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波打ち際の一期一会

気分転換を兼ねて海へ。


本来なら夕日が望めるのだろうが、今日は曇天。僅かに雲の裏に夕日の気配が漂う。


気温は10度。


しかし、水平線から砂浜に向かって風が吹いてるので、砂浜を歩く僕の体感温度はもっと低いのだろう。寒さで身体が強ばる。


打ち寄せる波から2m程離れ、一人で浜辺を歩く。


左耳に波の音を聴きながら歩いていると、目の前に巨大な文字が現れた。
見るからにまだ新しい。


「 サイコー 」


久びさに海に来た人か、それとも近くの旅館に来た観光客か。いずれにせよ、その文字はなんだか僕を嬉しい気持ちにさせた。


誰かの喜びをそこに見た気がしたからだ。多分この文字を書いた人は、笑いながら書いたんだろうね。



また少し歩くと、違う文字を見つけた。さっきの「 サイコー 」よりも少し小さいA4用紙におさまりそうな文字だ。


「 Marry Me 」


本気のプロポーズだったのか、遊び半分で書いたのか。この文字も書いた人の笑顔が見えるような気がした。つまらない顔している人は、こんなデカデカと「 結婚しよう 」なんて書かないだろうし。


誰ともすれ違うことなく一人で浜辺を歩いていた僕は、文字との出会いを通していつの間にかいろんな人とすれ違った気分になった。それもHappyな人達。


明日、あの文字達は波に消えるだろう。顔も知らない人が書いた文字との今日の出会いもまた、旅行先ですれ違う人の如く、一期一会。



30分程歩いたあと、寒さに身を震わせながら車に戻った。でも、時間を越えた波打ち際での出会いを思い出すと少し温かい気持ちになった。


新しい海での楽しみを見つけてしまったようだ。






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