量子計算学習ノート - 様々な線形オペレータ


この記事は「量子コンピュータと量子通信 (オーム社)」の読書ノートです。


特別な線形オペレータであるエルミートオペレータ、そしてその中でも重要な射影オペレータについて見てきたが、その他にも重要な線形オペレータはいくつかある。この記事ではそんな線形オペレータたちを紹介する。

まずは正規オペレータである。次の性質を満たす線形オペレータ $${A}$$を正規オペレータという。

$$
AA^* = A^*A
$$

定義により、エルミートオペレータは必ず正規オペレータである。

正規オペレータであることは実は線形オペレータが対角化可能である必要十分条件であり、正規オペレータは重要な線形オペレータのクラスを構成する。これについては別の記事で詳細に述べることにする。

次にユニタリオペレータについて紹介しよう。次の性質を満たす線形オペレータ$${U}$$をユニタリオペレータという。

$$
UU^* = I
$$

定義の両辺に転置共役を施すと$${U^*U = I}$$が得られるので、ユニタリオペレータももれなく正規オペレータであり、対角化可能である。

ユニタリオペレータの肝要な性質として、内積を保存するということがある。具体的には任意のベクトル $${|v\rangle, |w\rangle}$$に対し、次が成り立つ。

$$
(U|v\rangle, U|w\rangle) = (U^*U|v\rangle, |w\rangle) = (|v\rangle, |w\rangle)
$$

このことを利用し、ユニタリオペレータの特徴づけを行う。

適当なCONS$${\{|v_i\rangle\}}$$をとってきて、$${|w_i\rangle \equiv U|v_i\rangle}$$と定義しよう。CONSに対する作用を定義しているため、$${U = \sum_i |w_i\rangle\langle v_i|}$$とかけることになる。先に示したように、ユニタリオペレータが内積を保存することから$${(|w_i\rangle, |w_j\rangle) = (|v_i\rangle, |v_j\rangle)}$$である。したがって$${\{|w_i\rangle\}}$$は再びCONSになることがわかる。

また、逆に2つのCONSを用いて$${U \equiv \sum_i |w_i\rangle\langle v_i|}$$と定義される線形オペレータはユニタリオペレータであることは明らかだ。

つまり、2つのCONS$${\{|v_i\rangle\}, \{|w_i\rangle\}}$$を用いて$${U = \sum_i |w_i\rangle\langle v_i|}$$とかけることが線形オペレータがユニタリオペレータであることの必要十分条件である。

最後にもう一つエルミートオペレータの中で重要なサブクラスとして、正のオペレータを紹介する。任意のベクトル$${|v\rangle}$$に対して次が成立するオペレータ$${A}$$を正のオペレータという。

$$
\langle v | A | v\rangle \ge 0
$$

正のオペレータが$${|v\rangle \neq \bold{0}}$$に対して常に$${\langle v | A | v\rangle > 0}$$であるとき、特に正の定符号であるという。

ざっと様々な線形オペレータを紹介してきたが、今後の議論のため、これらの線形オペレータに対する種々の興味ある性質について示す必要がある。これについては次の記事で述べることにしよう。

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