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面白さは絶対の正義~『ジャスティス・リーグ:スナイダーカット』

 『ジャスティスリーグ』スナイダー・カット版を視聴し、スナイダーカットおよびウェドン版の諸々に思うところあったのでその記録。


ウェドン版のことファスト映画って言うのやめろ

 最初に言っておくが、おれは当初スナイダー・カットには特に期待をしていなかった。これに関してはオタク特有の逆張りもあるにはあるが……スナイダーカットこそジャスティスリーグの真の姿でありカノンであり至高のあるべき姿であるというノリに対する反感が大きい。スナイダーカットこそが唯一正しい原典であり、ウェドンの撮った(編集した)ジャスティスリーグはおもんない偽物で捻じ曲げられた姿である……くらいの熱量がジャスティスリーグを取り巻く人々の中で存在していたと記憶している。ハッシュタグReleasetheSnyderCutで世界が盛り上がってた辺りの頃から今現在にかけてね。

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 おれ個人のウェドン版『ジャスティスリーグ』に対する評価はまぁまぁのおもろさの映画、くらいである。別にウェドン版をめちゃくちゃ買っているというわけでもない。その上別にウェドンの肩を持つ気もないんだが……パワハラ野郎だし……。先に言っておくとウェドンがパワハラ野郎だった事実と作品そのものの評価は、別にして語ってもいいとおれは考えている。これに関しては語る「べき」とまで言う気はない。なんなら現場の雰囲気というのもあるし監督の人間性が作品そのものに影響を及ぼすことすらあるだろうよ。
 で、ウェドンはパワハラ野郎であると踏まえた上で(まぁ大事なことですからね)、ウェドン版だって別にそんなクソミソに貶すほどでもないだろう、というのがおれの見解。ウェドンはウェドンでめんどくせえ仕事を仕事としてやっただけのパワハラ野郎()だしジャスティスリーグ(旧)の出来栄えおよび興行についてはウェドン一人が悪いわけでもないだろうという話。判官贔屓か、あるいはただの逆張りに見えますかね?
 別にウェドンはスナイダーのケツ拭かされてかわいそうだ、とまで言うつもりはないが。スナイダーの降板は仕方のないことであったし。ただ、旧版のジャスティスリーグの在り方はそもそもワーナーブラザーズの意向、要求がかなり影響しているという事実はでかい。じゃあなんでWBが制作にやたら口を出してきたのかと言えば、そもそも前作前前作のBvSやMoSが興行的に振るわなかった事実が大きいわけでな。ジャスティスリーグ自体も二部作でやる筈だったところを、ワーナーの意向で一作に収めろということで既に決まっていたわけで、仮にスナイダーに身内の不幸がなかったとして、公開されていた「本来の」2時間ちょっとくらいしかないジャスティスリーグは果たしてどんなもんだったのかとは思う。(ウェドン版を偽史とするならば、今回のスナイダーカットはジャスティスリーグ本来の姿……のさらに本来の姿ということになるか?)

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 なんにせよ、ウェドンはウェドンでパワハラ野郎だけど()スナイダーカット(242分)を観た今は、これをよくぞまぁ話として一応破綻もしない程度に切り貼りして、ちゃんと一つの映画として完成させるべく(WBの意向を大きく取り入れつつ明るいシーンを追加で撮影しながら)全てを溶接して120分で仕上げたものだと感心すらする。長々と語ったが、おれのウェドンに対する感情はざっくりと言ってしまえば「まぁウェドンはウェドンで頑張ったよ(パワハラ野郎だけど)」ということになるな。

スナイダーカット公開前の予言……もとい想像。
結果的に全部当たってはいたんだが逆張り野郎はどっちだという感じ

なんにせよおもろけりゃいい


 というわけで改めてスナイダーカットの感想。


 すんげえ~~~~~~~~~~~~~~~~~~おもろかった。

 まぁ、上記の通り期待してなかったどころかこれでスナイダーカットがおもんなかったら、いや~~そんなこったろうと思ったよ監督一人が戻ったくらいでそんな映画の出来栄え一つめちゃくちゃ変わるかよスナイダーを救世主か何かと思っとんのかいと訳知り顔でもしていたかもしれないが実際問題蓋開けてみたらめちゃくちゃおもろかったのだからしょうがない。4時間も使うんだからそらおもろなってないと困るわいという分差っ引いてもおもろいんだからどうしようもなく、おもろい。画面は暗い。

