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【宿題帳(自習用)】産婆術


武井宏員さん撮影

日本でも法科大学院(日本版ロースクール)が2004年に本格的に開校されたが、アメリカではハーバード・ロースクールを描いた『ペーパー・チェイス』などに描かれているようにとても難しい学校として知られている。

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ここの教育の、基本は「ソクラテス・メソッド」である。

「ソクラテス・メソッド 説得せずに“YES”がひきだせる!」本田有明(著)

教授は、学生を積極的に指名し、問答を繰り返しては、正解を求めていく、という方法で行われる。

次の授業まで、大量の宿題が出される。

これを読みこなして、初めて授業に参加できるのである。

そして、教師は、その中の問題点は何か、ということを聞いていき、名前をチェックして、合否を判定することになっている。

ただし、最近では、もっとソフトに聞いていく方式に変わりつつあるようだ。

「ペーパー・チェイス」を見た時、正直羨ましかった。

憧れたのだが、実際に、そんな授業を受けろというと、私は、後込みをしたかもしれない(^^;

ソクラテスは、産婆術(“maieutike”お母さんの職業だった)で知られる。

【参考記事①】

【参考文献】

すなわち、

第1に、自分には知恵を産む力がないこと、

第2に、人の精神に宿った知恵を安定・促進させること、

第3に、仲人として相応しい教師を紹介すること、

第4に、産れた知恵が育てるに値するか否かを判断すること、

である。

つまり、ソフィストのように知識を授けるのではなく、相手が自ら知恵を産むように導くのであり、この方法が《問答法dialektike》である。

こうして、弟子と徹底的な討論を通して、真理を得ようとしたのである。

「自分は牛(アテネ)を起こしておくためのアブである」と喩えたが、これは、表面的には、自分はなにも考えを出さず、ただ他人の見解を吟味検討し、あらを探すことでもあり、「ソクラテスの皮肉」とも言われ、多くの人々から反感も買った。

「ペーパー・チェイス」のように教師も大変である。

あんな授業をしろ、といわれると、とてもできない。

ただ、他人と問答することによって、真理が生まれてくるというのは本当だ。

例えば、部下に簡単なことを聞かれて、自分なりに説明する時に、全く違う事柄と結び付くことがある。

セレンディピティなのだ。

会社などでは「ブレスト(ブレーン・ストーミング)」の形で行われているが、この基本は、相手を否定しないことだ。

健全な対話、これこそが望ましいのだが、日本でコミュニケーションは発達していない!?

一例を上げると、本当の自分を見せないように、若い人は、ペルソナ(外界に適応するための社会的・表面的な人格)を、上手く活用できていない様に感じる。

“人当たりがよく、怒らず、地味で主張しない”というペルソナ。

本心を見せず、そのペルソナを通じてコミュニケーションをとり合うから、余計に相手のことがわからなくて不安になる。

仕事で出会う人だって、仮面をかぶっているわけであるから、本心はわからない。

その状態で、相手のニーズをつかむのはとても難しいと思う。

【参考記事②】

【関連記事】
【雑考】垂直思考と水平思考
https://note.com/bax36410/n/nc041319885eb

【雑考】対位法的思考
https://note.com/bax36410/n/nef8c398b72cb

【雑考】複雑系思考法
https://note.com/bax36410/n/neaab25206650

【宿題帳(自習用)】ふと目を向けた風景、しゃがんだ時に見えるもの。
https://note.com/bax36410/n/nad27a9739ea4

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