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最高の休日11

結局、自宅に戻ったのは3時近くになってしまった。点滴を終えた後、再度医師の診察をうけ問題ないということだったが、今日明日は抗アレルギー薬を飲んだ方が良いということで処方箋がでた。それをもって近くの薬局にいき、5人待ったところでようやく真帆は薬を2錠受けとることができた。スタバに紙袋を取りに戻る余力はなかった。明日行けばいいや。どうせ直ぐに必要なものはないんだし。真帆はノロノロと自転車をこぎながら考えた。

帰宅した後は昨日の今日と同じように、奏人、続いて理人を迎えおやつ用意、夕食準備。同じようにそぼろ丼作ったら「また、そぼろ?」の声で、それも同じ。
良かったのは、集金に250円必要だと奏人が言う前に分かっていたことだろうか。一応、意識して買い物はした。

ゲームをやめさせ、ボーダー柄のパジャマ姿の2人がベッドにいくのを見届け、ようやく一息つくことができると、真帆はまた後悔の波におそわれた。

こんなことになるなら、アーモンドフロランタンなんて食べなければ良かった。横のバームクーヘンにしておけば良かった。いや、スタバに行かなければ良かったんだ、そうすれば食べることもなかった。そもそも何でスタバにいったんだろう。
朝から買い物して疲れたのもある。あれ、今日、何を買ったんだっけ?真帆はそばにあったショルダーバッグを手繰り寄せ、長財布をだす。2つ折りに重ねたレシートを開いた。

無印良品、バームクーヘンもお茶もフキンも、別に買わなくても良かった。お茶、冷蔵庫にあったし。
ユニクロ、奏人のズボンは必要かもだけど、私の防寒下着は買わなくてもよかった。もう春だし。買わなくてよかったといえばワンピース。真帆は1枚のレシートを凝視する。
「婦人服 ¥12000」支払いにクレジットカードを使ってしまった。よく考えたら今月末に入るパート代は3万ぐらいしかない。1月はやむを得ず欠勤が多かったから。保護者会に着ていく服なんて今ある服で間に合ったのに。真帆は大きなため息をつく。

外にでて買い物をして充実した1日を過ごした気になっていたけど、それは違った。
別にいいじゃないか、休みの日に家でダラダラしたって。毎日パートいって子どもに夕ごはん食べさせ洗濯して干して、夜寝るの遅いのに、朝は無理やり起こされて。疲れてるんだよ。
だから、パートが休みの金曜日ぐらい、二度寝してそのまま布団でネットサーフィンしてドラマ見まくって過ごしてもいいじゃん。
もう最高の休日を過ごそうなんて考えるのはやめよう。そんなのは妄想だ、何が最高だ、そんなものはないんだ。いや、あるとしたら存分に怠惰に過ごすことが、最高の休日かも…。

スマフォを見ると9時を過ぎていた。このまま、また前日に戻れたら、次こそ最高の休日を罪悪感なく過ごせるだろうと真帆は思う。でもそんな都合いいことないよね。明日は理人のプールの付き添いがあるし、疲れたのではやく寝よう、そうだ寝る前に薬を飲まないと。

真帆はバッグから白い紙袋をだした。錠剤をとりだし口に入れ、ぬるくなったお茶で流し込む。
これは睡眠作用もあると聞いたので、よく眠れるかもしれない。明日は気持ち良く起きられるといいな。
ぼんやりとした期待をもちながら残りのお茶を飲み干した。

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