 何が一番良かったといえばやはり……サイボーグことビクターくんの物語がちゃんとしたところですかね。そりゃ尺があるからこそできた深みなわけだが……。オリジン、父親とのドラマ、そしてヒーロー性への目覚め。一人のサイボーグというヒーローが、ジャスティスリーグの一員として成長し世界を救う鍵となる…………最終決戦に向けて撚り合わされる縦軸の中に、新たに太い軸が一本加わったんだからその効果は当然めちゃくちゃ大きい。箱を止めるに際し、幸せだった過去を捨てて今を選ぶとこに、それまでのビクターのドラマが全てかかってくる……最早物語における主人公の一人としてしっかりと役割を果たしていたのではないだろうか。

 まぁ正直242分の映像を渡されて120分にしろって言われたらこのサイボーグの物語が削れるのも理解はできる。全編に渡る、一つの物語として組み込まれてたが故に、まるごと削って失くしちゃったら丸々一つのドラマパートの時間が浮くからな……。俺は醜くないのとことかすげえ良いんだけど、でもそれはサイボーグのオリジンあってのものだし……しかし故にこそレイ・フィッシャーがキレるのもわかる。全部なくなっとるやんけ!!!!!ってなるよねこれは……

 サイボーグが最もその恩恵を受けていたとは思うのだが、尺が増えたことによって他のキャラも大きく掘り下げられ、厚みが増している。フラッシュもいいとこめちゃくちゃ貰ったし……個人的にはステッペンウルフくんの掘り下げについて言及しておきたい。悪役としての厚みが大きく増した。同時に哀れなやつにもなったが……。途中デサードに進捗聞かれて答えるとこが毎回悲哀に満ちてて、箱を見つけました、残りはパラデーモンが探してます……なのがおもろかった。大学の研究室の教授と学生みたいだったな(?)

 個人的にスナイダーカットで一番好きなシーンはフラッシュが未来の為に走るシーン。あそこめちゃくちゃ良かった。画も良い……フラッシュの足元に足場が先んじて生じていくとことかすげえ好きです。世界最速の男が、世界が巻き戻る中一人前に進むんだよな……。あの爆発スープスすら軽く吹き飛んでてヤバかったね。フラッシュが世界を救ったんやね……
 ウェドン版から消えたシーン……というかウェドンが独自に追加したシーンのうち、フラッシュがトラックの人々を助ける中スープスが建物ごと持ち上げて大勢の人を救うシーンがあった(そもあそこに住んでた人間全部スナイダーカットに居なかったけどよくよく思えばあんなとこに人が住んでる方がおかしい)。そこに限らずウェドン版とスナイダーカットの差異の一つにスープスと他のヒーロの扱いが挙げられると思う。ウェドンの映像はスナイダーカットと比べてどうしてもスーパーマンを別格に描きすぎというか、いやまぁ実際別格だし(スープス対残り全員のくだりも大好き、フラッシュに普通に対応するとことか)居ないとステッペンウルフくんには勝てないんだが、でも、違うんですよね。そうじゃないんですよ。ジャスティスリーグは別にこいつだけいればいいスーパーマンが居ない間場を繋ぎ、スープスを復活させるためだけにチームアップしたわけではないんですよね。
 何故手を取り合って力を合わせるのかという話。スナイダーカットはウェドン版にはなかったシーン(箱周りの)も合わせて、人類とアトランティスとアマゾンという3つの種族が力を合わせて地球の為に戦うことを脚本のゴールとして置いてあるように思う。クリプトン人であるスーパーマンは本来、少なくとも箱周りの話でいえば部外者であり、だからこそスーパーマンが敵となる未来すらもあり得るのだとおれは思います。スナイダーカットはその辺ハッキリしててよかった。スーパーマンとその他ではなく、一人が欠けても駄目で、人類とアマゾンとアトランティス人、そしてクリプトン人。全員で勝ち取る勝利、そういう点でスナイダーカットの「ジャスティスリーグ」というチームは、それがチームとして在る意味が、何よりよく描かれていたように思う。

