の様式がある場合はダウンロードすること。

 郵送時に作成して同封する添え状に書類一式を書くと、それがリストになります。ひとつずつ順番にチェック。部数があるかもチェック。適宜ファイルやホッチキスやクリップを使用して綺麗にまとめる工夫も。
 (私は、添え状は書いた方がよいと考えています)

②自己主張は後からでもできると心得る
 
自分の研究に自信があること。夢、希望、野心があること。
 本当に大切で、素晴らしいことだと思います。
 けど、それって、入ってからでも言えますよね。

 もちろん、あるに越したことはないんです。
 けど、「自分がいかにこの大学が求める人材にフィットしているか」を(経験や研究業績を絡めながら具体的に、けれど、いやらしくない範囲で)打ち出す方が、公募においては大事だと思います。
 あと、何でもやります精神。
 これは、就活全般でも同様ですよね。

 「大学が求める人材」というのは、ストレートには表現されていないので、公募情報や大学のHPで自分なりに理解するしかないのですが。
 たとえば、「主要業績を○本挙げて、その要点を書いてください」という書類を求める大学がありますが、そういうときは、求められている分野や領域に近い業績を選んで、その話を多めに書くなどしました。
 有名なジャーナルに掲載されていたとしても、求められている分野や領域にかすっていない業績なら、わざわざ取り上げなくてよいのです。どうせ業績一覧には全部書くのですから。

③提出書類は何度も見直す。web提出は写しを取る。
 これは絶対です。先ほども書きましたが、様式が違うので、印刷して出してみると、体裁が崩れていることがあります。
 何度も印刷して、見直して、体裁を整えます。
 何度も印刷すると、押印を忘れるときがあるので、そちらも注意を。
 書類が一式揃っているかも絶対確認です。
 私は、添え状と書類を並べて毎回指差し確認していました。
 (何も置いていない、書類が混ざらないところで確認をして、確実に再度直します)

 それから、大学指定のwebシステムで提出する場合、手元に書類やデータが残らないことがあります。
 面接で呼ばれるのは公募期限が終わってからですので、そのときには、大学のシステムにアクセスできなくなっていたりします。
 だから、コピーは取っておきましょう。

 私は、提出書類のコピーを取ってなくて、面接に呼んでいただいて焦ったことがあります。
 提出書類無しで、どんなことを書いたか覚えてない状態で面接に行きました。
 採用はしていただいたので、なんとかなるのかもしれませんが、かなりドギマギするので、取っておいた方がよいです。

まとめ

 今回の結論としては、
 公募情報はよく読む。書類のチェックは何度もする。
    書類の読み手のことを考えて作成する。
 
 これに限ると思います。

 最後に、研究業績について。
 今回は、「土台の話」と冒頭に書きましたが、研究業績が(一定)あることは前提だと思います。
 業績を細かく点数化して出す(査読付き論文は1本○点、査読なしは○点、書籍は○点、といった具合)ので、まず書類で通るには、(直近の)研究業績は一定必要と思います。
    一定とはどのくらいか、は、一概には言えませんが、代替補充の公募であれば現在そのポストにいる先生の業績などをresearchmapで確認してみるのも参考になるかもしれません。

    ここまで読んだ方は薄々気づいているかもしれませんが。

    大学教員だからといって全員が超頭がよいわけではありません(笑)

    尖っているのはあるでしょうし、頭がよいの定義も謎ですが。

    目指すハードルも下げられているかもしれません(笑)

 お読みいただきありがとうございました。

※写真は、いつだったか、どこだったかの電車内から撮ったものです。
(なんの情報にもなっていませんw)

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