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 それとスナイダーカット、確かに画面は暗かったんだが、それはさておき話も常に暗いのかといえばそんなこともなくしっかり前向きなシーンも多かったのが印象的。話が重くなりすぎないよう、ウェドンがとってつけたように明るいシーンを入れていた(批判の意図はそんなない。これはこれで短い尺で雰囲気をコントロールする術だと思う)のとは対象的に、話の流れの中でいい感じに前向きなシーンを差し込めていたと思う。ウェドン版のモモアが真実の紐で喋らされるシーンも別にあれ単体ではそんな嫌いでもなかったんだが、まぁスナイダーカットには必要のないシーンだよな。消えてても特になんであれなくしちゃったんだとは全く思わなかった。これは上記の通り、ウェドンは尺が無いなかでそういうシーンを入れる必要があったけどスナイダーカットにおいては無理にそんなことをしないでもよかったという話。それが無い代わりにアクアマンが不器用に、紐などなくても本音で声をかけるシーンが生まれており、これまたキャラの厚みに繋がっているのも良い。もっとしんどい面が多い話になるとすら思っていたのでこの点は本当に高く評価している。

未来へ……

 まぁ色々と感想はあったんだが、でもDCのオタクはエピローグで一回感想吹き飛びませんでした?何なんだあれ。風呂敷広げりゃいいってもんじゃねーぞ!!お前あんなもんお前……おれに見せおってからに…………なんかもうDC映画の路線変わっちゃったけどこの続編どうするつもりやってんこれ~~~~~~~~~~~~~~
 フラッシュポイントは?フラッシュポイントなんだよな?今撮ってるんだよなフラッシュの単独映画としてな?フラッシュポイントでやるんだよな?と食って掛かりたいくらいフラッシュポイントが楽しみになる映像だったんだが……しかしスナイダーカットはあくまでスナイダーカットでありDC映画の流れは今やスナイダーの手を離れたわけで、結果としてあの辺の広がった風呂敷の先に見えたものも全部幻なんですかね。どうなんですか?
 あとジャレッド・レト版ジョーカー救済おめでとう。これについて触れないわけにはいくまい。所謂レトジョの、スースクにおける演技はめちゃくちゃ仕上がっており、本当に良かったと思う。熱演でした。だからこそスースクでの扱いはマジで気の毒だし、こっちでカットされたシーンもどっかで客に見せてやれよとか思ってたし、ホアキンに”ジョーカー”を持っていかれてなんというか……報われねえ……って色んな人が思っていただろう……。すっげえ良かったよエピローグのジョーカー。マジで良かった。あれ、観てえ~~~。ベンアフバッツとレトジョーカーの絡み、もっと観てえ~~~~。


 DCエクステンデッド・ユニバースはMARVELの方の宇宙と違って作品間は緩い繋がりで行くらしいが、例の太古の乱戦の中でブラックアダムさんでもちらと出せばよかったんじゃね?とすんげえ適当なことを思う。今名前を出したブラックアダムや本筋のシャザムの続編、あるいはフラッシュの単独映画、バッツやスープスの新作もどんどん撮ってほしいし(ワンウーは最近新作観たとこだけど別にそのままじゃんじゃん続きを作ってくれていいんですよ?)、スナイダーカットを観て改めてサイボーグの単独も観たくなった。スナイダーカットは今世界であほみたいに売れており、結構なカネかけて引っ張り出して世界に向けてお出しした甲斐はあったのではないだろうか。WBくんもDC映画、こんな感じでいけるんじゃないか、という感じでMARVELさんの方みたくもっと精力的に、今後もおもろい映画を様々に展開してほしいと思う次第。DCにはDCの良さがあるんだからさ、MARVELの二番煎じだけ狙わんでも色々やっていってほしいと思いますね。

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